中小企業経営のための情報発信ブログ278:高齢化する日本企業の課題

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人生100年時代が到来し、日本でも定年年齢が引き上げられ、令和3年4月1日施行の高齢者雇用安定法では65歳までの雇用確保義務に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、高齢者就業確保措置として70歳までの定年の引き上げ、定年制度の廃止などを努力義務としています。
高齢化は日本だけでなく世界的な問題であり、避けようがありません。多くの人は、これを危機と捉えていますが、健康で活動的な高齢者も多く、寿命の伸びが世界的な経済発展の寄与するとの研究報告もあります。高齢者の持つ勤労者や消費者としての可能性を見過ごすことはできません。
そうはいっても、高齢者が企業でこれまで通りの役職や給料を得ることは難しいのが現状です。高齢者に対する企業側のスタンスも厳しいのが現実です。
1.60代管理職はほとんどいないのが現状
 厚労省の「賃金構造基本統計調査」によれば、大半の従業員が定年前後を境に、組織内における枢要な職位から降りることがわかっています。50歳代をピークに60歳代の部長職はその数を大幅に減らします。大企業において部長職にまで上り詰める人はごくわずかですが、そのわずかな人も年齢を重ねるにつれいずれは役職を降りざるを得なくなるのです。
 多くの日本企業では、能力や経験ではなく年齢によって一律に役職を引き下げられますが、企業人事の視点に目を移せば、そこにはいくつかの事情が存在します。
 その1つが、日本社会が少子高齢化に直面する中、企業内部においても年齢構成のバランスが崩れているということです。総務省の「労働力調査」によれば、ここ数十年で、社内の年齢ピラミッドが大きく崩れてきているのです。20歳代30歳代の社員が減少し、中高年が増えているというのが典型的な日本企業の状況です。多くの企業で、現場で顧客の最前線に立って成果を生み出すプレイヤーが不足し、管理だけを行なう人材へのニーズが低下しています。
 年齢構成のひずみの拡大に応じて、企業としても役職適齢期を迎えている中堅層を十分に処遇しきれなくなっているのです。これまで企業のために尽くしてきた従業員に対し職位で報いることができないという事態に直面しているのです。そうなると、中堅層のモチベーションを維持することも困難となってきます。中堅層のモチベーションをいかに維持するかということが企業にとって重要な課題となります。一方で中堅層、中高年も自ら意識を変えていかなければなりません。
2.人員管理の根詰まりという問題
 日本企業が置かれた現実を見ると、職業人生の最後の瞬間まで高い役職を維持し続けることは困難です。それは、人生100年時代、生涯現役時代において、キャリアのどこかの段階でポストオフに直面することを、誰もが自己のキャリアの大前提として考えなければならないということです。役職に就きながら、部下のマネジメントを行なうだけで給料を得られるというような働き方はもはや許されなくなっているのです。
 早期に昇進して重要な仕事を任されたいと思う若手にとっても、人員管理の根詰まりは強い閉塞感に繋がります。若手の離職を防ぐ観点からも、役職をポストオフした中高年に一プレイヤーとして働いてもらう必要があるのです。
 今の高齢者は、上の世代に比べて健康的であり活動的であり、学び、働き、貢献し続けることで老後のあり方を変えようとしています。
 彼らは、職場に、情緒の安定、複雑な問題を解決するスキル、奥行きのある発想、組織を泳ぐノウハウなどをもたらしてくれます。彼らは若手労働者の足りない部分を補い、その指導や支援は業績向上や世代間の協働に役立ちます。第一線を退いてからの仕事、ボランティア、市民活動や社交の場では、彼らの経験や知識、問題解決力が役に立ちます。
 日本は高齢化が最も進んだ国です。高齢化に対する施策は、日本において喫緊の課題です。高齢者雇用安定法で定められたからとか努力義務だからなどと言っている場合ではありません。高齢者と若者をどのようにつないでいくのか、高齢者が働きやすい職場をどのように作っていくのかが、ポストがなくても高齢者がモチベーションを維持できる働き方をどう作るか、企業が成長するためには避けて通れなくなっています。
 経営者が率先して社内全体を巻き込んで取り組まなければならない課題です。単に定年制を引き上げるなど目先のことだけを変えればいいだけの問題ではありません。組織運営に関するあらゆるものを変えていかなければ、高齢者を競争優位の源泉に変えることはできません。
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