緊急疾患 GDVとは⁈

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こんにちは!獣医師のホシ⭐️です!

緊急疾患の第二弾として本日はGDVに関してお話ししようと思います。

GDVとは胃拡張胃捻転症候群の略語であり、犬、特に大型犬に多い疾患です。

その他、ダックスフントやコーギーなんかも比較的多くみられます。
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GDVとは一体どのような病気なのでしょうか?

名前の通り胃が大きく拡張し、さらに捻れてしまう恐ろしい病気です!

症候群とついているように、胃がそのような事態に陥ることにより他に様々な病態を引き起こします。

夜間救急での問い合わせで多い主訴として

『えずいているけど吐けない、お腹が張っている』です!

ほぼこの主訴である場合、胃拡張、もしくはGDVを引き起こしている可能性が非常に高いです。

来院時、自力で歩行できている症例と、すでに横たわってしまっている症例とがありますが、後者はこの段階で比較的予後が悪いとされています。

まず血管確保し、採血、腹部の状態を把握するためレントゲン検査を実施します。

レントゲン検査で胃拡張なのか、胃捻転なのか、はたまた別の疾患なのかを判断します。
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胃拡張の場合は胃によって大きな血管を圧迫してしまい、いわゆるショック状態(循環血液量減少性ショック)になる可能性が高いため、胃の減圧を行う必要があります。

減圧の方法として太めの針を経皮的に胃に刺しガスを抜く、
もしくは鎮静を行って口から胃内にチューブを挿入し抜気します。

軽度の胃拡張の場合は上部消化管運動促進薬を使用し、胃から腸へガスが移動するのを支持する薬剤を使用することもあります。

なぜ胃が膨らむだけで緊急疾患なの?🤔

とお思いかもしれません‼️

胃が膨れることによって大血管を圧迫し、それによる循環の阻害、いわばショックを引き起こしてしまします。

ショックは大きく分類して4種類ありますが、この場合は循環血液量減少性ショックといい、血管を胃が押し潰してしまうことで血が流れにくくなり、末梢へ酸素が供給できなくなり死亡してしまいます。

また心臓への血液供給も減少するため、致死的な不整脈を生じます📈
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そして胃が捻れることによって胃の血流が阻害され、胃の壊死が引き起こります。

胃の壊死は胃の穿孔(胃に穴があく)などを引き起こします。

そのため、胃ガスを抜いて胃を小さくすること、そして胃の捩れがあれば手術で整復する必要があります。

そもそも何故胃が膨らみ、捻れてしまうのでしょうか?

病因は未だ不明とされていますが、食餌の問題や胃の流出路障害なんかで引起こることがあります。

とてもかわいそうなエピソードとして

『今日お誕生日だったのでワンちゃん用のケーキ🍰を食べさせました』

ということがありました。

ワンちゃん用のケーキ自体、犬にとって毒性があったりするわけではありませんが、

使用している食材の中にスポンジなど炭水化物が多い場合があります。

炭水化物はタンパク質などと比較して胃内でガスが発生しやすく、胃が膨らんでしまう一因の可能性があります。

そのワンちゃんはお誕生日の夜に開腹手術を行うこととなってしまいました(涙)(命は助かりました)😫

もう一つは胃の流出路障害です⛔️

つまり、胃から腸へ食物が移動する経路が何らかの原因で塞がれているということです。

多いものとしては腫瘍性病変です😔

若い子よりも圧倒的高齢犬での発生が多い印象のこの疾患。

消化管、特に胃の出口である幽門という部位にできものができてしまい、食物の流れを悪くし、結果として胃拡張になってしまいます。

また胃捻転を起こす要因としては、胃を固定している膜の緩みなどが挙げられます。

一過性の胃拡張の場合は、胃ガスを抜いた後、再度胃にガスが溜まってこないかを経時的にレントゲンで確認します。

再度胃が膨らんでくることがあれば、全身麻酔を施し、口から胃へチューブを挿入し、胃のなかにあるガスや食べ物を洗い出す、胃洗浄という処置を行います。

その際、内視鏡で胃拡張になる要因(腫瘍や異物など)がないかを同時に確認します。

胃捻転まで起こしている場合は、内視鏡で胃の捻れを目視で確認し、胃粘膜の色をみます。

胃粘膜は通常ピンクに見えますが赤黒く変色している場合は、胃へのダメージが大きく、予後も要注意となります。

胃捻転は胃洗浄で捻転が解除できることもありますので、開腹手術を行う前に胃洗浄を実施し、捻転が戻らないか試みます。

胃洗浄でも捻転解除できない場合は、お腹を開けて手によって胃の捻れを元に戻してあげる必要があります。
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胃のお隣には脾臓という臓器があり、胃と脾臓は胃脾間膜という膜で繋がっているます。

胃捻転を引き越した場合、一緒に脾臓の位置も大きく変わっている場合や、胃脾間膜や脾臓の血管の損傷により出血を起こしている場合もあり、その場合は脾臓の摘出も同時に行うこともあります。

胃の位置を戻したら、そのままお腹を閉じるのではなく、再度捻転しないように、胃を固定します。

私が経験がある方法としては、胃の幽門洞と呼ばれる部位と肋骨に付着している筋肉部分とを縫合し、固定する方法です。

胃の損傷が激しい場合は胃の部分摘出も行うこともありますが、胃の切除を行った犬の致死率は70%程度とされています。

胃固定を施したら約1ヶ月程度は食事量に気をつけてもらい、胃を異常に膨らまさないよう少量頻回の給餌をお願いしています。

この病気はかなり緊急性が高く、さらには手術が必要になる疾患のため、すぐに病院へ行く必要があります。

『お腹が膨れてきた』は、胃拡張以外にも腹水や腫瘍など、怖い病気の兆候であると考えられますので、長く様子を見ることは手遅れになってしまう恐れもあります。

また好発とされている大型犬やダックス、コーギーの飼い主様は特に高齢期にはこの病気が出現する可能性がありますので、食事内容や与える量や頻度など今一度見直してみても良いかもしれません。

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