「自分はOK」という幻想

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コラム
一、とある会話
 昨年、中国人の大学受験生に小論文指導や、面接指導をする仕事を都内の予備校でしていた。
 中国人の学生に、将来の夢はと聞くと、ある学生が真顔で
「オリンピックのマラソンで金メダルをとることです」と答えた。私は、驚いた。
「あなたは、では、中国の代表になれるほどの実力があるんですね」すると、彼は、再び真顔で
「ないです。でも、トレーニングをしている。毎日都内を10キロ走っているからオリンピックで金メダル取れると思う」そう信じ込んでいる。
「毎日10キロくらい、ジョギング好きな主婦でも走っているのでは?」と辛辣なことを言ったら、急に不機嫌になり
「私は、自分の浙江省の大会で優勝したから主婦と同じにしないでくれ」と言われた。
「浙江省で一番は凄いですね」とほめると
「いや、浙江省のある地域の小学校で優勝した」と。
もう、この話はそこでやめた。
 また、ある時、中国人の学生に将来の夢はと聞くと、こちらも真顔で
「ユーチューバーですね。ユーチューバーで何億も稼ぎたいですね」と言う。
「いまは、ユーチューバーもそんなに稼げないんではないかね」ときくと、
「いや、プレゼントしてくれるんだ。面白いと思ったら、中国の人はお金をくれるんですよ。何万、何十万と」そんな話を知らなかった私は、
「それはいいね。もらったことあるの?」
「ないです。でも貰えると思う」
「何のユーチューブするの?私もチャンネルあるけど、視聴回数は増えても、登録者は増えないし大変だよ」ときくと
「大丈夫、僕はお金プレゼントしてもらえる」
「だから、何やるの?」
「決めてないけど」
ここで、次の話題に移ったのはいうまでもない。
 日本に来ている中国人の多くは富裕層で、彼らの両親はみな成功者だ。失敗を知らない。彼らも自分は成功すると信じ込んでいる。たとえどんなジャンルでも、「自分だけはOK」という根拠のない自信をもっている。それは、子どもだけでなく、大人もそうである。
 いきなり、中国人をディスって、何の話するの?と思われるかもしれないが、この「自分だけはOK」という根拠のない自信は、日本人も、いや、アメリカ人も、現代人は少なくとも、そう私も、ないとは言い切れない。このコラムを読んでいる人も、思い当たることあるのではないだろうか。
二、「自分はOK」の幻想の理由(三、「自分はOK」の幻想から離れる方法)
 まあ、いろいろあるよね。理由としては、先にふれたように、周りが成功者ばかりだと、「自分はOK」の幻想に陥りやすいね。
 私が教えている、池袋の医学部予備校の生徒(私の生徒ではない)には、親が五浪して医学部に合格したから、自分も五浪までには受かると信じて八浪している者がいる。それでも、本人頑張っている以上、諦めたらとは言えないと担当の先生は言っている。
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