【書籍紹介】思考力の地図 論理とひらめきを使いこなせる頭の作り方(細谷功)

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なぜこの本を選んだのか?

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著者の細谷功さんの本は好きで、一番最初に読んだ「『地頭力を鍛える』~問題解決に活かすフェルミ推定~(東洋経済新報社)2007年」は当時、新入社員の私には、こんな考え方があるんだ、世の中のすごい人たちはこんな考えができるのかと衝撃を受けたことを覚えています。その後も何冊か読んで、一番好きな本は「『具体⇄抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)2020年」です。

今回ご紹介したいのはは2022年で発刊された「『思考力の地図』(KADOKAWA)2022年」です。思考力を一つの「地図」として整理され、思考の順序や何をベースとしてか考えるべきなのかをとてもわかりやすく表現されております。

この本をおすすめする人

ものごとをもう少し深く、視野を広く、視座を高く考えることがなかなかできない方へ、是非読んで頂きたいと思いました。
・「結局何が言いたいのか分からない」とよく言われる
・常に誰かに何かを言われないと動けない
・ワンパーンしか考えることができない
そのような悩みを抱えている人が、思考力を身につけて、今より視野・視座・視点を広げるための一冊になると思います。
すぐに検索すれば答えが出て、勝手に自分のニーズでオススメが出てきて、より具体的な情報が溢れている中、本当に必要な情報は何か?本当の自分の考えは何のか?
今回の書籍を読むと、抽象的に考えることがきっと好きになると思います。

おすすめ度:★★★★☆

本の概要

変化の激しい、答えを自ら出して、問いを作り出して、行動することが求められる時代の中、「思考力」の重要性が相対的に上がってきている。すべての思考力には論理的思考力と直感力のバランスが大切な中、多くの人は直感で行動し、直感で選択をている。
思考力を高めるためには

BASE   ・・・「疑う心」と「具体と抽象」
THINK  ・・・論理の直感
METHOD  ・・・思考のフレームワーク

上記を知識として入れて、あとは実践のみ、という構成となっております。
例題も多く記載されており、是非とも手に取っていただき、考え方のしくみを感じていただければと思います。

本書を開くと「思考力の地図」を建物で表現した1枚の絵があります。
最初にそれをしっかり見てから本書を読み進むと著者の意図がより理解しやすいかと思います。とても大切な地図となりますので、どこの部屋にいるのかを照らし合わせながら読み進めると、より理解できると思います。

今なぜ、思考力が重要なのか?

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変化の激しいVUCA時代(「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」)と言われて中、今までの正解を求める、与えられた問題を解くだけでは、価値が出しづらい世の中に変化してきました。IT技術の劇的な変化により、我々の生活が一変したように、いつ戦争が起きるのかも分からない不安定な時代の中、終身雇用が終わりをつげ、より個の力が必要となってきている中、自分で思考し行動していく力がより、求められていると思います。

思考力は、新しいものや自分なりのもの、あるいはビジネスであれば他者との差別化を図るためにのもの、つまり「違うもの」を生み出すための能力であり、それは変化の激しいときに特に重要な能力となる(P15ページより)

インターネットが出てきて、Googleが学期的な検索技術を発明したときから、すでに情報は民衆化され、専門的な知識に誰でもアクセスすることができました。
最近ではOpenAI技術により「ChatGDP」がニュースで取り出されており、曖昧な投げかけに関しても、的確な「答え」を出してくれるようになりました。(フェイク情報もあり、2020年までにデータで処理しているので、注意が必要ですが)

使ってみて一番の衝撃は、その答えを信じ込んでしまう、という点です。いかにも人間が回答しているかのように回答文が表示され、断定口調なので、何の疑いもなく信じてしまいます。そこには自分の「思考」はなく、与えられた「答え」を信じ込む自分がいました。

この流れはおそらく止まることはなく、より精度の高いサービスが次々と出てくると思います。そんなサービスが出てきた時、あなたはその情報に振り回されず、自分の頭で思考し、しっかり判断することはできるでしょうか?私にはできないと思っています。

では、何が必要となるのか?それは次の章で説明をする「疑う心」と「具体と抽象」になります。

思考は「疑う心」と「具体と抽象」から始まる

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これを読んでいただいている方のほとんどの方が仕事をしているかと思います。では質問です。仕事とはなんでしょうか?

