中小企業経営のための情報発信ブログ297:経営層に必要なスキルと経験

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
昨年6月に東京証券取引所によるコーポレートガバナンスが改訂されました。
東京証券取引所が定めているコーポレートガバナンスコードを参考に、経営層に出世するための指針を考えてみたいと思います。ここで書く内容は上場会社の経営層だけでなく、中小企業の経営者にも参考になることではないかと思います。
1.コーポレートガバナンスコード改訂
 今年、東京証券取引所によるコーポレートガバナンスコードが改訂され、6月11日から施行されています。
 コーポレートガバナンス改訂の目的は、「取締役たちが、株主の『利益を得る権利』を守るために、株主以外のステークホルダーたちと協働すること、そのために、隠し事のないように経営の透明性を確保し、適切なリスクテイクによる企業価値向上を目指すこと」です。上場企業を前提として東京証券取引所が作成・改訂している以上、「株主の利益」が前面に出てくることはやむを得ないところです。しかし、「経営の透明性」と「リスクテイク」は、コロナ禍の混沌とした経済環境の下では、上場企業に留まらず非上場企業、中小企業にも重大な意味を持つように思います。
 コーポレートガバナンスコードの主な改訂の内容は次の通りです。
Ⅰ:取締役の機能発揮・・・①プライム市場において、独立社外取締役を3分の1以上選任 ②指名委員会・報酬委員会の設置 ③経営戦略に照らして取締役が備えるべきスキルと、各取締役のスキルとの対応関係の公表 ④他者での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任
Ⅱ:企業の中核人材における多様性の確保・・・①管理職に置けり多様性の確保 ②多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況と合わせて公表
Ⅲ:サステナビリティを巡る課題への取組み・・・①プライム市場上場企業において、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実 ②サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示
2.透明性の確保
 「透明性の確保」というのは、取締役たちが隠し事しないようにするための規制です。規制しても抜け道があるので、具体的な基準で透明性を担保しようというのが「取締役の多様性」「取締役の独立性」です。
 取締役がグルになって隠そうとしても、多様性があればそこで意見は分かれますし、独立性があれば隠そうとする行為に対して反発するだろうということです。
 上場会社においては、株主に対して情報公開を行い、経営の透明性を確保するということは当然のことですが、非上場企業・中小企業においても従業員や顧客に対する情報開示は極めて重要です。インターネットが発達した現代では隠し事がバレれば顧客はすぐに離れてしまいます。不祥事があれば公表し謝罪し、対策を明らかにするということは、上場企業だけでなくすべての企業に求められるところです。それがきちんとできなければ企業の存続すら危ぶまれることになるでしょう。
3.リスクテイク 
 経営層からすれば、わざわざリスクを取ってまで成長を目指さなくてはいいだろうと思う場面も多々あります。しかし、株主の立場では、資金を引き揚げて成長している企業に投資したくなるものです。
 「適切なリスクを取れる人材を経営層において、ちゃんと成長戦略を描きなさい」ということで、株主が投資先を選べるようにしようということです。
 企業はゴーイングコンサーンでなければ意味がありません。企業は継続していくということが前提なのです。多くの企業は、コロナ禍で、存亡の危機に立たされています。企業が継続していくためには持続的な成長が不可欠です。それは上場企業に限ったことではありません。中小企業も零細企業も個人商店も同様です。コロナ禍のような危機的状況においては、過去の実績や旧態依然としたやり方・経営方法に固執していたのでは、生き残ることはできません。きっちりとした成長戦略を立ててイノベーションを起こせるかがカギです。
4.経営層に求められるスキル
 【透明性の基準】
Ⅰ:取締役の多様性・・・①ジェンダー ②年齢 ③グローバル経験 
Ⅱ:取締役の独立・・・①ファウンダーとの関係 ②株主との関係
 【リスクテイク基準】
Ⅰ:事業成長・・・①自社理念への共感 ②リスクテイク経験 ③商品・顧客開発
Ⅱ:リスクマネジメント・・・①財務・ファイナンス ②法務・知財 ③人事・労務
 以上がコーポレートガバナンスコードに基づく経営層に求められるスキルですが、あくまでも投資家目線・投資家の視点に基づくものです。しかし、これらの多くは、上場企業だけでなく、すべての企業で必要なスキルでもあります。
 特に、リスクテイク基準の中で挙げられているものは、ビジネスパーソンが積んでいくことができるスキルです。
 自社理念の共感というものは、上層部との対話を通じて学び、周りに広げていくことで確実の身につけることができます。以前書きましたが、ンゲージメントを高めるためには、会社が進むべき方向、ビジョンを理解し(理解度)、互いに仲間意識をもって協力し合い(共感度)、仲間との目標達成を最大のモチベーションとして行動する(行動意欲)ことが重要です。
 また、リスクテイク経験は、厳しい経営環境において自ら意思決定の現場に携わることで経験していくものです。人間は失敗の中でしか成長はできません。自ら小さな失敗を繰り返し修正して成功へとつなげていくことで成長するものです。
 商品開発や顧客開発も同じです。ポジショニングやセグメントを決めて顧客ニーズを把握しながら、失敗をして軌道修正や方向転換を繰り返しながら、行っていくしかありません。
 財務、法務、人事についても経験を積んで企業価値の観点から語れるようになれば十分に認められます。当然実務の経験とともにスキルアップのための学習も必要です。
激変する時代の中で、経営層に求められる基準は今までと大きく変わっています。しかし、本質はシンプルで、上記のスキルを身につければよいのかもしれません。
ただ、以前、楠木建&山口周著「『仕事ができる』とはどういうことか?」を紹介した時に書いたように、経営層になることが上がり、ゴールではないのです。「自分は経営層になって『何がしたいのか』」という「行動」が表明できなければなりません。その行動表明・意志表明も、自分の腹から出た言葉で行わなければならないのです。それらはスキルではありません。センス、その人自身に備わっている人間性です。
スキルだけを持った経営層では企業の持続的成長・発展はないと思います。スキルとともにセンス・人間性を磨くことです。それは人と人との人間関係、信頼関係を築き上げることで磨くことはできます。「この人ならばついていきたい」「この人のために働きたい」と思えるような関係性を築き上げることです。そういう経営層になることで、個人のモチベーションは高まり組織のエンゲージメントも高まり、危機的状況でも成長発展できる企業になるように思います。 

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