精子の検査

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閲覧いただきありがとうございます!
東京都内の不妊治療クリニックで胚培養士をしています、フクワライ(embryology2901)という者です。
今回は以前のブログでも話したことのある「精子の検査」についてお話します。
ちょっと長いですがお付き合いください。

精子とは

まず最初に精子というものについて簡単に説明します。
皆さんご存じだと思いますが、精子とは男性が作っている配偶子のことです。
※配偶子…生物において二つ合わさって新しい個体を作る細胞のこと。ヒトでは精子と卵子のことです。

精子はおたまじゃくしのような形をしています。
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頭部と呼ばれるところに核(DNAが入っているところ)があり、中片部と呼ばれる首にあたる部分にはミトコンドリアが入っています。
尾部は鞭毛という器官があり、これが動くことで精子は泳ぐことができます。

精子は精巣で作られ、作られた精子は精巣上体→精管→尿道を通って射精され体外へ排出されます。
射精された精子が女性の子宮内へ入り、卵管を通って卵子と出会えば受精→受精卵が成長→子宮で着床、という流れで妊娠が成立します(いわゆる自然妊娠の流れ)。

精液検査の目的

不妊治療を始める方、もしくはブライダルチェックをする方はまず最初に精子の検査をします。
精液検査の目的は、ざっくり言うと自分の精液の状態は自然妊娠/不妊治療での妊娠が可能かどうかを調べるためです。
妊娠できる元気な精子が多数いれば自然妊娠する確率は比較的高いですし、元気な精子が少なければ自然妊娠は確率が低いため、専用の治療を行ったり不妊治療を行う必要があります。
妊娠を目指すうえでどのような手順を踏めばよいのか判断するために、まず最初に精液検査は行われます。

精液検査の実際

多くの施設で顕微鏡を使った人の目での検査、または機械を使用した自動検査が行われています。(今は機械の方が正確で楽なので、機会を使用した検査の方が多い印象です)
人の目でも機会でも、精子の数や動きを正しく検査するにはある程度の熟練が必要となります。
そのために訓練をした胚培養士が検査を行うのです。

精液検査は下限値というものがあります。
WHOという機関が出している値があり、2021年に報告された値は以下のようになっていました。
精液量:1.4mL
精子濃度:1600万匹/mL
精子運動率:42%
総精子数:3900万匹
正常形態率:4%

妊娠が成立したカップルの男性の精液を調べた時、95%以上の人がこの値以上でした。
したがってこの値より低い場合は基本的に精子が少ない、動きが悪いということになります。
この値は数年おきに更新されるので病院によっては少し違う値が提示されるかもしれませんが、大体これくらいの値が基準になります。

この基準をもとに医師や胚培養士は精液の状態を確認し、精子の状態を患者さんへ説明しています。

精液検査で何を見るか

精子の検査は、精子がいるかいないか数は十分いるかしっかり動いているかきれいな形の精子はいるか、などを調べます。

①精子がいるかいないか
まず精子がいるかいないかが重要な点になります。
精子が1匹でもいれば理論上は受精させることが可能ですので、妊娠へたどり着くことは可能です。
逆に射精された精液に精子が1匹も確認できなかった場合、その精液から受精させることは不可能ですので妊娠もできないことになります。
※精子の検査は精液の一部分を見ているだけなので、検査していない精液に精子がいる可能性はあります。ですので残った精液を遠心分離し、精子がいるであろう部分をさらに詳しく顕微鏡で見る作業を行います。
射精された精液内に精子がいなくても精巣に精子がいる可能性があるため、精巣から直接精子を採取する手術(精巣内精子回収法、TESE)を行えば精子を得られる場合もあります。

②数は十分いるか
精子がいる、となった場合は次に数が十分にいるかを見ます。
精液の量と、その精液内にどのくらいの濃度で精子がいるかを確認します。
精液量が少ないとどうしても精子数が少なくなってしまいますし、精液量が多くでもその中の精子濃度が薄いとまた精子数が少なくなります。

③しっかり動いているか
精子がたくさんいたとしても、動いていなければ泳いで卵子までたどり着くことはできません。
精子が動いているか、また動いているにしてもまっすぐ泳いでいるのか、同じ場所をくるくる回っているのか、その場でぴくぴくしているだけなのかで妊娠するかどうかも変わります。

④きれいな形の精子はいるか
精子はほとんどが正常な形ではないですが、その中でも正常な形のものが何%あるか調べることで精子の正常度を推測できます。
形の悪い精子は中にあるDNAの質が悪かったりミトコンドリアなど必要な器官がなかったりするため、自然妊娠しにくい・体外受精で受精率・発育率が悪いなどが起こりやすいです。
正常形態率は4%以上が良いとされていますが、0%でなければ顕微授精等で正常な精子を選ぶことができるため、あまり心配しなくてよいとしている病院もあります。

⑤その他
その他、精子のDNAの質を調べる検査(精子DNA断片化指数:DFI)や、精子頭部の先端(先体、卵子と融合するところ)を調べる検査などがあります。
どれも高度な検査で通常の精液検査では行わないものですが、オプションとしてこれらの検査を行っている病院もあります。

最後に

今回は精子の検査について解説しました。
一言に精子の検査といっても色々話すことがあるのでまだ書き足りない事がありますが、おおまかなことは説明できたと思います。

もし今回の内容や不妊治療について知りたい事がありましたらメッセージ等いただければ解説させていただきますのでよろしくお願いします!

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