【朗読】薄ぼけたもやの中から 村嵜千草
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音声・音楽
みなさん、こんにちは。
NIKOです。
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今回ご縁あって、村嵜千草(むらさきちぐさ)さんの詞の朗読をさせていただきました。
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千草さんとは出会ったばかりにも関わらず、SNSや音声配信から人となりを感じてくださり、信頼に値する方だという有難いお言葉を頂戴しました。
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ボクなりの解釈、ボクなりの世界観で自由に朗読してくださいと言っていただきましたが、朗読させていただくのは、千草さんがこの世に生み出した大切な作品です。
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作品の世界観を壊さぬよう、意味をはき違えぬよう、自分なりに精一杯かんがえ、心を込めて朗読させていただきました。
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みなさまにも、お聴きいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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『薄ぼけたもやの中から』
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単位をひとつ落とした。
笑って「次はがんばるね」と言った。
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単位を半分落とした。
笑われて「大丈夫」と冗談交じりに答えた。
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教室に入れなくなった。
ドアの手前で止まる足。震える体。溢れる涙。
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家を出られなくなった。
自分はなんて怠惰で愚かなのかと責めた。
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選択をした。
ここで終わることにした。
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成し遂げられなかった。
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次の選択をした。
せめて病気のせいであれ。
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荒れた六畳間
スマホの光だけが
検索窓を照らした。
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重たい体を白衣の前へ運んだ。
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8年が経った。
生きている。
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あのとき、自分を捨てていたら。
あのとき、薬をもっと飲んでいたら。
あのとき、もう一歩踏み出していたら。
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しなかった選択が、私を生かす。
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苦しい。苦しいよ、生かされるのは。
それでも、隣にある笑顔を
行くなと怒(いか)り涙する皺を
放っておけない弱さが、私を強くするんだ。