このところ訪問看護の依頼ラッシュでバタついております。
訪問看護は、医療依存度の高い方、お看取りが近い方、難病の方、認知症の方、お子様・・・など、
様々な在宅療養者のお世話を依頼されます。
看護内容も様々で、医療機器の管理など高度な知識や技術がいるものから、お薬の仕分け(分包といいます)など、比較的穏やかな見守りのケアもあります。
1日に本当にいろんな状態の療養者を見ていきますので、
看護師の知識や技術、そしてメンタルもその日1日でアップダウンするので、
次の訪問先に行くまでの車の中で、それらをリセットして前の方のことを引きずらないようにしています。
そんな訪問看護のケアの中でも特に多いのが「排泄のケア」です。
一口に排泄のケアといっても様々です。
排尿を促すための導尿や、
常に尿を出すためのバルンカテーテルの管理や、その交換、
バルンが詰まらないようにするための膀胱洗浄(最近はめったにしません)
排泄後の処理(オムツ交換など)
排便のケアとしては浣腸や摘便(直腸にたまった便をかきだす)、
ストーマケア
などなど排泄のケアは本当に様々です。
食事や水分摂取をしたら消化して、必要な栄養や水分を取り込み、不要なものは尿や便として排泄されますが、
それが何らかの原因でうまく機能されないときは、何かの手立てが必要です。
それが排泄ケアです。
医師は指示をするだけで、ケアはしません。ケアは看護師の仕事です。
排泄ケアは身体的にも精神的にも、倫理的にもとても重要で、難しいケアだと思っています。
ただ出せばいいという単純なものではありません。
いかに自然に近い状態で排泄できるかを最優先に考えていきますが、
医療器具を装着している療養者はそれ自体がもう自然な排泄ではないので、
「いかに苦痛なくケアできるか」に目標が変化します。
膀胱に留置してあるバルンカテーテルは、定期的に交換が必要です。
これはやっぱり苦痛が伴いますし、男性の場合は医師が実施します。(緊急事態はこの限りではない)
自己導尿法といって定期的に、または間欠的に、カテーテルを使って尿を出すという方法にしたって、尿道口にカテーテルを入れるのは痛みが伴います。
なので一発で挿入できるような技術が必要です。
そして次の交換日まで閉塞しないように水分摂取を促したり、
バルンの取り扱いを説明したりして安全に過ごせるようにします。
排便ケアでは、高齢者は便秘な方が多くて、
下剤や整腸剤などの内服薬を服用しても出ない…という人が多いです。
それがあまりにも長く続くと、食欲がなくなったり、おなかが痛くなったり、ついにはイレウスとい腸閉塞状態となり、
腸が壊死してしまい、ストーマを増設される…という事態になることもあります。
高齢者はトイレに頻回に行くのが大変という理由で水分摂取を制限したり、
はたまた
認知症などで便意を感じにくい、
筋力体力が衰えて、便意を感じても押し出す力がなくて出せない
など便秘になるにはいろんな原因があります。
まずはそこを解決しそれでも排便のケアが必要となれば
定期的に看護師が訪問してケアすることになります。
ここでもいつも悩むことは、
療養者のもともとの排便パターンを知るということと、便意はあるのか、何回が適切な排便回数なのか、どんな方法が適切なのかということ。
療養者の排便に関するニーズも把握しながら
排便ケアの回数を決定していきます。
そしてどんな方法で排便を促すのかがとても重要です。
自然な形で排便するほうがいいのは、排尿ケアの場合も同じですが、
便は尿に比べて「処理が大変なことが多い」のと、「においや見た目の問題」もあり、
排尿ケアよりは排便ケアが大変という、介護者が多いです。
なので、療養者だけでなく介護者も満足できる排便ケアを考えなければいけません。
こうして頭を悩ませて看護師は排泄ケアをしていますが、
排泄ケアはとてもデリケートなケアなので、
ケアするときも不必要な露出は避け、スムーズに、スマートに
ケアが行われるようにします。
かける言葉も露骨なものではなく、自然な感じで。
恥ずかしさを感じられないようにしています。
聞いた話ですが、排便時にたくさん出たことを療養者と共有したかったのでしょうか・・
「こ~んなにいっぱい便が出たよ~」と大きな声で言って
療養者にわざわざオムツを見せてたという人。
排泄後、陰部を清潔にするために洗浄をしていた時に
「大事なところを洗いますね」「奥様にしか見せないようなところを洗いますね」「人には見せないところを洗いますね」
と声掛けする看護師がいた・・・と。
いずれも療養者からしたら、とっても恥ずかしいし、
良かれと思った声掛けがさらに恥ずかしさを引き起こすってことはないでしょうか・・・。
声掛けしたり、たくさん排泄物が出てよかったね、
おなかすっきりしたねということを言いたかったのでしょうが、
少し配慮が足りませんよね。
このように排泄ケア一つにしたって看護師はその技術だけでなく、
療養者が日常生活を安全に、安楽に、快適に過ごせるように配慮する必要があると思っています。
看護師だって療養者にとったら環境の一つです。
いい療養環境を提供したいものです。
話は少しそれましたが、
排泄のケアは、療養者にとってとても重要なケアの一つです。
よい療養環境を提供するために、看護師はそれがスムーズに行われるような
知識や技術を常に自己研鑽する必要があると思っています。
排泄ケアも昔と比べたらずいぶんと進化してきました。
皮膚・排泄ケア認定看護師をはじめ、
POOマスターという、排泄ケアの専門の資格もできてきましたし、
オムツフィッターという、オムツに関する専門資格も出てきました。
排泄ケアをより専門的に学び、療養者の安心安楽のために、
いくつになっても学ぶ必要がありますが、
知識や技術のアップロードは、どんな職種でも必要ですよね。
学ぶことができる環境があること、まだ体力もあることにも感謝し、
今日も訪問しています。
何かお困りのことがありましたらいつでもご相談くださいね。