【ご依頼人様必読】所要時間予測の困難さと時間報酬制

記事
コラム

1.序

正確な見積もりをすることができるものだと思って問い合わせてこられる方が結構多いです。時間報酬制を採用していることからどのくらい時間がかかるかが気になるのは当然ですが、所要時間の見当を付けることはどうしても困難なのです。なぜ正確な見積もりをするのが困難で、時間報酬制を採用しているのかを個別のメッセージでご説明するのは手間ですので、こちらでご案内いたします。
 ここでは、添削サービスを例にご説明申し上げますが、機械的作業でない限り、どのサービスでも同様です。

2.所要時間を予測することの困難性

(1)作業量が一律でない

 原稿の出来不出来は一様ではなく、どの程度の修正量となるかは原稿次第です。
 修正作業の内容は、主に次の3ステップとなっております。
①文意を把握する
②原文を崩さないように誤字脱字やおかしな表現、矛盾点や読みにくい点の修正案を書き込む(取消線、文字色変更など)
③インデントで修正理由を説明する
④読み進めながら①~③を逐次行いつつ(ミクロレベル)、全体の整合性や構成に問題がないかを確認し、問題があれば順序変更や②・③を行う(マクロレベル)
 修正箇所の数が多いだけで単純に時間がかかりますし、矛盾点や読みにくい点の解読・修正に時間がかかったり、修正理由をわかりやすく書くにも時間がかかります。冒頭を読む限り問題がなかったとしても、途中にとんでもない地雷があることも少なくありません。特に、矛盾しているなど、何がどうおかしいかをわかりやすく説明するのは意外に骨が折れます。
 結局の所、作業時間がどれだけかかるかは、原稿次第であり、やってみなければわからない、ということになります。

 平気で安値で依頼してきたり、正確な見積もりを求めてくる人というのは、冷蔵庫やプリンタのような、壊れ方と点検箇所がだいたい決まっていてパーツを交換すればだいたい済むような大量生産の既製品と勘違いしている節がありますが、あなたの依頼はあなただけのオーダーメード品なんですよ。
※文章執筆依頼であれば、字数はもちろんのこと、テーマの難易度や文献量が異なり、前知識もあって文献量も豊富でたくさん書くことがあるものもあれば、マイナーなジャンルで文献がろくになくて字数を埋めるのに自説を創出しなければならないものまで幅が大きいです。

(2)大きな問題を発見・検討するには熟読が必要

 さらにいえば、同一の原稿の中でも修正箇所の濃淡があります。
 (1)でも触れましたが、基本的に問題の少ない原稿なのに、突然大きな矛盾点がいくつか含まれているということがよくあります。
 ですので、見積もり段階で軽く読み流した時点では問題が少なそうに見えても、着手後に発見した矛盾点の修正・解説に時間がかかることはよくあります
 しかし、下記のとおり見積もり段階で熟読するのはナンセンスですから、事前に何時間かかるかということは予測できません

(3)見積もり段階では熟読できない

 見積もり段階で、誤字脱字の多寡や読みやすさについては雰囲気がわかりますが、一見誤字脱字や読みにくい点が少ないように感じても、見積もり対応用の時間内に熟読することはできないので、矛盾点や構成、おかしな表現については確認できません。見積もり段階では、熟読して所要時間の見当をつけることはできませんので、ぱっと見で作業量が明らかに多くなりそうかどうかの印象で当初お支払い額を決めることになります。あくまで印象です。
 着手後に再度チェックしながら作業するのは時間の無駄ですし、修正作業時間ほどではないにせよ全部に目を通すにはそれなりに時間がかかりますから、低廉な報酬を平気で提示してくる問い合わせが多い以上、契約不成立になるリスクを考えれば、見積もり段階で熟読するのは不合理です。5万字の文章を添削してほしいという依頼だったらどうですか?全部読むのにどれだけ時間かかるんですか?時間をかけて全部熟読して○万円ですと見積もりを出して契約不成立となったら、読んだ時間が無駄になりますよね。どうして他人の時間を無料で奪ってかまわないと思えるんですか?
 ですから、「じゃあ、見積もり時間をしっかり取って熟読してくれよ」というのは、問い合わせ人の暴論ですよ。依頼されるかわからないのに、なんでタダ働きしなきゃならないんですか。見積もり時間をしっかり取ってほしいなら、見積もり算定代をお支払いください。でもその分本番作業代にした方がいいと思います。