色々な考えがあるかと思います。お金をもらうため、職業そのもの、労働、社会との繋がり、などなど。

私は仕事を一言で表現するなら「誰かの課題を解決すること」です。

誰かの課題を解決するには、2つ必要となります。それは「解決方法」と「課題の定義」です。つまり、その課題自体をどう解決するのかの具体的な方法と、そもそもどういう課題を解決する必要があるのか、という抽象的な問いが必要になります。

どちらの能力が今の世の中必要とされているでしょうか?それは「課題」自体を発見する力となります。

疑う心とはつまり、「常識を疑う」ことに日頃から実践しているかどうか、ということです。端的に言うと、常識を疑うというのは「自分自身を疑う」ことにつながります。自分自身の信じることを疑ってみる、おかしいのは実は自分(の常識)ではないかと思ってみることです。(34ページより)

常識を疑うことから始まる


本質的な課題を発見するには、自分の常識、他人の常識、世の中の常識を疑うことから始まります。一般的な常識とは何があるでしょうか?

例えば
・会社には毎日出社しないといけない。仕事は会社でしかできない
・結婚=人生の幸せである
・運動すれば痩せることができる

などなど、少し前まで常識だったことがこの数年で覆ったり、まだ自分の常識に縛られていることがあるのではないでしょうか?
世の中、ダイエット関連の本や新しいメソッドが多く出てきます。私もダイエットをしようと運動を始めたことがありました。けど痩せませんでした。なぜでしょうか?

それは運動で消費できるカロリーはそこまで多くない、ということです。1時間走っても茶碗いっぱいのご飯にも満たないです。そして、何より運動をすると、罪悪感が消えて、かつお腹も空くので、食欲が増して、食事の量が増えます。
これは典型的な自分の常識に従って、間違った課題設定と解決方法を導き出した結果となります。

課題設定・・・運動不足だから太ってきたんだ
解決方法・・・運動をして、痩せよう

そもそも前提として、なぜ痩せたいのか?痩せる必要があるのか?から疑うべきですが、そこは一旦置いたとして、ついつい何か思考する時に自分の常識の範囲内で考えてしまわないでしょうか?
ダイエットを例にすると、問題は運動以外にあるかも知れない、と疑ってみることです。

ダイエットがうまくいかない原因?太ってきた原因は?

・運動不足かも知れない
・食事に問題があるのかも知れない
・何かの病気かも知れない

と前提条件を疑うと、他に考えられる原因が出てきて、それぞれに解決策が出てきます。
問題の根本的な原因はなんのか?その「良い問い」を作れることが、これからは必要な力になります。

なぜ「疑う心」が重要なのでしょうか。例えば論理の世界では、前提が正しければ、正しい水村からは正しい結論が導かれます。反対にそもそもの前提が違っていたら、いくら推論が正しかったとしても、結論が違う可能性が非常に高いということになります。(34ページより)

具体と抽象を行ったり来たり

会社の上司や家族との会話で
「あなたの話は抽象的すぎて何を言っているか分からない。もっと具体的に言って!」
「今はそんな具体的な話をしてもしょうがない。もう少し視野を広げようよ」
と言われたことはないでしょうか?
いきなり具体的な話になったり、具体的な話しかしない、と相手との前提条件が合わず、会話が噛み合わないことがあります。

どちらのバランスも必要ですが、自分と試行するときは

・今は抽象的なことを考えよう
・それを具体的に考えるとどうなるのだろう?

と、具体と抽象を行ったり来たりすることで、思考力を高めることができます。

ダイエットの話に戻りますが、いきなり明日から運動を始めよう!と具体的な解決策を掲げて、明日から運動を初めても、きっと長続きはしなかったと思います。それはいきなり具体的な話から初めてしまい、抽象的な部分を考えなかったからだと思います。

先ほどの例の通り、ダイエットするにはいつくも方法があり、そもそも原因が異なります。実は運動の問題ではなく、そもそも食生活を見直さなければいけなかったのか?実は病気などでそういう体質になってしまったのか?人によって原因バラバラです。そもそも前提に立って、原因をゼロベース(自分の常識を外して)で考え直すことが大切です。

さらに抽象的に考えると、そもそも「なんのためにダイエットをするのか?」に行き着きます。「あれ?そもそもなんのためにダイエットするんだけっけ?ダイエットする必要がある?」とその部分を納得していない状態でダイエットをしても途中で断念してしてしみます。

ここで再度問いを立てます。
なんのためにダイエットをするのか?

