A「よろしくお願いします」
B「お願いします」
A「最近さ、そろそろ結婚したいなと思ってるんだよね。」
B「そうなんだ。」
A「良い相手を見付けて、人生のバッテリーを組みたいなって思って。」
B「まあ分かるよ。」
A「どれ程離れた塁に進んでも、帰って来られるホームがあるって素晴らしいことだなって思って。」
B「それはそうだけだな。」
A「俺というピッチャーと、嫁というキャッチャーがさ、」
B「ん?」
A「会話のキャッチボールをするんだよ。」
B「ちょっと待て。」
A「何だよ?」
B「野球の例え多いな。」
A「え?」
B「お前の話は野球の例えが多すぎる。バッテリーだのキャッチボールだの。」
A「別にいいだろ。野球が好きなんだよ。」
B「俺は別に好きじゃないから。」
A「でも言ってる意味は分かるだろ。俺誰でも知ってるような野球の単語しか使わないし。」
B「だとしても、わざわざ例える意味が分かんないんだよ。」
A「分かりやすいからに決まってんだろ。」
B「そうか?前から思ってたけど、野球の例えって的を得てないこと多いぞ?」
A「そんなことないだろ。ホームは家庭って意味だから、そこにいるキャッチャーは嫁、帰って来るランナーは旦那。な?頭にすっと入って来るだろ。」
B「なんで夫婦が同じチームにいないんだよ。」
A「え?」
B「帰って来た旦那をアウトしようと待ち構えている嫁って意味分かんないから。」
A「……時には喧嘩だってするだろ。だから敵同士なんだよ。でも本心で憎み合ってるわけじゃない。スポーツマンシップに則る野球も一緒。文句あるか?」
B「さっき人生のバッテリーを組むって言ったじゃん。」
A「……。」
B「なんでピッチャーだった旦那がランナーとして帰って来るんだよ。味方なのか敵なのかはっきりしろよ。」
A「……二刀流だよ。」
B「はあ?」
A「最近流行ってんだろ。ピッチャーもバッターもやるんだよ。」
B「いや言い訳が苦しいって。今敵か味方かの話してるから。」
A「最先端の情報を取り入れて挑戦しただけだから。お前と違って先に行ってるから俺は。」
B「先に行ってるやつが、ホームには嫁がいるって時代遅れなこと言うわけねえだろ。今の世の中共働きが当たり前になってるから。」
A「……細かいわ~。お前ロージンバックの粉くらい細かい。」
B「はあ?」
A「お前はロージンバックの粉かって。」
B「え、なに?」
A「あ、知らないんだ~。そんな程度の知識で、よく野球の例えが分かりにくいとか言えたな?勉強し直して来いよ、ファームでな。」
B「お前誰でも知っているような単語しか使わないんじゃねえのかよ!」
A「うるせえな。野球ファンの応援じゃないんだから。」
B「お前本当に野球好きなのか?ファンの応援あっての野球だろ。」
A「よく分かんねえよ、お前はドラフト会議か。」
B「お前ドラフト会議のことよく分かってねえのかよ!詳しくもねえじゃん。」
A「じゃあドラフト会議の意味お前は言えんのかよ。」
B「各球団が、一位から順番に取りたい選手を発表して、他の球団と被ったらくじ引きで決めるやつだろ?」
A「え~と、よく分かんないから野球で例えて?」
B「なんでだよ!なんで野球で例えるの嫌いな俺が、野球を野球で例えなきゃいけないんだよ。殺す気か!」
A「分かった。じゃあ金輪際、野球では例えないよ。」
B「ああ、悪いけどそうしてくれ。」
A「これにてゲームセット。だな。」
B「え?」
A「あ、今のはサッカーのゲームセットな。だからセーフ。あ、このセーフはソフトボールのだからアウトじゃない。あ、これはテニスのアウトね。」
B「そこまでして野球に例えたいのかよ……。もういいよ。」
A&B「どうもありがとうございました。」
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