中小企業経営のための情報発信ブログ284:中小企業の構造改革

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コロナ禍で、飲食、小売り、宿泊など全業種にわたって、中小企業は大きな痛手を受けました。政府の給付金や助成金で何とか持ちこたえてきた企業もあれば、コロナ倒産や廃業をやむなく選択した企業もあります。
今後は中小企業の生産性を向上させるなどの構造改革を進める施策へと比重を移していくことが求められることは言うまでもありません。
政府は、管元首相当時から中小企業の再編(淘汰)を推し進めようとしていますが、中小企業の淘汰が問題であることは以前書きました。
日本企業の約99%を占め、全労働者の69%が働く中小企業は日本経済の根幹を支えている大切な存在です。管元首相のブレーンであったアトキンソンの「中小企業不要論」は間違っています。中小企業の生産性が低いのは大企業に搾取されているからで、問題は中小企業にあるのではなく大企業にあるのです。そう言っても中小企業に問題がないわけではありません。その一つが、中小企業に明確な戦略がないことです。ポーターが言うように、日本企業には戦略はありませんが、特に中小企業は顕著です。
政府が中小企業の再編(淘汰)という方向にかじ取りしようとしている以上、そうした動きに巻き込まれないためにも、中小企業自体も生き残りをかけた構造改革が必要です。
中小企業の構造改革は、3つの側面から進めることが重要です。その3つとは、
Ⅰ:業態転換
 Ⅱ:M&A
 Ⅲ:ITなどを通じた個々の企業の生産性向上
という3つの柱です。
1.業態転換
 経産省は、将来を見据えて中小企業の業態転換を促す考えを示し、新たな補助金や融資、資本性資金の提供といった支援策を検討しています。
コロナ禍が落ち着いても人々の生活様式が元に戻らず、個人の消費行動が構造的に変化することが考えられ、企業には業態転換を通じた事業の立て直しが求められます。
 すでに、飲食業界では、宅配やデリバリー・お持ち帰りサービスを提供する店舗も増えてきていますし、ホテル業界もテレワーク用に客室を貸し出すサービスを行っています。ワタミでは需要の減る居酒屋の一部を焼肉店に切り替えたりしています。
 倒産・廃業という道を選ばず、業態転換という道を選ぶことが出来れば、失業増加などといった社会的損失を最小限に抑えることができ、期待が持たれます。
 政府が、こうした業態転換に補助金や助成金を出して支援するというのはいいことです。しかし横行する不正受給には目を光らせ、不公平な補助金や助成金の給付がなされないようにしなければなりません。
2.M&A
 企業経営者が高齢化し後継者がいないといった事由によって優良企業が廃業することを回避できるという意味でM&Aは重要な手段です。
 廃業を決定した企業の中にも優良企業が少なくありません。こうした優良企業が後継者不足・不在という理由で廃業に追い込まれるのは社会的損失です。M&Aを通じて廃業を避けることができれば中小企業の生産性向上にもつながります。
 政府は、「経営資源集約化税制」で投資額に応じた減税を検討していて、①自社の技術と買収先の技術を組み合わせて新製品を製造する際の設備投資 ②原材料の仕入れや販売管理に使う共通システム導入などを減税対象とすることが検討されています。また、M&Aには回収見込みのない売掛金をはじめとした簿外債務が生じるケースがあってそれがM&Aを躊躇させる要因になっていることもあります。そこで、中小企業が将来の支出や損失に備えて準備金を積み立てた場合に、損金算入を認める制度も検討されています。
3.IT活用による生産性向上
 中小企業の経営環境の改善策を官民で話し合う「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の会合(令和2年11月18日)では、中小企業への支援策を取りまとめる方針で一致し、収益向上が見込める業態への転換やデジタル化の促進などを柱とした施策が検討されるようです。また、独立行政法人・中小企業基盤整備機構は、中小企業へのIT導入の支援を強化しています。
「中小企業の構造改革は岸田政権の大きな手腕の見せ所」と言ってよく、「消費行動が構造的に変わる中、業態転換やM&Aを通じて、産業構造の変化を先取りする中小企業構造改革を政府が支援するという政策が次第に重要になってくる」でしょうが、政府が推し進めようとしているのは、このような構造改革を念頭に置いたものではなく、以前書いたアトキンソンの「中小企業悪玉論」に乗っかり、生産性が低いと彼らが考える中小企業を強引に淘汰しようとしているだけです。
繰り返しになりますが、日本企業の生産性の低さは大企業の問題で、大企業が下請け・孫請けといった中小・零細企業からの搾取を止めない限り、日本の生産性は向上しません。先ずは、こうした大企業による搾取に構造的なメスを入れることが先決で、そのあとで、中小企業の業態転換やM&Aなどの構造改革を行っていくべきでしょう。 
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