健診の眼底検査で異常が見つかったら?(患者様向け)

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コラム
眼底検査(眼底カメラ撮影)は視力検査とは違い、法律で定められていないため、一般健康診断の項目には含まれません。そのため、自治体の特定健診や人間ドックで初めて眼底検査を受けるという方もいらっしゃるでしょう。

眼底写真からは非常に多様な所見が得られますが、異常所見があった場合、『視神経乳頭陥凹拡大』『眼底出血』『透光体混濁』『黄斑変性』『網膜前膜』と記載されている方が多いかと思います。

眼底検査を受けられた方の中には、眼科に受診したことがほとんどなく、健診で眼科要受診となってしまい、これからどうなるのかと不安に思われる方も少なくありません。

今回はそのような方のために、健診の眼底検査で異常が見つかり、実際に眼科へ受診する時の流れを解説していきます。コンタクトレンズユーザーの場合の注意点も記載しておりますので、よろしければ参考になさってください。

ここからは、初めて行く眼科(新患)で受診した場合の流れを解説します。
異常所見の内容にもよりますが、基本的な流れは以下になります。

【眼科受診の流れ】※詳細な解説は後述します

① 受付に保険証と検査結果表を渡す。
② 問診表を渡され、記入する。
③ 検査室に呼ばれ、問診表と健診結果について確認される。
④ 視力や眼圧検査などを受ける。
⑤ 1回目の診察を受ける。
⑥ 散瞳薬を点眼され、散瞳するまで待つ。
⑦ 眼底写真撮影や眼底三次元画像解析、その他に必要な検査をする。
⑧ 2回目の診察を受ける。
⑨ 会計し終了(再診指示があれば予約取得)。

外来の混雑状況にもよりますが、受付から終了までの所要時間は1~2時間程度になるでしょう。

解説の先に、受診前の注意事項を2つお伝えします。

まず1つ目は、健診より詳しく眼底を検査するために『散瞳点眼剤』という瞳孔を拡げる薬を使う可能性が高いので、眼科受診後5~6時間は運転したり、デスクワークをしたりする必要がない日を選んで受診されることをお勧めします。散瞳(瞳孔を拡げること)すると明所が普段より眩しく感じ、さらに調節機能が麻痺するため、まるで老眼になったように手元の物がぼやけて見えてしまい、運転とデスクワークに支障をきたすからです。

普段から光を眩しく感じやすい方は、サングラスを一緒に持って行くと待ち時間や帰宅時の見え方が楽になります。このお話をすると、患者様から「サングラスをかければ運転して帰っても良いか?」と聞かれることがありますが、運転は事故を起こすと人命に関わるので、眼科からはサングラスがあっても運転は控えて頂くようお願いされることが多いでしょう。

もし散瞳できない事情があれば、その日は可能な範囲で検査と診察を行い、別日に散瞳して行う検査を案内されることになります。

注意事項の2つ目は、なるべくコンタクトレンズ(以下、CL)をつけて受診しないことです。前述した散瞳点眼剤をつけるかもしれないから、という理由もありますが、眼科で必須となる視力や眼圧の検査、診察は裸眼で行う必要があるからです。

それならば、検査や診察前にCLを外せば良いと思われるでしょうが、CLを外した後は眼表面に汚れや傷がついていたり、特にハードCLは圧迫により角膜の形状が変わっていたり、屈折度や眼圧を正確に評価できないこともあるので、せめて眼科受診の数時間前からは裸眼の状態であるのが望ましいかと思います。

普段はCLだけ使い、眼鏡を持っていない方は、裸眼で見づらいままで待ち時間を過ごさなくてはならないこともあるので、CLを外す前にお手洗いの場所を確認して頂くと良いでしょう。

前置きが長くなりましたが、次は順番に流れを解説していきます。

① 受付に保険証と検査結果表を渡す。

もし他院で薬が処方されていれば、薬手帳も一緒に出して頂くと良いでしょう。持参された検査結果表(あれば薬手帳も)がコピーされて原本が返却されます。また、受診した眼科によっては自家用車で来たか、公共交通機関で来たか、など来院手段を尋ねられます。先述した『散瞳点眼薬』を点眼する可能性があるからです。

その日に散瞳するかどうかは、⑤の1回目の診察の際に医師が判断するので、まだこの時点では確定ではありません。ですが、もし運転して帰りたい、仕事に行かなければならない等で都合が悪い時は、この時点で受付にその旨を伝えて頂くと、よりこの後の流れがスムーズになります。

② 問診表を渡され、記入する。

今回受診することになったのは、健診で眼底の異常が見つかったからと仮定していますが、もし以前から眼の不調があるようであれば、問診表に記入してみましょう。

例えば、眼鏡をかけても見づらくなった、という症状なら視力検査で眼鏡での視力もはかってくれます。老眼が進んでいるかも、という症状なら手元用の視力表を使い、老眼鏡が必要かどうかも分かります。その他の些細なことでも記入して頂くと、ある程度まとめて検査を受けられるので、後で相談して頂くよりも待ち時間が短くなります。

③ 検査室に呼ばれ、問診表と健診結果について確認される。

問診表の記入後、検査室の準備ができると検査担当から呼ばれます。問診表の記載内容と健診の結果表から要点をまとめて確認され、改めて本日散瞳しても良いか聞かれるでしょう。眼底検査以外にも血圧や血液検査などの異常がある場合、すでに内科は受診したか、現在治療中かどうかも確認されます。

④ 視力や眼圧検査などを受ける。

CLをつけていれば、検査前に外すよう指示されます。2weekやハードCLの方が保存液や容器を持参していない場合、眼科から貸し出されることもあります。1DayのCLは使い捨てなので、例え検査や診察のために1~2時間外すだけだとしても、CLは捨てなければいけません。

