Affinity Designerってどんな事ができるの?
Photoshopの代わりにできるの?
今だにアナログで線画描いてるんだけど使っても大丈夫?
こんにちは。あるいははじめまして。龍羽(タツバ)です。
本年の始まりごろに起きた作業環境の劇的な変化により、拙宅のMac PCからPhotoshopが無くなってしまいました。
それで以前からPCが新しくなった時に備えてちょいちょい触っていた買い切りの『Affinity Designer』へ この度完全移行いたしました。
企業に勤めるならともかく、個人でサブスクリプションは少し厳しい。
無料のソフトも試した事あるけどなんだか消化不良。
あるいは趣味として使いたいなど。
この記事では私こと龍羽のイラスト作成工程のうち、アナログ線画の修正だけに絞ってご紹介しています。
Photoshop代替ソフトの選択肢の一つとして参考になればと思います。
なお、この記事を書いている時点(令和5年=2023年5月)の龍羽の作業環境はまだ『Affinity Designer』です。最新版の『Affiniy V2シリーズ』の記事ではございませんのでご注意ください。
本来こちらの『Designer』はどちらかと言えば『Illustrator』の代替として挙げられるソフトでもあります。あくまで『これができる』という参考程度に留めておく事をお勧めいたします。
アナログ線画を使うにあたって必要な作業
アナログの線画をPCに取り込んで、龍羽がまず最初に行う作業はこんな感じです。
・レベル補正
・線画の色調調整(色調補正)
・ゴミ取り修正
・線画抽出(透明部分を選択+削除)
・画像の回転(必要に応じて)
こちらはPhotoshopの頃からこんな感じで作業をしていました。
しかしAffinity Designerには『レベル補正』『色調補正』および『透明部分を選択』がありません。
そこで代用したのが『レイヤー』内『新規調整』の『レベル』『リカラー』そして『選択』内の『サンプリングされたカラーを選択…』でした。
この先へ進む前に:
Affinity Designerで直接 画像を開くと、拡大縮小を始めあらゆる編集作業に『待った』がかかります。
今回のように線画として利用するのなら、画像ファイルは開いたらすかさず『レイヤー』メニューから『ラスタライズ…』しましょう。
理由は後ほど触れたいと思います。
レベル
まず最初に必要になるのがレベル補正です。コレさえできればアナログ線画をデジタルイラストに利用できます。最悪これだけでもできれば良いと思っています。
ところがPhotoshopで重宝していた『レベル補正』は、Affinity Designerには搭載されていません。
そこで代替となるのが『レベル』です。
図1:レイヤー >> 新規調整 >> レベル
図2:レベル調整ウィンドウ
『レベル補正』の画面に慣れ親しんだPhotoshopユーザーにとっては、調整スライダがいっぱいあってちょっと身構えてしまうのではないでしょうか。龍羽も最初は身構えました。
ですが慣れてくると細かく調整できて便利な機能です。
1): 黒レベル
画像の濃い部分を調整します
2): 白レベル
画像の薄い部分を調整します
3): ガンマ
画像全体の濃さを調整します
4): 出力の黒レベル
濃い部分の黒さを制限します
5): 出力の白レベル
薄い部分の白さを制限します
主に使うのは上の二つでしょう。この黒レベル&白レベルがPhotoshopで言う所の『レベル補正』に近いと思います。『レベル補正』の左側のスライダが黒レベル、右側のスライダが白レベルと捉えられるでしょう。
真ん中の『ガンマ』は全体的な濃さを調整する所ですが……白レベルや黒レベルのように『無くなっても良い線』が淘汰されません。そもそも龍羽は利用しないスライダなのでどなたか教えてください。
問題は下半分。
出力の黒&白レベルとは?
