【コント】「人類からのクレーム」

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明転

人類は動物の毛皮を着て、槍を持っている。

人類、電話をかける。

神、電話を取る。 

神「お電話ありがとうございます。こちらカミサマーサポートセンターです。」

人類「ありがとうございます、じゃないんだよ。」

神「はい?」

人類「この前おたくから買った商品なんだけどさ、」

神「ご購入ありがとうございます。それでは失礼いたします。」

人類「待て待て。『けどさ』って言ってるじゃん。クレームが始まる空気感じ取れよ。」

神「失礼いたしました。何の商品に関するご相談でしょうか?」

人類「これだよ。頭の中に入ってる、脳。」

神「脳ですね、ちなみにサイズは?」

人類「L。元々Mは持ってたから。」

神「脳のLですね。どのような点にご不満がございます?」

人類「いやね、買った時は良かったんだよ。おたくのとこのセールスマン、あれなんの動物だったけな……。」

神「蛇ですね。」

人類「ああ、それそれ。その口の上手い蛇から薦められて買ってさ、初めは良かったんだよ。火を起こせるようになったり、道具を使えるようになったり、こうやって言葉を使えるようになったり。おかげで色んな問題を解決できるようになったんだ。」

神「お褒めいただきありがとうざいます。励みになります。それでは失礼いたします。」

人類「まだだって。こっから文句言うターンが始まるから。美味しいところだけ貰おうとするな。」

神「失礼いたしました。脳のLに対するご不満とはなんでしょう?」

人類「なんて言うか、悩みが増えたんだよ。」

神「悩み、ですか。」

人類「そう。これからも獲物取れるかな?とか、急に肉食動物が襲って来たらどうしようとか。おかげで寝つきが悪くなったんだ。」

神「お客様、申し訳ございませんが、悩みというものは脳のLにつきものでして。」

人類「そんなの聞いてないよ?」

神「いえ、説明書にも『使用中、悩みを伴うことがあります。その場合は使用を中止してください』と記載してございます。」

人類「俺説明書読まないタイプなんだよな~。」

神「悩まれるということでしたら、説明書に記載されている通り、一度脳の使用をお控えになってください。それでは失礼いたします。」

人類「ちょっと待てって。使用を控えろって言われても、中々難しいんだよ。」

神「そうおっしゃられましても。」

人類「いっそのこと、返品しようと思うんだけど、できる?」

神「クーリングオフ期間であれば可能です。ちなみに、どれくらい前にご購入されましたか?」

人類「大体……10万年前かな」

神「じゃあ無理ですね。一般的なクーリングオフ期間は8日ですから。」

人類「とっくに過ぎてるな……。」

神「とりあえず、これからもしばらく使ってみるというのはいかがでしょうか?悩みは問題を予兆している状態。脳のLはその問題もきっと解決いたしますよ?」

人類「……分かった。じゃあもう少し……」

神「それでは失礼いたします。」

神、電話を切る。

人類「早いな切るの!……まあ、もうちょっと使ってみるか。」

暗転

明転

人類、植物でできた服や着て、石でできた装飾品を身につけている。

人類、電話をかける。

神、電話を取る。

神「お電話ありがとうございます。こちら、カミサマーサポートセンターです。」

人類「話が違うじゃねえか。」

神「はい?あ、この番号は人類様ですね。お久しぶりです。」

人類「お久しぶりです、じゃないんだよ。いや脳のLの件だけどさ。」

神「どうされました?」

人類「言われた通りあの後も使って、まあしばらくは良かったんだよ。」

神「お褒めいただきありがとうございます。励みになります。それでは……」

人類「まだだからな?このパターン忘れてないから。」

神「失礼いたしました。」

人類「実はあの後、めちゃくちゃ気候が乾燥してさ、食べ物が取れなくなったんだよ。その時に脳のLが役に立ってさ、乾燥に強いムギの種を地面に撒いて川から水を引いて育てたり、そこに集まった動物を群れごと飼育したおかげで、飢えを凌げたんだ。」