・体型をスリムにしてモテたいから
・人生100年時代、健康寿命を伸ばすために体型を標準的にしたいから
・人から太ったね、と言われて恥ずかしかったから
・去年の服がキツくなってきたら。もっとオシャレをしたいから。

など、ダイエットをしようと思ったきっかけが思い浮かぶと思います。

よくあるのが「モテたい」からですが、そもそもモテるための解決策がダイエットなのか?モテないのは体型の問題なのか?他にないのか?太っててもモテている人もいるしな。とダイエットという解決策が、そもそも本質的だったのかを考え直すことができます。

という風に常に具体と抽象を行き来することで、より根本的な問題にたどり着くことができます。

今回の例では
  抽象=目的/原因
  具体=解決策

で考えましたが、他にも色々とあると思いますので、何か一つ、今解決したい課題や悩み、不安があるようでしたら、それを軸に具体と抽象を行き来してみてください。全然別の問題が浮き彫りになるかも知れません。

目的つまり「なぜ」を考えると、そもそも別のやり方でもいいんじゃないかということまで思考が広がり、やろうとしている手段そのもを別の形に変えてしまおうという発想まで飛んでいきます。(43ページより)

論理と直感の本質を知ろう

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あたなは自分の直感を信じますか?直感力があると思いますか?

「あの人と結婚したのは自分の直感を信じたの」
「あまり考えずにフィーリングで決めている」
「レストランのメニューも全然迷わずに決めれるの」

と迷いなく決めることができる人もいれば、私のようにレストランに行っても全部のメニューに目を通さないと注文できない人もいます。

直感というのは理屈で説明しきれない部分があり、他人が再現することが難しいという特徴を持っています。結果として、論理は客観性の担保、直感は創造性に主に寄与するところが大きい、といえます(53ページより)

アーティストや芸術家は直感が鋭く、なんでも迷いなく行動しているイメージがありますが、私はそうは思いません。稀に本当の天才の方もいるかもしれませんが、言葉にしていないだけで、頭の中では、凄まじいスピードで思考し、具体と抽象を行ききしているはずです。

よく言われているのが、戦略コンサルタントのようななんでも答えを知っていて、あらゆる課題を一瞬で導き出して答えを出している、そんな人は実際にいるのですが、すべて直感かというと全然違います。直感で答えを出せる、その領域にいたるのに、想像絶するほどの思考を繰り返し、空気を吸うかのように具体と抽象を繰り返したからこそ、自分の直感が論理も破綻せず、かつ誰も思いつかないことを誰よりも早く発想することが可能になります。(もちろん、そもそもの脳の作りが違うのもありますが・・)

私のような平凡でもそのようになるには、常にそのような思考を意識して、繰り返すしかありません。特にビジネスの世界では、直感だけ勝てるような世界でもなく、すべての仕事を直感だけで動いていたら、全くお客様、上司からは評価されないでしょうか。

よくある問題として、会社の上司から「あの仕事今どうなっている?進捗を教えて」と言われたときに「特に問題なく順調です」という人がいますが、完全に直感で反応的な回答をしてます。

相手は「事実」と「示唆(その事実をどう捉えているか)」を知りたいのに、事実なのか示唆なのか分からない回答をしてしまっては、相手の求める回答にはなりません。
・まず事実は何のか?(遅れているのか、スケジュール通りなのか?)
・そこから導き出される課題は何か?(こうなった場合に遅れる可能性がある、など)
を報告する必要があります。
もしすぐに答えれないなら、「状況を整理して5分後に再度報告します」と言うべきです。
上司に進捗を聞かれている時点で、大抵その仕事には課題があることが前提なので。

まずは自分の思考の癖を自覚する必要があります。

・いつも言い訳から入っているなぁ
・あまり考えずに直感で答えているなぁ。反応的に答えてしまっているなぁ
・思い込みが強いなぁ。
・すぐ批判に捉えてしまうなぁ
・何か裏があると思ってしまうなぁ

それを意識することで、思考力も直感力も向上していくはずです。

論理というのはよくも悪くも誰でも同じルールで動かなければならないのに対して、感情は一人一人すべて違うことが基本です。論理には時と場合によって変わるという波がありませんが、感情は時と場合によって違ってもなんの不思議もありません(91ページより)

