様々な方の新規ビジネスのコンサルティングに携わってきましたが、いわゆる「エリートサラリーマン」が独立して始めたビジネスは失敗するケースが多いことに気づきました。
むしろ学歴や職歴の無い人たちの方が大きな失敗をせずそれなりに成功をしている印象があります。
エリートサラリーマンたちが失敗するケースには、共通する理由があります。
エリートサラリーマンたちはしばしば崇高な理念やブランディングから入ることがあまりにも多いのです。
例えば、SDGsやDEIなど、世界的にも注目度の高い社会問題を解決するためにビジネスを立ち上げるのは決まってエリートサラリーマンです。
自分の能力とキャリアに自信がある彼らが、自分にしか出来ない仕事としてこれらの壮大なテーマにチャレンジするのは理解出来ます。
ところが実際のスタートアップで大事なのは、いち早くビジネスの実態を作り、お金が入ってくる仕組みを作ることなのです。いわゆる「キャッシュエンジン(=安定的に現金が入ってくる源泉)」が何より大事なのです。
こうしたキャッシュエンジンとなる事業はたいてい地味で格好良くありません。
例えばECの世界では、キャッシュエンジンを作るビジネスモデルは「せどり」だったりします。
需要のあるものを安く仕入れて高く売る。
せどりはビジネスの基本であるこのフローを体現しています。
ところがせどりは一般的にイメージは悪く、忌み嫌われがちです。
たしかにせどりはクリエイティブでは無いし、面白くはありません。
ところが、回転率の高い商品を見つけられれば、即座に売上は拡大し、キャッシュフローも安定します。
特にスタートアップのフェーズでは、短期間で安定してキャッシュを生み出せる状態を作れるかが、生き残りを左右させるのです。
エリートビジネスマンはこうした地味で格好悪いビジネスはまず選びせん。
誰もがやっていない新しいテーマにいきなり取り組んでしまうのです。
ところが、こうした新しいテーマを成功させるのはそう簡単ではありません。時間も相当かかります。そうこうしている間に残りのキャッシュは尽き、気がつけば The End・・。こうしたケースを何度も見てきました。
もちろん、誰もがやっていない新規性のあるビジネスに取り組むことは、何よりも尊いし価値があると思います。そういうチャレンジこそが、世の中を前に進める原動力であることは間違いありません。
ただ最初から新しい意欲的なビジネスに挑むのは無謀だし自信過剰と言わざるを得ません。
とにかくスタートアップに必要なのは、地味な仕事でも良いので継続的にキャッシュを生み出せる安定的なビジネスを構築することです。
社会課題に挑むような壮大なビジネスに挑むのは、足元のビジネスが安定した後でもまったく遅くはありません。
例えばECの世界で考えれば、いきなり自社ブランドを開発して販売するのではなく、まずはせどりでいろんな商品を売って見て、可能性のありそうな商材が見つかればその商材で自社ブランドでチャレンジすることも大いに考えれます。せどりで販売しているうちにノウハウも身につくので、自社ブランドの商品を売る時には、とても有利な状態でスタートできます。
ECに限らずですが、スタートアップではとにかく地味で格好悪くても良いので、いち早く現金化できるビジネスモデルを構築することがとにかく大事なのです。_