家族信託は新薬

記事
法律・税務・士業全般
こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。

家族信託とは「家族に自分の財産を信じて託し、財産を管理してもらう制度」です。
家族信託により、柔軟な財産管理や、遺言では実現不可能な数次相続が可能になります。

従来から、遺言や生前贈与により財産を引き継ぐ方法がありますが、家族信託はいわば「新薬」です。
遺言や生前贈与という方法では実現不可能だったことが、家族信託という新薬により実現可能になります。

遺言により、自分の財産を誰に相続させるかを指定することはできます。
その指定した相続人(「一次相続人」といいます)は、遺言者の財産を相続した後に、将来的には亡くなることになります。

一次相続人が将来的に亡くなった場合に備えて、更に誰を相続人にするか(「二次相続人」といいます)を遺言で指定しておいても、二次相続人を指定した遺言の部分は無効になります。

しかし、家族信託なら、二次相続人や三次相続人を指定することが可能です。

前回のブログ【父親が再婚した場合に考えておくべきこと】の例と同じく、父親には子が一人いて、妻には先立たれているとします。
そして、先妻が亡くなったあと父親は再婚しましたが、その再婚相手と子とは養子縁組をしていないものとします。

父親は、自分が亡くなったときは再婚相手と子に平等に財産を相続させたいと思い、「自分の全財産は再婚相手と子に各2分の1ずつ相続させる」との遺言を残したとします。

父親の死後、暫くして再婚相手が亡くなったとき、父親の遺産はどうなるでしょうか。

もし再婚相手が遺言を残していなければ、父親の遺産は再婚相手の相続人に渡ることになります。

父親としては、将来的に再婚相手が亡くなったときは、自分の財産は最終的に子にすべて相続させたいと考えるのが普通でしょう。

そこで、「自分の全財産は再婚相手と子に各2分の1ずつ相続させる」という遺言に加えて「再婚相手が死亡したときは子に相続させる」と指定したとしても、後半部分の遺言は無効になります。
遺言によって再婚相手に財産が相続された以上、その財産を処分する権利は再婚相手にあり、父親が決めることはできないためです。

しかし、家族信託なら、この父親の願いを実現することができます。

家族信託には、3人の人物が登場します。「委託者」「受託者」「受益者」の3人です。
委託者とは、財産を信じて託す人のことです。この場合は父親です。
受託者とは、委託者から財産を預かって、管理・運用・処分をする人です。この場合は子にします。
受益者(利益を受ける人)とは、財産の管理・運用・処分によって利益を受ける人です。

委託者と受益者は当初は同じ人(この場合は父親)になることが通常ですので、家族信託が始まった当初は、実質的には登場人物が2人(父親と子)になります。

父親と子との間で家族信託契約を結ぶことにより、当初の受益者を父親にします。
そして、父親が亡くなった場合の受益者(「二次受益者」といいます)として再婚相手と子を指定します。
その再婚相手が亡くなった場合の受益者(正確には「残余財産受益者」といいます)として子を指定します。

この家族信託契約により、父親の存命中は父親の財産は父親のために使われます。
父親の死亡後は再婚相手と子のために使われます。
そして再婚相手が死亡したときは、父親の財産は子が取得することになります。
このようにして、父親の願いを叶えることが可能になります。

遺言等の他の方法では絶対に不可能ですので、家族信託が「新薬」とも称される由縁です。

上記の他に、家族信託によって、次のようなことが可能になります。
①認知症になったときに備えて、財産管理を任せることができる
②判断力が低下したときの詐欺被害等を防止することができる
③障害を持つ子の親の「親亡きあと問題」に対処できる

③の「親亡きあと問題」に対処する家族信託については、また改めて取り上げます。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す