コラム58 若手の医師に伝えたいこと

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 医師と言っても勤務医である限りは労働者です。給与所得者として雇われている身です。つまり、自分の時間を提供してお金を稼ぐやり方です。 
 病院で働いていると、医師以外の職種の方々からなんとなく敬われたり、敬語で話されたりするので、自分がえらいような錯覚に陥っている医師がいますが、実際のところは全然偉くありません。ただの病院を運営するための1歯車に過ぎないということを自覚し、謙虚にしたほうがいいと思います。特に、循環器内科医はカテーテル検査がたくさんあって、通常の勤務時間内に終わらないことも多々ありますが、それは当たり前ではありません。循環器内科のカテーテル検査に携わっているコメディカルはたくさんいて放射線技師、看護師、臨床工学技士などですが、彼らは常に時間という人生の一部(時間外労働)を循環器内科医の裁量に託してくれています。私がカテーテル検査をやっているときは常にこの事を意識してしまいます。患者さんの安全がもちろん第一ですが、時間をかけずに済む検査はできるだけ早く終了することの方が合併症も少なくなる可能性が高いですし、コメディカルも自分の仕事の時間配分が幾分やりやすくなります。いつもカテーテル検査を大体30分くらいで終わる事を目指すのが、技術の向上にもつながりますし、患者さんの満足度も上がりますし、コメディカルからも喜ばれます。それを普段目指している上で、必要な症例に時間をかけることが許されるのだと思います。それがたとえ時間外となっても普段しっかりと時間内を目指して努力していれば、コメディカルも喜んで協力してくれるのだと思います。
 もう一つは数字にこだわりを持って仕事をするということです。これは医師に限ったことではないですが、給与所得者=サラリーマンは所詮雇われの身です。資本主義社会では換えのきくサラリーマンほど搾取され続けます。つまり換えのきかない存在にならないと自分の主張はまず通りません。最近は開業も結構大変そうなので、勤務医を続ける医師が多くいます。勤務医として気持ちよく働いていくためにはまず、換えの効かない存在になる事を目指すのが良いでしょう。例えば他の人ができないようなカテーテル治療をこなすとか、論文をたくさん書くとか、学会発表を多くこなすとか、コメディカルの教育に励むとか、治験を多く行うとか、地域に赴いて症例を増やすような開業医さん周りを行うとかです。私自身も勤務医として今の職場(大きめの総合病院)に数年前に就職しましたが、その後上記のことを自分なりに推進してある程度数字として結果を出しました。そして異例かもしれないですが、その数字を元にダメもとでUP給与交渉をしてみたところ、15%程度年収を増やしてもらうことに成功しました。欧米や外資は数字を出せば給与が上がるというのは一般的かもしれませんが、勤務医はまだまだ年功序列が基本となっている医局関連の病院が多く、給与交渉をしたというのを見聞きしたことはありませんでした。実際やってみると「意外とできるもんだなあ」ということと、自分が評価された感じがして自分の人生でとても大きな経験になった事を覚えています。搾取されるだけのサラリーマンにならないように全力で何か数字を出す事を意識しながら医療を展開していく事を強くお勧めいたします。
 今後人口減少に拍車がかかり医師過剰時代が来るのでしょうか?それともその現象は首都圏のごく一部とかで、大半の地域は医師不足が解消されないままなのでしょうか?色々な憶測があると思いますが、個人的には医師の不足した地域がインセンティブをつけて医師を確保していくような時代が来ると想像しています。今後転職を通じて私なりにその予想を先取りして、ちょっと医師が少なめの地域で医療をしてみようと考えています。

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