あるシカ猟師のこと

記事
法律・税務・士業全般
こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。

最近、シカやイノシシの肉など、ジビエ料理を提供する店が増えてきていますね。

1年ほど前、NHKのBSプレミアムで、シカ猟師の特集を見たことがあります。
その猟師は小野寺さんという方で、元々はフランス料理のシェフをやっていた人です。
フランス料理ではシカ肉を当然のように用いるようで、シカ肉の美味しさを日本人に広く知ってもらいたいとの思いから、シカ猟師になったとのことです。

小野寺さんがシカ猟師になった当初、獲物を仕留めたあとの処理の仕方を知らなかったため、「シカ肉はなぜこんなに不味いのか」と思っていたそうです。

そんなある日、小野寺さんが小型船に乗って海を渡っていたとき、一頭のシカが海を泳いで移動しているところに出くわします。

小野寺さんは、泳いでいるシカを猟銃で仕留め、船にロープでシカを括り付けて帰路に着きます。
ロープで繋がれたシカは、冷たい海の中でグルグル回転し、ちょうど洗濯機の中で洗い物が回転しているような状態だったそうです。

その持ち帰ったシカの肉を食べたところ、非常に美味であることに小野寺さんは驚きます。
そして、シカ肉が美味だった理由は、シカが冷たい海の中で冷却され続けたためだったことに気付きます。

シカでもイノシシでも同じですが、獲物を仕留めたあと素早く血抜きや内臓の処理などをしたうえで冷却しないと、肉が生臭くなって、非常に不味い肉になり、とても食べることはできないそうです。

それ以後、小野寺さんは美味しいシカ肉を料理店に提供できるようになり、今では非常に有名なシカ猟師になっています。

小野寺さんは、笛によってシカの鳴き声を自由自在に真似ることができるため、「笛の魔術師」との異名があります。

例えば、発情している雌シカの鳴き声を真似ることによって雄シカを引き寄せたり、雄シカの縄張りに侵入した雄シカが挑発する鳴き声を真似ることによって、縄張りの主である雄シカを引き寄せたりします。
そして、自分に近づいてきたところを猟銃で仕留めるわけです。

一方で、小野寺さんは、行政の要請により、増えすぎたシカを単に駆除するための活動にも参加しています。
食べることが目的ではありませんので、駆除したシカは山中の1カ所に集められ、遺棄されます。

テレビの映像で流れていましたが、白骨になったシカの死体が累々と横たわっていました。

小野寺さんは、単にシカを駆除するだけの仕事をしていると、心が荒んでくるとのことです。
本当なら、駆除したシカを美味しくいただくことによりシカの命に感謝すべきところを、ただ山中に遺棄するだけに終わってしまうためです。

小野寺さんは、「命を二度殺さない」という言葉で語っていました。
一度殺した命を単に遺棄することは、命を二度殺すことになるという意味です。

私たちは食品スーパーに並んでいる肉しか目にすることはありませんが、現に命と正面から向き合っている小野寺さんは、命のありがたさを身に沁みて感じているようです。

増えすぎたシカを定期的に駆除せざるを得ないとしても、その命に感謝して美味しくいただくことにより、「命を二度殺さない」配慮が必要だと思います。
また、店頭に並んでいる牛肉や豚肉・鶏肉などが、どのようにして殺されたのかに思いを致すとき、命に対する感謝の気持ちが湧いてくるように感じます。



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す