伝えられなかった片思い 3話

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小説
彼から伝えられたのは「就職が決まって他県に行くことになった」
という話だった。

私にとっては衝撃だったし、このままではいけないからせめて気持ちだけでも伝えなければと思った。

しかし、ここで大きな壁が立ちはだかった。

会った日数がたった3日の女性から告白されたら、信じるだろうか?
というか、OKするだろうか?

でも最後に路上ライブは絶対に行って、その時に伝えられたら気持ちを伝えようと心に決めたのだった。

私のその決意は叶うこともなく、そして最後のお別れすらも伝えることができなかったのだ。。。

当時は寒い冬だったから、私は少し風邪をひきかけていたのだ。
彼はそんな私に配慮をし、最後の路上ライブを秘密にして行っていた。

終わった後でその連絡があり、事実を知った私は絶望した。

何故風邪をひいてしまったんだろう。
元気であれば、最後に会うことが叶ったのに。

風邪で寝込んでた私はさらに悪化をして寝込んだ。
どれほど流しても涙は止まらなかった。

そして私は自分がどれだけ彼を好きだったのか。
身を持って知ったのだ。

私は無知だったから、今思えば自力で会えるような距離だったのにそれがまるで海外まで行ってしまったような遠い場所にいるような気がした。

数カ月後の夜 突然彼から電話が来た。
最初で最後の電話だった。

「声が聞きたくなって。元気にしてた?」

根拠は無かったけど期待した。
だって私の声が聴きたくて電話をしてきたんだもの。

普通の友人に声が聴きたくなったからなんて電話する?

でもそれは一度きりの電話で、もうかかってくることはなかった。

それからしばらくすると彼には彼女ができたという報告を聞き。
その後結婚したという報告も聞いた。

もしあのとき好きだって言えていたら、未来は変わったのだろうか?

もう私のことは覚えていないかもしれない。
でも私はあんなに大好きだった彼をずっと忘れることはないだろう。

あの笑顔も温かい手も、優しい声も。

今は私は私の幸せの道を歩んでいる。
過去がどうであれ、私は今を生きている。

そして優しく寄り添ってくれる人もいる。

伝えられなかった片思いは綺麗な思い出のまま、色あせることもなく私の記憶の中でずっと輝き続けている。




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