中小企業経営のための情報発信ブログ273:イシューから始めよ

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は、安宅和人著「イシューから始めよー知的生産の『シンプルな本質』」(英治出版)を紹介します。安宅氏は日本の情報学者で慶応大学環境情報環境学部教授であり、ヤフーのCSOでもあります。「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人財育成」(NewsPicksパブリシング)も話題となりました。
これまでもさまざまな思考法や問題・課題解決の技法については紹介してきました。多くのビジネスパーソンがさまざまな課題解決方法を実践しても成果が出ないと悩んでいます。この本は、最小限の労力で「問題解決」したり、「最大の成果を出す」方法を教えてくれている本です。
1.「イシューから始めよ」とは?
 本のタイトルである「イシューから始めよ」の「イシュー」とはどのような意味でしょうか? イシュー(issue)は、「問題・論点・争点」という意味ですが、安宅氏は次のように定義しています。
Ⅰ:2つ以上の集団の間で、決着のついていない問題
 Ⅱ:根本に関わる、若しくは白黒がはっきりしていない問題
 Ⅲ:知的な生産活動の目的地となるもの
 世の中はさまざまな問題や課題が山積みですが、その多くは今答えを出す必要がないものばかりです。それらは似非イシューにしか過ぎず、安宅氏が言うイシューではありません。
 多くのビジネスパーソンは仕事に忙殺されています。しかし、その仕事は、本当に価値があり意味のある仕事でしょうか? 「クソどうでもいい仕事(ブルジット・ジョブ)」とまでは言いませんが、建設的な仕事とはほど遠い仕事が増えているのです。
 これまでも書いていますが、仕事は優先順位を決めて、価値があり意味のある仕事から取り組んでいくべきです。これは当たり前のことですが、手当たり次第目の前に来た仕事に手をつけて、優先順位の高い仕事を後回しにしていては、最後に慌てふためいて重要な仕事に取りかかり、徹夜仕事になったり、不十分なまま時間切れになったりするのです。それでは生産性が高まるはずはありませんし成果が出るはずもありません。
 生産性の高い人と低い人との違いは、問題を解く前に、問題の「見極め」をしているかどうかにあります。安宅氏は「最初に解くべき問題を見極めてそこに集中しているから、短時間でも素晴らしいアウトプットを出せる」と言います。
 この本では、バリューのある仕事は、「イシュー度」と「解の質」の両方が高いものと定義されています。イシュー度というのは「自分が置かれた局面でこの問題の答えを出す必要性の高さ」のことです。解の質というのは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」のことです。
 バリューのある仕事を生み出すとき、どうしても解の質ばかりに注目してしまいます。しかし、いくら解の質を高めても、バリューのある仕事を生み出すことはできません。イシュー度を高めることが、バリューのある仕事へと結びつくのです。
2.イシューを見極め選択する
 バリューを生み出すためには、何に答えを出し、白黒をつけるかを明確にする必要があるのです。
 まず最初に、イシューを見極めることから始まります。本当のイシューなのか似非イシューなのかを見極めるのです。具体的に言えば、何に答えを出す必要があるのかという議論から始め、そのために何を明らかにする必要があるかを見極めることです。
 本当に解くべき問題を見極めるには、仮説を立てることが重要になります。仮説を立てることで、答えを出せるイシューか見極めることができたり、必要な情報を分析すべきことがわかったりとイシューのスタンスが確立できます。
 仮説からイシューのスタンスが決まったら、それを言葉にしていきます。人は言葉にしない限り概念をまとめることができません。とりあえず、「これがイシューかな」と思ったら、言葉にする・言語化することです。
 良いイシューというのは、スタンスが明確で常識を否定しているものです。
 スタンスが曖昧なイシューだと、仮説検証するのに網羅的に世間のすべての情報を調べる必要が出てきて膨大な作業になります。仮に問いに対する答えがでても、その界には具体性が乏しく、仕事が前に進みません。
