中小企業経営のための情報発信ブログ394:中高年の活躍を阻む3つの壁

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家電量販店のノジマが一昨年から最長80歳まで従業員の雇用を延長できるようにしています。雇用契約の上限を今までの65歳から80歳に大幅に引き上げたのです。現場販売員のノウハウを長く活用することが狙いですが、高齢者の就業機会の確保は2021年4月から企業の努力義務になっていることもあり、シニア人材の活用は企業にとっての重要課題となっています。労働集約型の小売業界では人手不足への備えとして雇用年齢の引き上げが拡がっていくものと思われます。
高齢者の就業機会については、定年延長を段階的に実施し、2025年に定年65歳とすることになっており、また70歳までの就業機会確保は努力義務となっています。ノジマが80歳まで雇用するとしたのは大胆かつ思い切った決定だと思います。
しかし、中高年が継続して働くうえで大きな壁が3つあり、それがネックになっています。
1.能力の壁
 まず、第1の壁は、「能力の壁」です。ただ、ここで言う「能力」とは、知的能力のことではありません。人間の知的能力は脳を使い続けている限りいくつになっても発達すると言われています。確かに、想像力や記憶力が低下することもありますが、経験がそれを上回ってカバーします。問題は肉体的能力の衰えです。特に、毎日、満員の電車に乗って通勤するのは重労働になり、それだけで肉体的に疲弊してしまいます。
2.制度の壁
 第2の壁は、「制度の壁」です。第一線で活躍できるのは何歳まで?」というアンケートで、欧米では「年齢に関係ない」との回答が約7割だったのに対し、日本では「30歳後半」「40歳台」が全体の6割以上を占めました。こうした欧米と日本の違いは「制度」によるという一面があります。能力主義の欧米に対し、年功制が残る日本では能力と無関係に50歳前後まで給与が上がり続け、60歳の定年まで大きく下がることはありません。いっぽう中高年の知的能力は実際に低下しなくとも、上昇する給与との間におのずと開きが出てきます。給与が上がっている割にそれに見合った貢献ができていないということです。待遇との比較によって「能力の限界」とか「能力が衰えた」とみなされるのです。能力主義の欧米では、70歳以上、ときには90歳以上で能力を発揮して活動している人がいます。要するの日本では、「能力」ではなく「制度」が限界を作っているのです。
3.文化の壁
 第3の壁は、「文化の壁」です。「長幼の序」の文化が残る日本では、年長者の扱いが大変だということです。年長者の部下は扱いにくいという声が聞かれます。部下であっても年長者は立てないといけない、敬語で話さなければならないということがでてきます。また、年長者の側でも年下の上司に指示されるのを好ましく思わない人が少なくなく、逆に年下の周囲の人に過剰な気づかいをする年長者もいます。
4.3つの壁を崩す
 高齢者の雇用機会を確保するためにはこうした3つの壁を崩さないといけませんが、コロナ禍でのテレワークの普及がこうした壁を壊してくれる可能性があります。
 第1の「能力の壁」、つまり通勤の負担はテレワークで軽減され、高齢者が肉体的な能力の衰えを感じることなく知的能力・経験を如何なく発揮できるのです。
 第2の「制度の壁」もテレワークで崩されるのです。テレワークの普及によって、一人ひとりの分担を明確にして仕事のアウトプットで評価する方向に進んでいきます。また、テレワークで組織がフラットになり、必然的に部長や課長といった役職も減り、年齢や勤務年数によって給与や地位が決まる年功制が維持することが困難になるのです。
 第3の「文化の壁」も、テレワークなら対面的な接触がないので年長者のプライドが仕事の障害になることは少なく、良い意味でドライな関係で働けるのです。
 このように、テレワークの導入が、3つの壁を崩す可能性は否定できませんが、そもそも高齢者に与えられる仕事がテレワークに適したものかどうかが問題です。また、テレワークを行うにはそれなりのパソコンやインターネットといったITスキルが必要です。テレワークに適したスキルを高齢者に教育することから始めないといけない場合もあり、高齢者の生産性という課題が出てくることもあります。
テレワークの普及が高齢者雇用をばら色にするとは限らないような気がします。最初に述べたノジマも高齢者に求めているのは高齢者の知識や経験を生かした接客です。テレワークで行う仕事ではありません。
今後、段階的な定年延長と70歳までの雇用機会確保の努力義務が課せられ、各企業は中高年の雇用機会を拡大する必要に迫られます。どの企業でも中高年の知識と経験が生かせる場所があるはずです。それはテレワークで出来る仕事かもしれませんし、テレワークで出来ない仕事かもしれません。あえてテレワークにこだわる必要はありません。満員電車での通勤がネックなら時差出勤でいいのです。中高年を雇用し適材適所に配置することによって企業の生産性や効率性も上がるはずです。中高年の雇用に躊躇するのではなく、積極的に活用しましょう。 
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