妊娠という呪い③

記事
コラム
妊娠という呪い①はこちらから

妊娠する条件

子供がなかなかできない現実は「どうして子供が欲しいのか?」と神様が宿題を出しているように感じた。
呪いが少し解けたせいで、「そういった事を考える機会をもらったのだ」と前向きに考えることができるようになっていた。

不妊治療を中止した私達夫婦は、地元で有名な生薬をメインで取り扱う薬局を訪れていた。
カウンセリングを行い、何かの機械で測定した後、薬を処方されたのだが、その際に薬剤師さんのおっしゃった言葉が、目から鱗だった。

不妊だと悩まれてる方の、ほとんどが全然回数が少ないんですよ。 
その時だけしかしない。
普段から、そういう行為をしたいと思えない状態だから、いざしても妊娠に至らない。
身体のエネルギー(活力的なもの?)を高めて、妊娠とは関係ない時でも“する”ような状態になるのが望ましいですね。

“普段から、そういう行為をしたいと思えない状態”
薬剤師さんは身体のエネルギーの事を指して言っているのだろうが、私には、おばさんにの呪いによって歪んでしまった、私達夫婦のセックスに対する考え方の事を指しているように感じた。

あの日から、妻にとってセックスは妊娠する為の行為になってしまった。
それに引っ張られる形で、私も妊娠しそうな時以外、セックスをしようとしなくなっていた。
“したい時”にセックスをしていた夫婦が、子供が欲しいと思った途端に、“妊娠しそうな時”にしかセックスをしなくなっってしまった。

どちらの方が妊娠の確率が高いだろうか?
実際、どちらの方が確率が高いのかは解らないが、私は薬剤師さんに「何も無い時にセックスをしないような夫婦には子供はできないよ」と言われている気がした。

それからは心の赴くままに過ごした。
タイミングの合う時もあれば、合わない時もあったが、別にそれで良かった。
少なくとも、不妊治療をしていた頃より回数は増えていた。
それが薬による効果なのか、薬剤師さんのお話のおかげなのかは解らないが、セックスそのものを楽しめていたと思う。

薬の飲み始めて三ヶ月が経った時、妊娠検査薬を持って妻が駆け寄ってきた。
「赤ちゃんできたよ!」
「………え?」
「うれしくないの?」
「うれしいけど、本当?」
「うん。ちゃんと病院行ってみないとだけど、線入ってるもん!」
「良かったね。おめでとう!」
「ありがとう!」
拍子抜けするぐらい、あっけなく子供ができた。

見ず知らずのおばさんによって、私達夫婦は呪われてしまった。
呪われている期間は苦しかったが、苦しまなければ気づくことのできないものを見つけることができた。

なかなか子宝に恵まれなかった。
そんな体験が、待望の第一子に対する、大きな期待と愛情に変わった。
しかし、その大きな期待と愛情ゆえに、新たなトラブルに巻き込まれてしまう。
まさか、金儲けを企む人達にとって、“子を想う母親”が格好のカモであることを、この時の私はまだ知らなかった。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す