もし1Dayの予備を忘れてきた場合は眼鏡で帰ることになります。眼鏡もない場合、特別に来院時につけてきた物と同じCLを帰宅用としてもらえることもあります。ですが、その眼科で取り扱っていないCLや度数の場合はお渡しできませんし、何より本来はCLを渡すためには処方箋が必要になるので、在庫があってもCLは渡さないという眼科もあるかもしれません。そのため、1Dayの方は予備か眼鏡を持参するほうが安心です。

⑤ 1回目の診察を受ける。

まず散瞳点眼剤をつける前に、1回目の診察に入ります。医師が問診表や健診の異常所見、視力や眼圧検査の結果などを確認してから、細隙灯顕微鏡という機械で前眼部(角膜や虹彩など眼球の前半分)を観察します。ここでの主な確認事項は、眼圧が正常値であるか、散瞳点眼剤をつけても問題ないかです。

散瞳すると眼圧が上昇するため、高眼圧の場合は散瞳作用が弱い点眼剤の使用を検討することがあります。また、『狭隅角(きょうぐうかく)』になっている方は散瞳点眼剤の使用は禁忌となります。大多数の方はそれには該当しませんが、この確認を怠って狭隅角の方を散瞳してしまうと、緊急で処置が必要になることもあるため、とても大切な診察です。
前眼部断面図.jpg

横からの眼球断面図を御覧頂くと、線維柱帯という部分があります。その辺りの角膜と虹彩の隙間を隅角と呼ぶのですが、そこは角膜や水晶体を栄養する房水という水の排水路にあたります。眼圧が一定に保たれるためには、房水がきちんと排水されるように隅角に十分な空間がなければいけません。

大多数の方は隅角の広さに問題はないのですが、この隅角が元から狭くなっている『狭隅角(きょうぐうかく)』の方もいらっしゃいます。散瞳点眼剤をつけると、虹彩が隅角側に寄り瞳孔が拡がりますが、狭隅角の場合、虹彩により隅角の空間が閉じられてしまい、排水ができなくなることがあります。

完全に隅角が閉じると房水が眼内に留まり、急激な眼圧上昇を起こします。それに伴って、頭痛、眼痛、吐き気、視力低下も生じます(急性緑内障発作)。この状態になると数時間以内に眼圧を下げる処置をしなければ失明してしまいます。そのため、初診の患者様に散瞳点眼剤をつける前には、狭隅角ではないかどうか確認が必要なのです。

⑥ 散瞳薬を点眼され、散瞳するまで待つ。

1回目の診察で医師から散瞳可能と判断されると、散瞳薬をつけられ、散瞳するまで待合室で待つことになります。基本的には点眼後15分ほどで瞳孔が拡がっていき、瞳孔径が5mm以上の大きさになれば、次の検査に進むことができます。点眼剤の効き具合には個人差があるため、1回の点眼では散瞳不十分で、追加で2~3回つけなければならないこともあります。

狭隅角の方は原則として散瞳点眼剤はつけられませんが、医師が散瞳して眼底の精査をする必要があると判断した場合は、高眼圧の方と同様に、散瞳作用の弱い点眼剤で散瞳することもあります。

⑦ 眼底写真撮影や眼底三次元画像解析、その他に必要な検査をする。

散瞳した後、健診の眼底検査と同じく眼底カメラ撮影を行います。健診でも撮影したのに、なぜ眼科でも撮らなければならないかと言うと、機種や撮影者によって写真の写り方が変わることがあるからです。また、眼底の現状記録をするためでもあります。

眼底三次元画像解析(以下、OCT検査)とは眼底、特に網膜や視神経などをマイクロ単位で拡大撮影し、細胞や神経の形状や厚みなどを解析します。これにより眼底写真よりも、より軽微で詳細な病態変化をみることができます。その他、今までの検査結果を踏まえて、必要な検査が追加されることもあります。

⑧ 2回目の診察を受ける。

医師が検査結果を確認し、今度は散瞳している状態で診察します。健診の異常所見と相違ないか、他の病気がないかも併せて診ていきます。

高血圧や糖尿病など、眼以外の病気が眼に影響を及ぼしていると考えられる場合、内科や他の科の受診を勧められたり、治療中の病気がある場合は治療状況について聞かれたりします。必要であれば、診療情報提供書を通して、主治医や通院先から詳細な情報をもらい、眼科での治療方針を立てることもあります。

⑨ 会計し終了(再診指示があれば予約取得)。

治療や経過観察など通院が必要な場合、再診予約をとります。

『視神経乳頭陥凹拡大』では緑内障が疑われることが多いため、次回来院時に視野検査をすることが多いでしょう。視野検査は時間がかかるので、予約制にしている眼科がほとんどです。緊急性がない限りは初診当日に受けられることは基本的にありません。

眼の病気を診断されたが、受診した眼科では設備が足りない、専門医がいないなどで治療ができない場合は会計時に紹介状を受け取るか、後日の受け取りになるでしょう。

以上が健診の眼底検査で異常が見つかった場合の受診の解説でした。今回は初めて受診する眼科の診察を想定したので、かかりつけの眼科を受診する場合よりも手順が多いかと思います。また、健診の異常所見や治療の緊急性、その眼科の方針によって流れが変わることがありますので、体が不自由な方や遠くから受診しなければならないなど、受診自体が負担になってしまったり、大変な方は事前に眼科に問い合わせて、実際の流れや必要な物、所要時間を確認して頂くと、より受診しやすいかと思います。

他にも疑問やお悩みがありましたら、ぜひ御相談ください。
《しおり 視能訓練士/CO》

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