「未出版からの抜粋_お弁当の材料費がない」

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コラム
下の子がまだ中学一年生だった頃。
お弁当持参だったがお弁当を作る材料費がなく作れなかった。
しかし娘には言えない。

そのころの食事はご飯にお味噌だった。
お米がなくなるとパスタを塩コショウだけで作り、
野菜は安いエリンギと言う質素な食事。
今でもエリンギは食べたくない。
ペパロンチーノもあの頃を思い出すので食べなくない。

ただ担任であった先生は、給食前に下の子をそっと呼び、
学校にきている購買のパン屋さんのパンを買うための500円を
度々、渡してくださっていたのを覚えている。
先生の温かみには感謝していたが、子どもから、
「なんで先生が500円くれるの?友達にも聞かれるし恥ずかしいよ。」
胸がはちきれそうになった。私何をしているのだろうか、
と申し訳なさと不憫さを感じたことだを覚えている。
人間とは不思議なもので辛い経験を忘れてしまう。

或いは私の年齢がそうさせているのかもしれないが、
どう対処したのかどんなに記憶を呼び起こそうとしても記憶が抜けている。
そして、下の子はあえて自分で定時制を選び、自分でアルバイトをしながら
四年間真面目に通い無事に高校を卒業した。アルバイトのお給料は家計の足しにしてくれるような優しい子に育っていた。

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