中国語簡体字は漢字の最新形態なのか?

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2023年現在、世界で日常的に使われている漢字は、日本で使われている日本漢字、台湾や香港などで使用されている繁体字、そして中国で使用されている簡体字があります。

例えばドラゴンを意味するリュウは、繁体字では龍ですが、日本漢字では竜、簡体字では龙です。他にも「發・発・发」や「歸・帰・归」「鐵・鉄・铁」や「廣・広・广」などがあります。

成立した時間から考えると、繁体字が一番古く、簡体字は戦後に整備されたこともあって漢字の一番新しい形態と見ることができます。

しかし、簡体字の全ての漢字が進化の最新形態かというと、必ずしもそうではありません。

「灭」から「滅」:漢字の変遷

少し漢字が生まれた歴史的な話になります。

現在、漢字の最も古い形態は、亀や骨に刻まれた甲骨文字だと言われています。

1996年から2000年まで、『週刊少年ジャンプ』で「封神演義」という漫画が連載されましたが、あの殷(商)の時代に、政(まつりごと)の一環として占いをしていた際、用いられた記号が文字になったものだそうです。

殷は紀元前1700年頃から紀元前1046年頃まで続いた王朝で、現在、考古学的に実際に確認・証明された中国王朝としては最古のものとされています(夏王朝が最古だとする説もありますが、考古学的に立証されているのは殷からだとされています)。

ちなみに、米国の大手IT企業であるオラクル社のオラクルは、中華圏では甲骨(文)と翻訳されることがあります。漢字文化圏で生活する私たちにとって、漢字で表記された途端、グッと身近に感じてしまうのは気のせいでしょうか。

そして、現代に生きる私たちも目にする「滅」の字も甲骨文字に出てきます。

その字は灭。

そもそも炊事場の火を消す様子を表した字と考えられ、「火に蓋」をして、滅(つまり消す)としたそうです。

その後、蓋で鎮火できない火災に対しても用いられるようになりました。その際にプラスされたのは水。灭にサンズイが加わり、水で消すとなったのです。

時間はさらに進み、今度は家から一族、国を亡ぼすことでも用いられるようになります。その時にプラスされたのが、武器を意味する戈(ほこ)のつくりです。こうして今日、私たちが目にする滅に変化したそうです。

つまり、戦後に制定されたはずの簡体字ですが、滅の字については先祖返りとも言える一番古い形態を採用したのでした。

漢字文化圏の悲願:文字の簡略化

実は、漢字を使用する国々では、ほぼ無限に増殖する文字と、比例するように複雑化する現象について、常に悩まされていました。

漢字を覚えるだけでもひと苦労なのに、画数もどんどん増えていきます。日本漢字や簡体字が生まれた背景の一つに、文字を簡略化しようとする考えがありました。

また、時代や社会情勢によって、どこまで簡略化すればいいのか、議論も繰り返されてきました。時代によってはいっそ漢字を廃止しろ!というような過激な言論もありました。

そんな紆余曲折を経て、滅という字について簡体字では最も古い形態の字を、新しい時代で使用することになりました。

言葉や文字は、現代社会で生きていくには欠かせないもの。体の一部ということもできます。だからこそ、一言一文字を大切にして過ごしていきたいですね。

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