コラム 28  治療を受ける年齢

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 心房細動に対するカテーテルアブレーションは画期的な治療法です。ここ10年程度で盛んに日本全国で行われるようになってきています。なぜ心房細動を治療するかというと、カテーテルアブレーションによって心房細動が止まって洞調律という正常な脈を維持できるからです。正常な脈を維持できると動悸息切れが治ったり、長期的に脳梗塞や心不全といった心房細動に伴う合併症を減らしたりすることができる可能性があります。 
 しかし、もともと無症状の心房細動の患者さんは動悸息切れがないですし、薬物療法によっても長期的な視点で脳梗塞や心不全のリスクを減らすこともできる場合があります。従ってあまりご高齢で無症状の患者さんにはカテーテルアブレーションで心房細動をなおして正常な脈を維持するメリットが乏しい場合もあります。つまり、慎重にカテーテルアブレーションが必要か必要でないかを患者さんの年齢や症状などを踏まえて吟味することが必要なのです。
 近年(ここ10年程度)カテーテルアブレーションが行えるようになったため、どの施設も比較的積極的に心房細動に対するカテーテルアブレーションを勧める傾向にあります。それは収益や実績を積みたいと言った思惑もありますが、何より医療従事者の善意が絡んでいると思います。「せっかく心房細動をカテーテルアブレーションで治せるようになったのだからできる限り治してあげたい」とか「心房細動を患っているよりは正常な洞調律を維持した方がメリットは大きいであろう(はっきりしたデータは少ない)」とどうしても医療従事者は考えがちで、かつ患者さんの方も不整脈はなんとなく「怖い」から、医者が治した方がいいと言えばそれに従いたくなるものなのです。
 そうそう、なぜ私が年齢の話がしたかったのかというと、ひと昔前の狭心症のカテーテル治療が狭い血管を広げることにフォーカスを置きすぎてしまい、過度の医療につながっていたからです。最近では、動脈硬化があっても無症状の場合や、機能的に狭心症とは言い難い病変はカテーテル治療を行うメリットに乏しいと証明されています。心房細動に対するカテーテルアブレーションもまだまだ長期的なデータが不足していることもあり、現在データの蓄積中ですが、やはり無症状の場合や、ご高齢で日常生活動作が極めて低い方々にはメリットが少ない印象でもあります(今後どんどん臨床研究等でわかってくると思います)。従って、心房細動を見つけたらなんでもカテーテルアブレーションというのは短絡的で、それぞれの患者さんに合わせて、治療方針をしっかり選択しなければなりません。特に、年齢は大きな要素でカテーテルアブレーションを行なった方がいいかどうかに大きく関わってきます。もちろん年齢だけで区切れない個人個人の背景も多分にありますので一概にはいうことはできませんが、ご自身やご家族がカテーテルアブレーションなどの循環器的な治療を受けることを悩んでいたりしましたら、ぜひご相談ください。

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