予防医療は健康寿命を伸ばす!〜今、注目の医療テーマを医師が解説〜

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こんにちは。フリーランス医師・医療ライターのめいだいです。
今回は、近年注目されている予防医療について書きました。日本では今後、予防医療を推進していこうとしています。
皆さんも、健康寿命を伸ばし豊かな人生を送るために、予防医療を知って実践していきましょう。

1 予防医療のメリットとは?

1-1 健康寿命を伸ばす
最初に、予防医療をあなたが行うことで得られるメリットをお伝えします。
あなたが予防医療に取り組むことで得られるメリットは、「健康寿命を伸ばす」(=「寝たきりの状態を短くする」)ことです。
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。
※このブログではわかりやすいように、『健康寿命=寝たきりではない期間』として書いています。

みなさんが健康であれば、着替えたり、食事したり、トイレにいったり、自分で身の回りのことをできますよね。

しかし、何かの病気をきっかけに、他人の手が必要となってしまうことがあります。
例えば、脳梗塞が原因で寝たきりの状態となってしまうと、日常生活がほとんど行えず、身の回りのお世話をしてくれるご家族に大きな負担をかけてしまいます。

最近では、命が終わるまでの「平均寿命」を伸ばすことよりも、「寝たきりの状態を短くする」=「健康寿命を伸ばす」ことが重要と考えられています。
そこで注目されているのが、健康寿命を伸ばすための医療、「予防医療」なのです。

1-2 平均約10年、寝たきりの生活。〜平均寿命と健康寿命の差〜

平均寿命とは、命が終わるまでの寿命の平均です。日本が世界で一番といわれている“寿命“とは、“平均寿命“のことです。
平均寿命と健康寿命の差は、寝たきりとなってから命が終わるまでの期間と考えることができます。
現在の日本では、平均寿命と健康寿命の差(寝たきりの期間)が男女とも平均10年程度と言われています。
驚きですね。
平均ですので、10年以上寝たきりの人もいます。

具体的に厚生労働省から発表されている情報として、平均寿命と健康寿命の差(寝たきりの期間)が、男性で約9年、女性で約12年となっています。
あなたは、10年間の寝たきりの期間を想像できますか?

1-3 予防医療を知って健康寿命を伸ばそう

残念ながら、予防医療はあまりみなさんには知られていないと思います。
日本では、平均寿命を伸ばすことに力を入れてきており、健康寿命はあまり考えられてこなかったためです。みなさんの健康寿命を伸ばすために、予防医療を知ってほしいと思います。

2 予防医療とは?


2-1 予防医療(予防医学)と治療医学

予防医療(予防医学):健康寿命を伸ばす医療
治療医学:平均寿命を伸ばす医療
治療医学は、病気になってから病院を受診して治療を受けることです。ほとんどのみなさんが持っている病院のイメージは、治療医学だと思います。

一方で予防医学は、病気になる前から行う医療も含まれます。

2-2 予防医療の3つの形

予防医療は、一次予防、二次予防、三次予防と3つの形があります。

一次予防:病気にならないようにする医療

具体的には、生活習慣の改善、予防接種、健康教育などが含まれます。

期待される効果:多くは生活習慣病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病など)にならない効果が期待できます。

二次予防:病気を早期発見し早期治療につなげる医療

具体的には、健康診断、人間ドックなどが含まれます。

期待される効果:がんでは、早期に発見することで内視鏡治療や手術で完全に治すことができます。脳卒中や心疾患では、高血圧や脂質異常症などの段階で治療を開始し、脳卒中や心臓病を予防することができます。糖尿病では、軽症の段階で治療を開始し、内服治療やインスリン治療を予防することができます。

三次予防:治療している病気の進行と再発を予防する医療。

具体的には、リハビリテーション、保健指導などが含まれます。

期待される効果:治療中の病気の進行の抑制と再発防止です。また、身体機能を維持して寝たきりを予防します。
三次予防が必要な期間は、病気を早期発見、早期治療することで、短縮することができます。そのため、三次予防の期間を短縮するには、適切な二次予防も必要です。

3 なぜ予防医療が必要なのか?


3-1 個人における必要性

健康寿命を伸ばし、人生を豊かにする

あなたの健康寿命を伸ばすことで、自立した生活を維持します。自立した生活を維持できるだけの身体機能を保つことで、やりたいことをやって、行きたいところに行ったりして、自分の人生を豊かにすることができます。一人ひとりにとって最も重要なことです。

家族の負担を軽減する(老老介護、働きながら介護、遠距離介護)

寝たきりになってしまうことで、家族の協力が必要となりますが、大きな負担となってしまいます。さらに、現在の日本で問題となっていることとして、老老介護、働きながら介護、遠距離介護が挙げられます。