こちらは線画の濃さを制限します。
図3:『出力の黒レベル』の比較
例えば図3のように薄い色の線にしたい時。『出力の黒レベル』を調整する事で、図2の『黒レベル』で濃くした線を、薄い色に抑える事ができます。あまり濃い色の線画にしない、淡いイラストを描きたい時はこちらで調整できる便利機能です。
アナログ線画を利用する以上、『出力の白レベル』を調整する機会は無いと思います。ですが『レベル』のみならず次の『リカラー』含めた『新規調整』は、Affinity Designerのメインツールとなる図形などにも利用できる機能です。
なので記憶の片隅に「こんな事もできる」と留め置いておくと良いでしょう。
リカラー
イラストを描くにあたって『どんな色系のイラストにするか』あるいは『自分のイラストはこんな線の色にしたい』など、クリエーター様によって様々なこだわりがあるでしょう。
実はこの線画の色を変える事自体は先程ご紹介した『レベル』でも充分可能です。
図2の『マスター』と書かれたプルタブを開くと、色味の調整ができるようになっています。上の図では隣のプルタブが『RGB』なので『赤青緑アルファ』が表示されます。こういう調整が得意な方ならこちらで調整してしまっても良いと思います。
が、龍羽はこういうの苦手なので、別の調整機能を利用しています。
それが『リカラー』です。
図4:リカラーの調整ウィンドウ
最初にも触れた通り、Photoshopで慣れ親しんでいた『色調補正』は使えません。で、なんとかAffinity Designerでも似たような事ができないかと先程の『新規調整』から発掘したのがこちらでした。
場所は図1の『レベル』と同じ『新規調整』の中にあります。
使うと単一カラー・モノトーンのフィルターをかけたような感じになります。スライダを調整して好みの色を目指しましょう。
コラム.1:『HSL』
図5:HSL調整ウィンドウ
ここでは『リカラー』をご紹介しましたが、似たような事は同『新規調整』内の『HSL』でもできます。
龍羽が理解している両者の違いはこんな感じです。
リカラー:
単一色で画像を再着色する
追加時は彩度100%の赤から始まる
スライダの位置の色と実際の色味が一致している
HSL:
画像の色味を調整する
追加時は画像に変化が無い
スライダの位置の色と実際の色味が一致しない
この調整機能はPhotoshopにおいて両者合わせて『色調・彩度』が近い機能でしょうか。そのまま使った場合が『HSL』、『色調を統一』にチェックを入れた場合が『リカラー』といった印象です。
視覚的に判りやすい方が作業しやすいと思いましたので、今回は『リカラー』をご紹介しました。
ピクセルペルソナ
さて、次の『サンプリングされたカラーを選択…』という作業は、『選択』と書かれている通り先程の『新規調整』があった『レイヤー』ではなく、その隣の『選択』の中に在ります。
けれど「よっしゃ隣ね! まかせて!」と言って素直に開いても、『新規調整』と違って「あれっ?ちょっ そんなん何処にも無いんですけど?」と戸惑ってしまうと思います。こちらは同じAffinity Designerでもちょっと違う所に入っているのです。
同じ台所で汁物作ってるけど、『和風の昆布だしお吸い物』か『洋風のコンソメオニオンスープ』かで汁物の『顔』ががらりと変わってしまいますよね。Affinity Designerにはそんな『ペルソナシステム』が存在します。
図6:Affinity Designerの三つのペルソナ
この三つの『顔』が『ペルソナシステム』です。
次に使う『サンプリングされたカラーを選択…』は、真ん中の『ピクセルペルソナ』へ移動する必要があります。
この『ピクセルペルソナ』への移動は、アナログ線画を取り込んだ時にどうしても入り込んでしまう黒点の削除(ゴミ取り)や消した筈の下描き線の修正でブラシ&消しゴムツールを使う時にも必要です。
ここまでご紹介した『レイヤー』メニューの機能は『デザイナーペルソナ』でも使えますが、イラスト作成でAffinity Designerを開いたのなら、最初から『ピクセルペルソナ』に移動してしまっても良いかもしれません。
ペルソナはAffinity Designerウィンドウの左上にある三つのアイコンで切り替えます。
サンプリングされたカラーを選択…
そもそもこの線画部分を選択する機能はAffinity Designerの対となるソフトAffinity Photoにしか備わっていないと思っていました。