思考力のフレームとツール

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通常の生活でも使えるフレームワークを3種類紹介してみたいと思います。
何かを考えるときに使うと、物事をとても深く考えることができます。本書でも他にもビジネスや仕事で役にたつフレームワークをいくつも紹介しているので、ぜひ読んで実践してみてください。

MECE(もれなくダブりなく)

何かを分類分けしたり、課題を特定しようとする時に便利な思考方法となります。

例えば、新しいビジネスを考えようとした時に、対象とする「顧客」を決める際に、どのように決めるでしょうか?いきなり「30代の男性」と直感で決めてもいいのですが、他にどういった分割できるのか?もしくは「30代の男性」をさらに分割するとどうなるのか?を考え、なるべきターゲットのイメージを抽象から具体に落とし込む必要があります。

その際に、どう分けるのか?になりますが、その際に可能な限り、漏れもなく、ダブりもないように分ける必要があります。

MECEである分類
・都内に住んでいる/それ以外に住んでいる
・子供がいる/子供がいない
・独身/既婚/離婚
・戸建/借家

MECEでない分類
・住まいが東京/埼玉     ・・・それ以外は?
・車を持っている/持っていない・・・バイクは?それ以外の乗り物は?
・会社員かフリーランスか   ・・・個人事業主は?資産家は?他には?

と言う形で、何かしたら分類が重複していたり、抜けているケースが多くなってしまいます。この分類は被っていないか?抜けはないかを考えるとで、後ほど紹介するロジックツリーの精度が高くなります。

As-is/To-Be(あるべき姿と現状)

その名の通り、あるべき姿を立ててから、現状と比較をして、どうすればあるべき姿に近づけるのか?を考える方法です。

特に意識せずに使っているとは思いますが、まずはあるべき姿を立てる方が、より的を得た解決方法を出すことできます。

あるべき姿:フルマラソンを4時間切って走れるようになりたい
現状   :フルマラソンに出たことない。ハーフマラソンなら2時間

とすると、あるべき姿に近づくために、解決策(ケーパビリティ)を出すと思います。

ケーパビリティ
・フルマラソンを走るために必要な道具を揃える
・フルマラソンを走れる体力を作る→練習する
・フルマラソンにエントリーする

という形で考えていくようになります。

何かお客様に提案する際も、お客様はどうなりたいのか?(あるべき姿)を決めることが始めると求められている成果物を作ることができます。

ロジックツリー
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私は一番好きで、一番使っているフレームワークとなります。別の言い方だとマインドマップなども同じですが、何かを考える時にMECEやAs-Is/To-Beを意識しながら、手書きでロジックツリーを作り、何が根本的な問題かを導くようにします。

例えば新しく車を買い替えたいとなった場合、どのように車を決めるでしょうか?
SUV一択だ!という人ももちろんいると思いますが、なぜSUVがいいのか?他の選択肢はないのか、ロジックツリーで考えると次のような形になります。
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XMindツールを使うことで、簡単に作れますので、ぜひやってみてください

思考力の実践

本書に書かれていることを全部実践することは難しいと思いますが、まずは「常識を疑う」から意識するといいかも知れません。ただ、なんでも疑っていたら、だたの嫌味でめんどくさい人になってしまいます。

飲み会いこうよ!と誘われているのに、「ちょっと待って。それって何のために?」とか言う人、もう誘わないですよね。なので知識と実践がバランスが大切ですが、まずは意識して自分の中の思考力を高めてみるのがいいと思います。

本書を読んでみて

不確実性の高い(正解のない)世の中と言われている中、価値の高まっている人は「誰かの気持ちを理解できる」人だと思います。誰も正解を知らず、お客様自身もほしいものを知らない中、相手が潜在的に求めていることを見つけ出すことができれば、今まで以上の付加価値を出せるようになります。

人の気持ちを理解できる、共感できる、相手の問題を理解するには、自分だけの視点ではなく、相手の視点、自分の視点、第3者の視点が必要になります。それをするために、今回の書籍で紹介された具体と抽象を繰り返し、視野・視座・視点を上げることからが一歩だと思います。

ついつい具体的な正解を求めつつある中、抽象的な言葉に逃げてしまっていることが多いと思います。相手と自分の歩み寄りが必要で、お互いの定義を共有し合うことで、相手の気持ちを理解し合える世の中になると思います。
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