 また、常識すぎるイシューだろ、当たり前の答えしか出てきません。これでは仕事に何の変化も起きません。
 今は変化の時代ですし、何が正解かわからないような時代です。これまでの常識が妥当するとは限りませんし、正解も一つとは限りません。常識にとらわれる必要はなく、常識を否定するところから新しいものが生まれてくるはずです。
3.イシューをサブイシューに分解して組み立てる
 イシューが見極められたら、次にすべきことはイシューの分析です。これは解の質を高める生産性を向上させる作業です。具体的には「ストーリーライン」と「絵コンテ」をつくります。
 イシューを分析することで、その中に潜む「サブイシュー」が洗い出され、それに沿った分析のイメージを作ることができます。サブイシューはイシューを構成する小さなイシューのことです。イシューはそれを構成する小さなイシュー(サブイシュー)が組み合わさってできているものです。
 ストーリーラインというのは、ある問題を最終的な結論から前倒しして、どんな論理と分析によって検証できるか、後ろから考えることです。ここでやるべきことは、分解して組み立てることです。イシューを漏れやダブリのない本質的な意味のある塊に分解し、サブイシューを洗い出します。これらを「他の人に伝えるために、どの順番でサブイシューを並べるのがいいか」を考えて、組み立て直します。分解したイシューに基づき、サブイシューを組み立て直すことでストーリーラインができるのです。
4.イシューを絵コンテにする
 もう1つの作業は、絵コンテづくりです。ストーリーラインで浮き彫りになったサブイシューに対して、必要な分析検証のイメージをまとめ、絵コンテで示します。
 絵コンテづくりのステップは次の3つです。
⑴ 軸の整理
 Ⅰ:量や長さなど何らかの共通軸2つ以上で「比較」する
 Ⅱ:市場シェアやコスト費など全体と部分の構成を「比較」する
 Ⅲ:売上の推移、体重の推移などの変化で「比較」する
などの定量分析の方を使い、分析の枠組みを作ります。
⑵ イメージを具体化する
 具体的な数字を入れて、分析・検討・結果のイメージを作ります。数字を入れたチャート(グラフ)を描くことで、仮説の意味合いをはっきりさせることができます。
⑶ 方法を明示する
 「どうやってデータをとるのか」という方法を明示します。どんな分析手法を使ってどんな比較をするのか、どんな情報源から情報を得るのかを考えます。
5.答えありきのアウトプットはしない
 イシューを設定し、ストーリーラインを作り、絵コンテを作ったら、実際に分析を行なうアウトプットの段階です。
 ここでは、限られた時間の中で、本当に価値のあるアウトプットを効率的に生み出すことを目指します。そのためには、いきなり、分析や検証を行なわないことです。分析や検証がずれるとすべてが台無しになるからです。
 人は分析や検証を行なっていくと、自分の立てた仮説が正しいと思える情報ばかりを集めがちになります。自分たちの仮説が正しい=答えありきで考えてしまうと、フェアの視点で検証できなくなってしまいます。
 イシューから始める課題の分析とアウトプットは、答えありきのものとそうでないものを切り分けて考えることが大切です。そのような習慣を身につけましょう。
6.最後の仕上げ メッセージを伝えること
 最後の仕上げは、イシューに沿ったメッセージを伝えることです。
 ここでの目的は、人の心にインパクトを与え、価値を納得させ、本当の意味のある結果を生み出してもらうことにあります。そのためには、メッセージの受け手が同じ目的意識を持ち、同じように納得して行動に移してもらう必要があるのです。
 そのためには、ストーリーラインの構造がスッキリとした論理構造になっていなければなりません。流れが悪いところは見直し、ストーリーラインに磨きを掛けます。
 また、チャートの縦と横の広がりが明確であり、それらが伝えたいメッセージをサポートしているかの精査も大切です。
 最終段階では、「本質的」「シンプル」という2つの視点でイシューを見直すことが大切です。
 以上、簡単に、この本の内容を書きましたが、物事の本質的課題であるイシューから始める思考方法は役に立つと思います。本書を手に取ってみてください。
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