ロバ

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コラム
イソップ童話にはロバがよく出てくる。
川で転ぶと背中に積まれた塩が溶けて楽になる事を
知ったロバは いつも川に入るとわざと転ぶ。
ある日 背中に海綿を積まれているのに また川で転んで
今度はあまりの重さに立ち上がれず 流されてしまいました。とか

父と息子でロバを連れて市場に出かけたが、途中出会う人々に
「ロバに乗ればいい 父を乗せた方がいい 二人で乗ればいい
ロバを担いだ方がいい 」など色々言われて 全部その通りにしたら
市場に着く前にロバが参ってしまった、とか。
結構ロバは酷い目にあっている。

想像ではその時代 ロバは身近な家畜だったのだろう。
そして牛や馬より安価で 便利で 侮られていたのだろう。
いつの時代でも 安価で 便利で 身近なものは軽蔑される。
それがなくては困るのに。

でもロバが転ぶと背中の荷物が軽くなるのを知って
川に入ると横になるというのは ありそうな話だと思う。
私の知っているハルカという馬は大人しくて 扱いやすい小柄の馬だが
飼付の時間になると ちょっと重心をずらして乗っている人を落とす。
そしてご飯を食べに厩舎に走っていく。

もちろん乗り慣れている人なら そう簡単に落ちないので
ハルカちゃんも諦めて乗せているが 
初心者のレッスンの時は ご飯が食べたくてやってしまう。
でもハルカちゃん可愛い。
すごく人馴れしていて すぐすりすり寄ってくる。
甘えん坊なんだ。きっと我慢が足りないんだな。
川に流されないか心配だ。

30年以上前 勤めていた牧場にはロバがいた。
ロバはオーナーの趣味で飼われていただけで 特に仕事はない。
いつもボーとしていた。
牧柵の近いところに立って 朝見ても 昼見ても夕方見ても
同じ姿勢でボーとしている。動かない。
よく見ると時々花アブを追って耳や尻尾が動いたりする。
それだけだ。
だから「ボーちゃん」とよんでいた。

お天気の良い日は 私もぼーちゃんのそばで よく座って休んでいた。
ぼーちゃんも たんぽぽも 自分も 暖かい日の光の中で
じっとしていると みんな同じ地球の生き物のように思えて
平和な気持ちになった。

牧場を辞めて何年かして行ってみたら ぼーちゃんはもう
いなかった。どこに売られて行ったかはわからない。
その後どこでどんな生活をしたのだろう。
その最後が穏やかであったことを願う。

こんな天気の良い 穏やかな日は なんとなく
ぼーちゃんを思い出す。
ぼーちゃんは今でもあの牧場で 日長1日
ボーと佇んでいるような気がしてならない。

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