(4)言うは易く行うは難し

 私は諺を絶対視する立場ではありませんが、「言うは易く行うは難し」という諺をよくよくご理解いただきたいです。
 現実の作業というものを全く想像できず、何でも簡単にできそうに安易に考える頭でっかちな人の軽率な発言がSNSで目立っていますが、「見積もりシステムがあるんだから見積もりができるはずだ」という安易な考えで、正確な見積もりをパパッと出すことができると思い込んでいる方もこの類です。自分がどういうことを求めているか具体的に想像できない人たちです。
 「○○円で作業終わるようにしてください」と気軽にいうのも、言うのは簡単ですが、修正量が多ければ無理です。軽微な修正コメントを全部省略したとしても、矛盾点の解説つまり「どうおかしいか」の説明や、おかしくない文言案の提示などには結構時間を取られます。矛盾点等を見つけても、誤字脱字等の軽微な修正をあらかた終わらせて、時間が余っていたら解説し、時間があまっていなければ単に「ここは矛盾しています」でいいんですか?それで本当に納得しますか?しないですよね!

(5)小結

 以上のことを簡単に申し上げれば、所要時間がいかほどかというのは、「やってみなければわからない」ということになります。

3.ゴネる悪徳依頼人・地雷依頼への防御策

(1)ゴネる悪徳依頼人・地雷依頼の問題

 リモートワーク、特にイラスト、デザイン、WEBサイト、プログラミング等の製作依頼を受けた方の体験談を読むと、
報酬が1000円なのに無料修正を何度も求められた。
ふたを開けてみたらとんでもない作業量だった。
修正の域を超えて全く別物の仕事も無料でさせられた。
アイディア1つ分の料金なのに選択肢として提示した複数のアイディアを全部無断使用された。
終いには納品承諾を拒否されて報酬が支払われなかった。
というようなトラブルが頻繁に発生しているようです。数千円払えば奴隷が手に入ると勘違いしているのでしょうか。
 私自身も添削サービスにおいて意味不明なゴネ方をされたことがあり、こういったゴネる悪徳依頼人(地雷案件、モンスタークレーマー)への防御策が必要だと痛感しております。加えて、「ふたを開けてみたらとんでもない作業量だった。」というような成約後に着手したら問題点のオンパレードだということが判明したというケースへの対応策も必要です。

(2)対応策

 これらへの対応策としては、見積もりで最大限の金額を提示する方法と、目安額を超過したら追加料金をいただくか途中納品にする方法が考えられますが、以下で述べる通り、作業時間に対する報酬(時間報酬制)にしておくことが有効です。
 言うまでもありませんが、何度も修正や追加作業を求めるのであればその分の時間報酬をいただかない限り対応しないと明言すれば、相手はそこで終了するか追加料金を支払うかの2択となり、作業者はただ働きをせずに済みますし、本来の依頼とは別の仕事の報酬問題も時間報酬制を採用することで解決できます。着手したら修正量がかなり多かったことが判明した場合も同様です。

