白内障と運転免許更新について②(患者様向け)

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コラム
前回の続きです。
眼科へ受診し、検査を一通り受け、診察で白内障の診断を受けた後のお話です。なお、主題から逸れてしまうため、ここからは白内障以外に視力低下をきたす眼疾患、脳疾患などがない前提で記載していきます。

視力検査にて、矯正視力が免許更新に必要な視力に満たない方は白内障手術を勧められます。ここでポイントになるのが、矯正視力です。

よくある事例ですが、矯正すれば免許更新が可能な視力まで出る方もいらっしゃいます。つまり、『眼鏡を作れば良い』or『お持ちの眼鏡(コンタクトレンズ)の度数が合っていない』という場合です。前者は正視(屈折異常がない、いわゆる眼鏡不要な方)と軽度の遠視の方が多いです。後者は近視の方が多くなります。

✎以下は簡略な覚え方です。程度によっては例外もあります。
 遠視:遠くは見やすいが手元が見づらい
 近視:遠くは見づらいが手元が見やすい

白内障は水晶体(眼の中のレンズ状の組織)が濁る病気ですが、水晶体の濁る部分によって近視化することがあります。詳しい解説は省略しますが、その近視化が生じたために、今まで裸眼で免許を更新していたのに、今度の免許更新では眼鏡をかけないと更新できない、という状態になっている場合があります。ちなみに「年をとったら老眼が治った」という経験がある患者様がいらっしゃいますが、それは『白内障で近視化して手元が見やすくなった』という症状の副産物とも考えられます。

白内障による近視化が生じていない場合でも、眼の状態が変化し、眼鏡の度数が合わなくなっている可能性もあります。免許更新ができなかった時、眼科に受診せず、眼鏡店に相談して、新しい眼鏡を作って更新を済ませる方もいらっしゃいますが、患者様が高齢であればあるほど、眼科への受診をお勧めします。というも、眼鏡店の検査だけでは今後の眼の状態が予測できないからです。

例えば、初期~中期の白内障の方が、眼科に受診せず、眼鏡店で免許更新が可能な視力まで出る眼鏡を作ったとします。その時は更新できても、数か月後には白内障が進行して視力が出なくなり、結局は運転を止めざるを得ない、ということもあるからです。さらに、白内障手術を受けようとしたら、予約がいっぱいで手術をすぐに受けられない、というのも稀ではありません。

特に地方など医師や医療機関が少ない地域では、半年先まで予約が埋まっている場合もあります。手術を待つ間、運転ができないデメリットを考えれば、早めに眼科受診をして、白内障の進行程度を診てもらうほうが今後の予定も立てやすくなるでしょう。

矯正視力でも免許更新に必要な視力が出ない、かつ、白内障手術がすぐに受けられない場合、免許更新の期限を過ぎてしまうこともあります。この場合は運転免許失効となり、失効のまま運転すると『無免許運転』となります。失効から6ヶ月以内であれば視力検査を受けなおすだけで再交付が受けられることもあるそうですが、最寄りの運転免許センターなどに再交付の手順について問い合わせて頂くのが確実だと思います。また、免許失効にやむを得ない理由と期間があったことを証明するため、診断書の提出が求められることもあります。診断書も必要かどうか、併せて確認して頂くと良いでしょう。また、再交付には失効した運転免許証も必要になるので、捨ててしまったり、紛失なさらないよう、お気をつけください。

最後に、白内障手術後すぐ運転ができるようになるとは限りません。実際には術後の経過によります。手術翌日に遠見1.0まで視力が出る方、1ヶ月かけて徐々に視力が安定してくる方、運転用の眼鏡を作り直す必要がある方もいらっしゃいます。患者様がどのような眼内レンズ(水晶体の中に入れる人工のレンズ)を選ばれるか、術後の感染や炎症の有無、傷が治るまでの期間などが視力に影響します。術後の通院の中で運転再開の可否を医師が判断しますので、診察時に運転再開できるかどうか聞いて頂くと良いと思います。

他にも疑問やお悩みがありましたら、ぜひ御相談ください。

《しおり 視能訓練士/CO》



























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