あくまでIllustratorの代替としてのDesignerであると。
しかし現に線画部分を選択する機能はこうしてあるわけで……気づいた時テンションが上がりました。
図7:選択 >> サンプリングされたカラーを選択…
図8:サンプルカラーの選択ウィンドウ
ここで一つ注意したい事があります。
最初に念を押した『ラスタライズ』についてです。
この『サンプリングされたカラーの選択…』ですが、ラスタライズされていない画像には通用しません。場合によっては移動すらできない事もあります。そこで『レベル』や『リカラー』など『新規調整』を行った後にラスタライズするとどうなるか。
調整レイヤーごと一つのピクセルオブジェクトとして統合されてしまいます。
この後も調整レイヤーを残しておきたい方は、必ず作業開始時点でラスタライズしてしまう癖をつける事をお勧めします。
『選択』のお話に戻ります。
図8の『サンプル〜』には、『レベル』や『リカラー』にあった小ウィンドウ右上のボタンが減っています。これは先程までの調整と違う性質を持っているのです。
ちょっとレイヤーが並んだ場所を見てみましょう。
図9:レイヤー一覧
線画(背景)レイヤーの下に『レベル調整』『リカラーの調整』が並んでいます。
これらを含む『新規調整』は最初に『レイヤー』から選んできたため、図9のようにオブジェクトレイヤーに紐付けされて並んでいきます。
色調補正用の『リカラー』はともかく、『レベル』まで並んでいるのはPhotoshopとは違いますね。あちらは『イメージ』メニューから選ぶ調整機能ですが、こちらは『レイヤー』扱いです。先程の図3のように、色を塗った後からでも自由に線画の濃淡を調整できます。
もちろん『結合』してレイヤー表示をスッキリさせてしまうのも手です。皆様の『描きたいモノ』に合わせて進めてみてください。
では今回の『サンプル〜』はどうでしょう。
こちらは追加されません。純粋に選択ツールの一つだからです。
メニューから選んで小ウィンドウを出す。
↓
選択したい部分(ここでは白地の部分)をクリック。
↓
選択範囲の点線が画面に出る。
↓
許容値を調整して選択範囲を調整。
↓
『適用』で決定する
こうして選択できた部分を『delete』キーなどで削除し、線画のみのオブジェクトレイヤーにします。
コラム.2:透明な背景
もし、線画を『選択』&『白地を削除』した後、背景が透明な状態になったなら、『ドキュメント設定』を見直す必要があります。
けれどこの『ドキュメント設定』は、ピクセルペルソナのままではファイルメニュー内に見当たりません。デザイナーペルソナへ戻る必要があります。さっきの『サンプリング〜』とは逆ですね。
『ドキュメント設定…』はこちらにあります。
図10:ファイル >> ドキュメント設定…
ウィンドウが開いたら、『寸法』タブから隣の『カラー』タブへ移動して、『透明な背景』の左のチェックを外してください。これで背景が白く割り当てられます。
図11:ドキュメント設定ウィンドウ
このように、ペルソナを移動するとメニューバーから選べなくなる機能があります。
「あの機能このメニューだった筈なのに無いな?」と思った時は、ペルソナを移動してみてください。
コラム.3:『階調範囲』>>『ハイライトを選択』
『選択』メニューを開いて『サンプリング〜』の上に『階調範囲』と言うものがあります。こちらからは『中間階調部』『シャドウ』そして『ハイライト』が一発で選択できます。
「じゃあ単純に『ハイライトを選択』して白い部分を選択してしまえば良いじゃない」
確かにその方が楽です。
ですが龍羽のように『鉛筆で描いた線画』をスキャンして利用すると、『ハイライトを選択』では消したくない線まで選択してくれません。
均一の濃さになる漫画用のつけペンなどの線なら気にしなくても良いでしょう。
あるいは全部濃く描いたりして対策したりしても良いかもしれません。
でもせっかく鉛筆の線を使うのだから、鉛筆らしい濃淡も利用したいですよね。なのでここでは『サンプリングされたカラーを選択』しました。
皆様も、自分の作画スタイルにあわせて利用するツールを探してみてください。もしかしたら龍羽が知らない為に、ここには書けなかった便利機能があるかもしれません。
おわりに
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皆様とのご縁をお待ちしております
たいへん長い記事となってしまいましたが、最後まで読んでいただけましたことに感謝を。
ありがとうございました