4.依頼人にとっても得な報酬設定

 では、見積もりで最大限の金額を提示する方法と、目安額を超過したら追加料金をいただくか途中納品にする方法では、どちらがいいのでしょうか。

(1)最大限の金額を提示する固定報酬制

依頼人としては、引き延ばされるかわからない、その結果いくらになるかがわからないという不安があるでしょう。こちらとしても、追加料金を請求したり、途中納品となるのはかなり心苦しいです。
 そこで、所要時間を読むのが困難であることと整合する合理的な報酬設定の一つとして考えられるのは、どんなに作業量の多い原稿であろうと十分な利益を得られる金額を提示することです。
 しかしこれには大きな落とし穴があります。例えば、これまでご依頼を受けた中で最悪だったのは、てにをはがデタラメで文法語法がすべておかしくて、5行読んだだけで嘔吐感に襲われ頭がクラクラするほどの小説でした。受託前のやりとりではあまり違和感を受けなかったのですが、原稿を拝読したらそのような有様で、約2万字を15時間ほどかけて修正することになりました。このレベルが最悪だとして、15時間ですので現在の時間報酬(30分当たり3000円)に直すと9万円ということになりますが、では今後どのようなご依頼人に対しても1000字あたり4500円でサービス提供すればよいのでしょうか?(現在の目安額は1000字あたり2000円~)
 確かにそうすればこちらとしては必ず十分な報酬を得られるでしょう。しかし、それでは、通常レベルの原稿を添削するにはいただきすぎですし、ご依頼自体がほとんどなくなってしまうでしょう。4500円と2000円の間くらいにしておけばいいんじゃないかという意見もあるかもしれませんが、同じことです。
 そうすると、このような報酬設定は合理的ではないということになります。

(2)超過したら追加料金か途中納品にする時間報酬制

 とすると、合理的な報酬設定は何か。それは、時間報酬制を基本としつつ、通常レベルの原稿を添削するのに要した時間で目安額を設定することです。
 通常レベルの原稿であれば目安額で済み、追加料金や途中納品ということにならず、ご依頼人の支払額は抑えられます
 他方、通常の作業時間を超えるような作業量の多い原稿については、それに応じた追加料金をいただくか途中納品とさせていただければ私は損をしませんし、途中納品を選択できるということはご依頼人も予算オーバーせずに済みます。この場合はもちろん、当初の支払い金額では全部に対して作業をすることができませんが、それを安値でさせようというのはわがままというものです。
 よく考えてください。最低賃金を下回るような報酬で誰が作業しようと思うんですか。低廉な報酬にイライラした辛辣なコメントを書かれたり、さっさと終わらせようとして不十分なものを納品されたりするのとどちらがよろしいですか?安値で完全な仕事を求めるのは大間違いですよ。
 これも重要な点ですが、提示する金額は、成約に結びつけたいがためにギリギリの金額にしておりますし、こちらとしても、追加料金や途中納品にはしたくないので、お支払い額相当の作業時間内にできるだけ作業が終わるように急ぐわけです。ですので、見落としなども発生しうるわけです。万全を期したいなら、報酬単価を超える高額な報酬をお支払いください。そうすれば、しっかり丁寧に見直す時間を取ることができます。
 また、時間報酬制では、ご依頼人の支払額を抑制できるだけでなく、あまり修正箇所がなくて大して修正した形跡のないファイルを納品することになった場合の作業者の心苦しさも少なくて済みます

5.一律料金の当否

 4の繰り返しになりますが、依頼内容によって作業量が異なる以上、作業時間も異なるのですから、一律料金を提示するのは妥当ではありません。作業時間に応じて報酬も決定するべきです。

6.結論

 以上のことから、時間報酬制を採用するのが合理的であると考えます。
 依頼人としては、引き延ばされるかわからない、その結果いくらになるかがわからないという不安があると思いますが、とんでもない作業量を安値で押しつけられるかもしれないという不安がこちらにあることをご理解ください。そちらは高い金を取られるかもと思っているかもしれませんが、こちらは無駄に時間と精神を奪われるかも、搾取されるかもと懸念しているのです。依頼者には相手の立場で考えられない方が少なくなく、たくさん金を取られるという被害者意識ばかり強い方がおられますが、少しは作業者の立場で報酬について考えていただきたい。作業に対する対価なわけですから、金銭の動きには敏感でも作業量・作業時間には鈍感という人は感覚がおかしいわけです。騙して安値で大量の作業をさせたら2項詐欺罪、低評価を付けると言って脅してそれを強いたら2項恐喝罪になるということを理解していただきたい。ご不安なら30分限りお試しでご依頼くださればいいわけです。
 以上、添削サービスを例にご説明申し上げましたが、機械的作業でない限り、どのサービスでも同様です。



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