コラム24 強心薬

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コラム
 重症の心不全患者さんには集中治療室で強心薬を使います。強心薬にはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、ドブタミンがあります。これらを駆使して心不全治療にあたるわけですが、4種類もあるとなかなか使い分けが難しい場面があるので、スワンガンツカテーテルという特殊なカテーテルで血行動態をモニタリングしながらこれら強心薬を増減していきます。
 最近スワンガンツカテーテルの有用性を検討するデータで、あまり心不全が重症でない患者さんにスワンガンツカテーテルを入れることが推奨されなくなってしまったためか、スワンガンツカテーテルでの血行動態を観察する機会が減ってきている印象で少し危惧しております。自分が若い頃はスワンガンツカテーテルの前に張り付いて、患者さんのデータを確認し逐一上司とともに強心薬の変更を検討する機会が多かったのですが、最近はたまにしかみないスワンガンツカテーテルのデータを前に、若手循環器内科医の強心薬調整機会が減っている印象です。
 自分の感覚では、スワンガンツカテーテルがあれば強心薬を調整して10分程度で次の血行動態が把握できるため、場合によっては一時間以内にどんどん強心薬をテーパリングしていくこともできます。ドーパミンが効果不十分なら、即座にドブタミンに変更することもできます。もう一つスワンガンツカテーテルの利点は、高容量の強心薬は効果が頭打ちになって、次の手を考えないといけないということや、低容量の強心薬は最後に投与量を0にする直前まで意外と強い効果を持っていることを肌感覚で理解できるということです。アドレナリンを0.5γから0.6γにしたり、ドーパミンを15γから20γにしたり、ドブタミンを8γから10γにしたり、ノルアドレナリンを0.5γから0.6γにしたり、つまり高容量から増やしてもそれほど効果はありません。それよりはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドブタミンを少量併用していくと効果が出やすい印象です。逆にアドレナリン0.02γを切ると急に血圧が下がってしまったり心拍出が得られなくなったりしますので、低容量投与から中止の判断は慎重に行わなくてはなりません。
 以上のようにスワンガンツカテーテルを用いて強心薬をコントロールすることは循環器内科としての重要な技術であり是非とも若手に習得してもらいたいと思っています。スワンガンツカテーテルを使用する機会があれば今後も積極的に若手医師とディスカッションを深める努力をしていこうと思います。

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