老老介護:高齢者同士で介護をする。
働きながらの介護:日中は働いている家族が介護をする。
遠距離介護:遠く離れた家族が週末などに患者さんの家に通って介護をする。

あなたが寝たきりとなってしまった場合、どのような生活となるでしょうか?
今から予防医療を実践し、健康寿命を伸ばして、家族の負担を軽減しましょう。

3-2 社会における必要性

医療費の軽減

日本の医療費は平成30年度で43兆円以上であり、年々増加傾向にあります。

そのほとんどが、治療医学、つまり病気になってから治療をすることに使われています。今後、超高齢化社会になることで、さらに医療費が増えていくことが予想されます。
このまま医療が増え続けると、医療保険のシステムが破綻してしまい、必要な医療を受けることができなくなってしまう可能性が考えられています。
そのため、病気にならないようにする取り組みが重要となってくるのです。

※予防医療で全体の医療費を実際に削減できるかどうかは、はっきりしていないということです。

4 日本の問題点〜世界から遅れる日本〜


4-1 治療医学が主体の日本

日本は世界に誇れる長寿国と言われていますが、寿命を伸ばすための治療医学が主体発達している結果です。極端に言えば、寝たきりでもよいので平均寿命を伸ばすことに力を入れているのがこれまでの日本なのです。
他の国に目を向けてみると、予防医療への取り組みがどんどん進んでいます。
アメリカ:ライフスタイル医学
イギリス:公的保険医療制度の長期計画
フランス:疾病予防政策

日本は残念ながら、世界各国から遅れているといわざるを得ない状況となっているのです。

4-2 予防医療は保険がきかない

今の日本が治療医学を主体としていることの表れとして、予防医療には保険がきかないということが挙げられます。

健康診断や人間ドックは、自由診療で全額自費になっています。
就職している人の健康診断(企業健診)は、自由診療で全額企業が負担しています。

病気にならないと医療保険がきかないということは、病気になるまで受診しない人がでてきます。
日本の医療体制として、予防医療はまだまだ遅れているのです。

4-3 “知られざる?“日本の取り組み

日本では現在の医療システムを根本から変えている必要があると考えて、厚生労働省が「保険医療2035」という新たな社会システムの再構築を打ち出しています。
保険医療2035の目的の一つに、よりよい医療を安く享受できることを挙げており、その中には健康増進、予防、診断、治療、疾病管理、介護、終末期までが切れ目なく一貫性を持った保険医療として提供されること目標としています。予防医療にあたる“健康増進“、“予防“が含まれていることが重要です。
 厚生労働省.「保険医療2035」

しかし、医療者である私でさえ、「保険医療2035」という取り組みを知りませんでした。日本での取り組みをもっと広く周知し、予防医療を実践していくという健康教育が重要だと思います。”知られざる取り組み”であってはならないのです。

4-4 予防医療の必要性を理解し、推進する仕組みが必要

これからは、個人にとっても、社会全体にとっても予防医療の必要であることを理解して、予防医療を推進していく仕組みづくりが必要となってきます。

5 予防医療の始め方


ここまで読んでいただけると、予防医療とは何か、なぜ必要なのかが理解できたと思います。あなたの健康寿命のために、予防医療を実践していきましょう。

5-1 自宅でできる取り組み

自宅でできる取り組みは一次予防です。病気にならないようにすること、特に生活習慣病の予防です。

食事
 塩分、脂質、糖質、カロリーを抑える
 食事の時間を一定にする
 寝る2時間前は食事を取らない

運動
 有酸素運動を1日60分、できれば毎日行う。
 ※有酸素運動:ウォーキング、軽いジョギング、水泳、ストレッチなど。
 参考 厚生労働省HP

禁煙
 本数を減らすだけでなく、禁煙が必要です。

適度な飲酒
 アルコール20g:ビール中瓶1本、日本酒1号、酎ハイ350ml、ウイスキーダブル1杯
 参考 厚生労働省HP

適切な睡眠時間
 個人差がありますが6−8時間程度必要な人が6割といわれています。
 参考 厚生労働省HP

いきなり毎日実践するのは大変だと思います。
僕のおすすめは、毎週曜日を決めて”健康の日”として、実践してみることです。
慣れてきたら、健康の日を増やしてきましょう。

5-2 健診・人間ドック

家での一次予防を実践したら、予防効果の確認として健診・人間ドックを受けましょう。
健診では、「身体計測」「血液検査」「尿検査」「胸部レントゲン」「心電図」などを行います。
人間ドックでは、健診の項目のほかに、「呼吸機能検査」「CT検査」「腫瘍マーカーの採血」「超音波検査」「MRI」「胃カメラ・大腸カメラ」「マンモグラフィ」「PETーCT」など、さまざまな項目があります。人間ドックは毎年受診することが推奨されていますが、全ての項目を毎年行うことは費用的に難しいと思いますので、受診医療機関と相談してみてください。

5-3 社会サービス

社会サービスとして、介護サービス、リハビリサービスなどが当たります。
具体的には、訪問介護、訪問リハビリテーション、デイサービス(通所サービス)などです。
病気の治療で体力が低下したり、脳の病気で体が不自由になったりした場合に、できるだけ体の機能を維持するために社会サービスを利用します。

6 予防医療のまとめ

予防医療は、皆さんの健康寿命を伸ばすための医療であり、人生を豊かにすることにつながります。
現在の予防医療はまだまだ普及しているとはいえませんが、今後推進が望まれる分野です。
一次、二次、三次予防を理解して、できるところから実践していきましょう。


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