教養としての近代日本思想④:社会主義思想

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社会主義:戦前の社会主義にはキリスト教的社会主義と唯物論的社会主義と2つの流れがありました。「アカ」と見なされ、国家や軍部から危険視された人々も素朴な人道的社会主義から出発している人が多く、マルクス主義の理論体系に基づいていたとは言い難いケースも多く見られましたが、ロシア革命によってマルクス主義が現実の国家体制となってからは、ソ連共産党の指導の元で革命志向が強まりました。

河上肇(かわかみはじめ):経済学者・社会思想家、『貧乏物語』。内村鑑三やトルストイの影響を受けた人道主義者でしたが、人道主義だけでは社会問題を解決できないという理由から次第にマルクス主義的主張に傾斜していき、貧困への対策の必要性を説きました。

片山潜:キリスト教社会主義者として活躍し、後にコミンテルンに参加して、日本共産党の結成を指導しました。

安倍磯雄:キリスト教社会主義者。日本初の社会主義政党である社会民主党の結成に参加しますが、同党は治安警察法により結成禁止とされます。女性解放運動にも積極的に関与し、戦後は日本社会党結成に尽力します。

木下尚江(きのしたなおえ):キリスト教社会主義者として社会民主党結成に参加。新聞記者として普通選挙運動や足尾鉱毒事件などに取り組んでいます。

堺利彦(さかいとしひこ):幸徳秋水らと共に平民主義(階級打破)・社会主義・平和主義を掲げた平民社を創設、『平民新聞』を創刊。日露戦争では非戦論を展開し、日本共産党初代委員長となりますが、後に離党し、社会民主主義を唱えます。

幸徳秋水(こうとくしゅうすい):社会主義運動家、『二十世紀之怪物帝国主義』『社会主義神髄』。中江兆民の弟子で、社会民主党結成や平民社創設に参加します。大杉栄らと共に労働者の団結によるストライキなど直接行動論を主張し、片山潜らの議会主義派と対立します。天皇暗殺容疑(大逆罪)で処刑され(大逆事件)、以後、日本の社会主義運動は冬の時代を迎えていきます。

石川啄木(たくぼく):『明星』の浪漫主義からスタートし、第一詩集『あこがれ』で天才詩人と呼ばれ、自然主義の影響から歌集『一握(いちあく)の砂』で生活派歌人として知られるようになりましたが、大逆事件をきっかけに社会主義に近づき、評論『時代閉塞の現状』で国家との対決を避ける自然主義と決別しました。
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