共通テスト過去問詳説 2022年度 大問1 問1

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共通テスト過去問の理解は、特に高校3年生、浪人生の皆さんにとっては必修事項。そして、各問題を解く際には

・どのような地理的事項に基づいて考えるべき問題なのか
・正解以外の選択肢は何故誤りなのか

などについてもしっかり考えていく必要があります。
では、問題を解いていきましょう。

今回は大学入試共通テスト 2022年度 第1問の問1です。
無題 (1).png


基本単語の把握


※大陸棚
・大陸の周縁部に分布する、比較的なだらかな傾斜の海底部分
・水深はおおむね130mくらいまで(大陸棚の平均値はおおむねこれくらい)

なお、古い資料にある水深200mという記載は、1958年の「大陸棚条約」の定義によります。
現在は国連大陸棚限界委員会が、各国の大陸棚について画定を進めているため、水深200mという基準は原則用いません。
・海溝がある場合は、大陸棚の縁に弧状列島を形成することがある

そして、aとbの地図は東南アジア、アとイの地図は中央アメリカのものですね。

これらの地図をGoogle Earthで見つつ、問題を解いてみましょう。
まずはaとbの地図、東南アジア。
image-1024x606.jpg

スマトラ島、ジャワ島の南側に、海溝(スンダ海溝)があるのが見えます。
つまり、「大陸プレートと海洋プレートがぶつかる狭まる境界」ということですね。
一方、海溝の北側には巨大な大陸棚があるのが見て取れます。
ちなみに、衝突しているプレートはユーラシアプレート(大陸プレート)とインド・オーストラリアプレート(海洋プレート)になります。

この地図だけ見ればbが正解!とすぐわかってしまうのですが、それでは身になりません。もう少し要素を分解してみましょう。
ここで鍵になるのは「大陸棚」、「弧状列島」、「火山フロント」です。

火山フロント

気象庁ホームページの資料が秀逸ですので、そちらを引用します。

狭まる境界では海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいます。
そして、海洋プレートに含まれる水の働きにより、上部マントルの一部が融けて上昇し、マグマが形成されます。
genri (1).png

ここで知っておくべきなのは、
・海洋プレートがある程度沈みこんでからマグマは発生している
ということ。

つまり、海溝からある程度離れた場所でなければ、マグマは上昇しない=火山はできないということになります、
最も海溝に近い火山を結んだラインを「火山フロント(火山前線)」といい、そのラインは海溝や弧状列島とほぼ平行になります。
今回の問題とは異なりますが、日本列島の火山分布を見ても、火山フロントの存在は見て取れますね。
fig02_12 (1).jpg
防災科学技術研究所ホームページより
そしてもう一つ。

弧状列島

大陸の縁辺部に大洋側に向かって凸(とつ)状の弧を描いて並ぶ島々のこと。島弧ともいう。日本列島もその一例。
大洋側には海溝があり、大陸側には縁海が存在することがある。
火山列が弧状列島や海溝に並行して分布する。
巨大な海溝型地震がしばしば発生し、その際には津波を伴う。

3つの要素を把握した上で、改めてaとbの図を見比べてみましょう。
無題01 (1).png

まず、大前提として、弧状列島は大陸棚のキワにあります。
つまり、弧状列島から比較的すぐの所に海溝があるんですね。
よって、弧状列島から大洋側に向かって広い大陸棚が分布しているaの図は不自然であると言えます。
この2つの選択肢のうち、正しいのはbです。
では次に、中央アメリカを見てみましょう。
image-1-1024x606.jpg

やはり、南西部分に海溝が分布しています。
先ほどの東南アジアの地図と同様、陸地の南西側すぐの所に海溝があります。
陸地から海溝までの間に大陸棚にあたる部分はほとんどないことがわかりますね。

正解を導きましょう
無題01 (1).png

見比べると、両者の地図の違いは
・イの地図は、大陸棚が南西に向かって広がっている
という点です。
先ほどの東南アジアの話と同様、これは大陸棚の分布としては不自然。よってイは誤りであることがわかります。
正解はア、ということになります。

選択肢を見ると
image-2.png

このようになっていますので、正解は③ということになります。

補足

共通テストは選択問題で、大切なのは「2択まで絞る」ことです。
そうすれば、得点率50%は容易に、安定して到達できます。あとは点数を積み増すだけです。
共通テストでは「選んではいけない選択肢」というものがあります。
それを選ばないようにするだけで、4択問題であれば一気に2択まで絞れます。
※今回の問題であれば、a、bまたはア、イのいずれか1つを「ありえない」と選択できれば、2択に絞ることができます。
では、今回の問題で選んではいけない選択肢はどれかというと、aになります。
イは、大陸棚が張り出していて不自然ではあるのですが、アがなければかなり迷いそうな微妙な張り出し具合です。
しかし、aは明らかに大陸棚が大きすぎます。
image-3-1024x606.jpg
無題01 (1).png

さらに付け加えれば、aではベンガル湾にも大陸棚が分布していることになっています。
しかし、ベンガル湾は大陸やアンダマン・ニコバル諸島から離れると急激に深くなっており、大陸棚はほとんど見られません。
そういった意味でも、ベンガル湾に大陸棚が分布するようなaは誤りであると言えます。
こういった「あり得ない選択肢」を排除できるようになるだけでも、得点率はかなり上がります。
問題を解く際には意識してみましょう。
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