神「それは良かったですね。」

人類「全然良くないんだよ。」

神「というと?」

人類「ずっと動物を狩ったり植物を取ったりしてたから、生活の変化で体の調子が狂ってるんだ。長い間屈んでると腰が痛くなってきたり、あと他にも問題があって……」

神「お客様、それは大丈夫でございます。」

人類「え?」

神「お客様はこれまで、環境が変化する度に対応されていましたから。」

人類「全然覚えてないんだけど。」

神「それは脳のLを購入される前でしたので。でもちゃんと、外敵や獲物を見つけやすいように二足歩行になったりされてたんですよ?」

人類「へえ、そうだったのか。」

神「はい。それはもう見事な大活躍でした。」

人類「まあ、それだったら今回も大丈夫か。」

神「その通りです。」

人類「じゃあ頑張ってみるわ。」

神「私は心より、お客様のご繁栄をお祈りしております。」

人類「ありがとう。」

神「失礼いたします。」

人類「おう。」

神、電話を切る。

人類「……いや他にも問題あるから!まあ、使ってみるか……。」

暗転

明転

人類、タキシードを着ている。

人類、電話をかける。

神「チッ。面倒くせえな……。」

人類、電話をかけ続ける。

神、無視する。

人類「あれ?番号合ってるよな?」

人類、電話をかけ続ける。

神、受話器を取る。

人類「やっと出……」

神、すぐに切る。

人類「は?どういうこと?」

人類、電話をかける。

神「はあ……。」

神、電話を取る。

神「お電話ありがとうございます。こちらカミサマーサポートセンターです。」

人類「なんで切ったんだよ?」

神「手が滑りまして。」

人類「嘘つけよ。本当は?」

神「すいません、ちょっとダリいなと思ってしまいました。」

人類「ぶっちゃけ過ぎだよ。そこは嘘つかないと。」

神「どっちなんですか。」

人類「そんなことはどうだっていい。今日は褒めようと思って電話したんだよ。」

神「え、そうなんですか?」

人類「ああ。あの後農業のせいで人口が増えたのもあってさ、戦争が続いたんだ。だけどイスラム教っていうのができて、それなりに平和になったんだ。」

神「それは大変結構でございます。」

人類「……あれ?あんたって神だよな?」

神「はい。」

人類「イスラム教ってあんたが出て来る話なんだけど、あんたは知らなかったの?」

神「ああ、どのような神話も私の同人誌みたいなものですので。」

人類「そうなのか。で、その後イスラム教の力も弱くなったんだけど、なんだかんだ言って昔より戦争は減ったし、最近自分達で働かなくても、勝手に大量の生産物を作れる道具が出来たんだ。」

神「お褒めいただきありがとうございます。」

人類「なんだかんだ言って、やっぱり脳のLは便利だよ。」

神「恐縮です。」

人類「さすが万物の祖だけあるな。」

神「何をおっしゃいますやら。」

人類「また電話するわ。」

神「はい、お待ちしております!」

人類、電話を切る。

暗転

明転

人類、軍服を着ている。

人類、電話をかける。

神、電話を取る。

神「お電話ありがとうございます!こちらカミサマーサポートセンターです!」

人類「めっちゃ戦争起きたんだけど。」

神「え?」

人類「今までにないくらいの規模の世界が起きてるんだけど。」

神「何でですか?」

人類「新しくできた道具のせいで物が余分に出来るから、買い取ってくれそうな国の奪い合いになってるんだ。脳のLのせいで、今までじゃ考えられないくらいの戦争が起きたよ。」

神「お客様、困りますよ。」

人類「は?」

神「次電話するときも褒めてくれるって前回約束してくれたじゃないですか。」

人類「別に約束してはないよ。そうゆう雰囲気になっただけだから。」

神「で、何が起きたって?」

人類「戦争だって!凄まじい数の死者が出てるんだよ。」

神「どうせまた脳のLが解決するから大丈夫ですよ。それじゃ失礼しますね~。」

神、電話を切る。

人類「嘘だろこいつ……。」

人類、電話をかける。

神、無視する。

人類、電話をかけ続ける。

神、電話に出る。

神「お電話あざ~す。こちらカミサマーサポートセンターですけど?」

人類「おい、いい加減にしろよお前。」

神「なんすか?」

人類「態度悪くなってんじゃねえか。」

神「別にいいでしょ?」

人類「そもそもカミサマーサポートセンターって何だよ?」

神「カスタマーサポートセンターを文字ったんです。」

人類「つまんねえぞ?」

神「別にウケ狙いでやってないし。funnyじゃなくてinterestingの面白さだから。」

人類「どこがインタラスティングだよ。カスタマーをサポートするセンターでカスタマーサポートセンターなんだろ?カミサマーサポートセンターだとお前をサポートするセンターになってんじゃねえか。」

神「……死ね。」

人類「おいおい、ヤバいよお前。」

神「黙って使ってろよ。どうせまた、『脳のL、やっぱり使えました~。』ってアホみたい言ってくるんだから。」

人類「言わねえよ。今回ばかりはない。」

神「いや、絶対感謝するから。」

人類「ないない。っていうか脳のL捨てることにしたわ。」

神「絶対無理。もう手放せないよ。」

人類「言ったな?じゃあまた電話するから、覚えとけよ?」

神「いいよ。そっちこそな?」

人類「当たり前だろ。」

人類、電話を切る。

暗転

明転

人類、スーツを着ている。

神、電話をかける。

人類、無視する。

神、電話をかけ続ける。

人類、出る。

人類「なんだよ?」

神「えらい繁栄してまんなあ?」

人類「うるせえな。」

神「あんさん。」

人類「しゃべり方どうなってんだよ。」

神「脳のLフル活用してる感じですけど、捨てるって話はどうなってますのん?」

人類「マウント取ろうとしてるところ悪いけど、もう脳のL使わないから。」

神「はい?」

人類「確かに脳のLは便利だったよ。だけどデメリットも沢山あった。だけどな、遂に人工知能っていうのを発明したんだよ。これは脳のLと違って不完全じゃないからさ、もちろんデメリットなんてない。ざまあみろ!」

神「いやいや、仮にそれが完璧でも、それを使う脳のLが不完全なんだから、問題は起きるだろ。」

人類「自分で不完全だって認めやがった!マジウケるわ。言っておくけど、もうお前は用済み、じゃあな~。」

人類、電話を切る。

神、また溜息を吐く。

神「どうせまたクレーム言ってくるんだろうな。まあでも、脳のLの代金として魂を支払ってもらったし、これからも付き合うしかないか……。」

暗転

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