共通テスト過去問詳説 2022年度 大問1 問3

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このシリーズでは、共通テスト過去問について詳細な説明をしていきます。
共通テスト過去問の理解は、特に高校3年生、浪人生の皆さんにとっては必修事項。
そして、各問題を解く際には
・どのような地理的事項に基づいて考えるべき問題なのか
・正解以外の選択肢は何故誤りなのか
などについてもしっかり考えていく必要があります。

では、問題を解いていきましょう。
今回は大学入試共通テスト 2022年度 第1問の問3です。
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この問題は、東アジア、東南アジア、南アジアの植生に関する問題です。
この問題のポイントとなるのは
①河川がそれぞれ何かわかるか
②それぞれの流域の気候風土についてイメージが湧くか
③統計資料の見るべきポイントがわかるか
という点です。

では、順番に見ていきましょう。

それぞれの河川は?

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それぞれ、かなり有名な河川です。
E:インダス川
F:黄河
G:長江
H:メコン川
ですが、この中で正答率が低いと思われるのがFのメコン川。
東南アジアには3つの主要な河川があり、東から順に
①中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムと最も多くの国を流れるメコン川
②タイ国内を流れ、河口にバンコクを抱えるチャオプラヤ川
③ミャンマーを南北に貫くエーヤワディー川です。

これが一覧。
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ついでなので、中国の主要河川4つ。
北から順に黄河、ホワイ川、長江、チュー川。
①黄河は黄土高原と黄砂、そして大量の土砂が運搬されることからから下流域が天井川となっていることでも有名です。
②ホワイ川は、チンリン山脈と共に中国の稲作と畑作の境界線「チンリン・ホワイライン」の一角を担っています。年降水量1000㎜のラインですね。
③長江と言えば三峡ダム。世界最大級の水力発電所でもありますが、環境問題も取りざたされています。
④チュー川は少々マイナーですが、中国南部の稲作地帯を支える重要河川です。少数民族最大の人口を持つチワン族が住む広西チワン族自治区を流れており、稲作の人口支持力の高さが伺えます。
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南アジアは東からガンジス川とインダス川
①ガンジス川
ヒンドゥー教の聖なる河。
下流のデルタ地帯(バングラデシュ)は稲作が盛ん。
人口が非常に多い地域。バングラデシュではジュートの生産も盛んです。
②インダス川
乾燥地帯を貫流する外来河川の一つ。
流域はほぼ砂漠で、小麦や綿花などを産します。古代文明発祥の地の一つ。
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の位置関係や概要も確認しておきましょう。

統計資料の要素を分解!

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統計資料には、鉄板の「見方」が存在します。
実に簡単な事ですが、これができるかどうかは統計資料から考察を行う能力を大きく左右しますので、必ずマスターしましょう。
その見方とは

「統計資料を見る際には、他と極端に離れている数値に特に注目する」

ことです。そうすると、その資料の特徴を押さえることができます。

例えば
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この2か所。
他に比べて大きく(倍以上)数字が離れていることがわかります。
こういった項目を見ることが大切。
①は常緑広葉樹林、③は裸地が非常に多いことがわかります。
常緑広葉樹雨林は熱帯雨林、照葉樹林、硬葉樹林の3種類
裸地は砂漠であろうと考えられます。
ただ、硬葉樹は地中海性気候(Cs)の植生なのでここでは除外。
なので、①は熱帯雨林か照葉樹林であると考えられます。

①について考察してみよう


熱帯雨林も照葉樹林もかなりの降水量がある地域に分布します。
熱帯雨林は熱帯雨林気候(Af)、熱帯モンスーン気候(Am)に主に分布。
また、照葉樹林は主に温帯冬季少雨気候(Cw)の植生です。
AmもCwも(そしてCfaも)いわゆるモンスーン気候で、Amの気温が下がったものがCwという考え方もできます。

となると、Amの高緯度側(北半球なら北)にCw(やCfa)が分布することになります。さて、ここで気候帯の地図の出番。
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該当地域を拡大してみます。
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低緯度側の東南アジアはAm、そこから高緯度側に行くと(中国)CwやCfaであることがわかります。

また、緯度が上がると一般的に気温が下がり降水量が減るため、
常緑広葉樹→落葉広葉樹→針葉樹や草原
と、植生が変化していくのは地理の基本事項です。

ここで、裸地がない①と②を見比べましょう。
このように似た者同士をグループ化して、その中で差異を見つけるのも統計読解のテクニック。
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明らかに②の方が高緯度側にあることがわかります。

これらのことから、
①は熱帯地域を含むメコン川
②はそのすぐ北側、Cw気候帯を含む地域にある長江
と考えることができます。

これでG(長江)は②であるという結論は出たのですが、それ以外の河川もついでに見てみましょう。
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③と④を見比べるとすればここですね。

③の方が明らかに砂漠が多いのだろうなという見当がつくのですが、残ったインダス川と黄河。
やはり大インド(タール)砂漠を抱えるインダス川の方が裸地が多いだろうという感じはします。北回帰線直下ですし…。

というわけで、③はインダス川、④は黄河となります。

別の方向からも検証!

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これを踏まえて、4つの川の中で熱帯雨林と砂漠が多そうな河川はどれか、と考えてみます。

E:インダス川
F:黄河
G:長江
H:メコン川

まず、この4つの河川で熱帯地域を含むと思われるのは東南アジア。
長江と黄河は論外。
最も温暖な長江下流域でも、気候帯は温帯であるCwやCfaであることがわかります。
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この問題に該当する部分だけを切り出してみると
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こんな感じ。
インダス川の流域はほとんど乾燥気候(B)ですし、メコン川流域がA(熱帯)を含むことがわかります。

よって、①が流域に広大な熱帯雨林を抱えるメコン川。
同時に、裸地(砂漠地帯)が多いのは、上の図でも乾燥地が多く、流域に大インド(タール)砂漠を抱えるインダス川であることがわかります。
よって、③が流域に大インド(タール砂漠)を抱えるインダス川。

残ったものをさらに分解!


次に、②と④が黄河、長江のどちらなのかを判別しましょう。
これは簡単ですね…。
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どちらを見比べても良いとは思いますが、
②は常緑広葉樹林=かなり温暖で多雨なな地域を含む。
④は乾燥地がそれなりに多い。
ということが言えます。

これだけを見ても、②の方が低緯度側(赤道に近い方)にあることは明らかなので、②が長江、④が黄河、と判断して良いでしょう。

ちなみに、②の常緑広葉樹林は、熱帯雨林(ジャングル)ではなく、照葉樹林ですね。チャノキなどがそれにあたります。

④の乾燥地はゴビ砂漠に近接していたり、黄土高原などもそうですね。
黄土高原は全体が裸地までは行きませんが、植生が豊かとはいえない土地です。

問ではGの河川について聞いているので、答えは②の長江となります。

如何でしょうか?この問題、河川名が最悪出てこなくても、気候帯などをある程度把握し、統計資料の見方がわかれば解ける問題でもあります。

共通テストからこれだけの内容を復習することができます。折角解いた問題、十二分に復習に活かしましょう!
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