政治家と宗教団体:2022年8月のコラムの転載

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コラム
先月の8日、後2日で参議院選挙の投票日という選挙戦の終晩にその事件は起きた。
安倍晋三という総理大臣を2度務め、7年だか8年の戦後総理大臣の最長在任記録を更新した保守政治家が、晴れ渡った白昼の真っただ中、奈良市の観衆や聴衆の眼前で、手製の銃弾で射殺された事件である。

この事件が注目されたのは
先ずは被害者が今なお日本の保守系政治家たちに対して大きな影響力を有しており、政界では老齢とは言えない67歳という年齢の元首相であった、という事にあったであろう。
次いでは、夏の盛りの白昼の選挙応援中の事件という事である。

三年前の7月同じ参議院選の際に、同じこの政治家が札幌で選挙演説をしていた時に、ヤジを飛ばした見物人数人が、北海道警の警察官たちによってヤジを行っている最中に、身柄を隔離確保されたという事があったが、その時の警護体制と比べずいぶん開きがあった事に、ちょっとした驚きがあった。
今から2代前の元総理大臣であった事、当時は現役の総理大臣であった事もひょっとして影響していたのかもしれない、と想った。

当時は官僚たちの時の権力者への忖度がかなり大っぴらに行われ、それが出世に繋がると官僚たちが想っていた時期であった。
因みに3年前札幌で現場指揮を執っていた中間管理職の警察官はその後、無事にというか彼の期待通りに出世している、という事である。

いずれにしてもかつてそのような忖度を受けていた元首相が3年後に奈良市で、いともアッサリと銃撃者の被害に遭ったことが驚きであったのだ。
やはり権力の中枢に現役でいる人間と、権力の中枢からリタイアしてしまった政治家では、官僚たちの忖度度合いも変わってしまうモノなのか、と警備/警護の官僚たちの変わり身の早さを改めて確認した次第である。

安倍銃撃.jpg

三番目に注目されたのは銃撃者の殺害動機が、安倍元首相の政治信条やイデオロギー/政策といった、政治家としての基本スタンスに対する抗議や反感から行われたのではなかった、という事が判明したことである。
これは警察の事情聴取の結果判明したわけであるが、銃撃者は自身の家庭を破滅に追いやった母親と、それの原因を作ったカルト系宗教団体である「旧統一教会」への私怨を晴らすために安倍氏を狙った、という事であった。

家庭を崩壊させた恨みある「旧統一教会」と、総理大臣経験者であった保守政治家の安倍氏が広く深く関わっている事が判明したから、その攻撃の矛先を彼に替えたという供述があった、というのだ。
「旧統一協会」はその政治組織である「国際勝共連合」を通じて、日本の右翼やウルトラ保守政治家たちと、日本での活動拠点創設以来深くかかわって来た、という歴史を有していた。

安倍氏は尊敬して止まない祖父岸信介が、創設以来60年以上関わってきた「旧統一教会」や「国際勝共連合」との太いパイプを、継承し関わり続けた来たわけである。
更に事件後判明したのも、「自民党国会議員と旧統一協会の関係」をより太く結び付けて来たのが、総理大臣を7・8年勤め人事権を発揮し続けた安倍氏であったという事である。

安倍派の国会議員の多くが旧統一教会や勝共連合から選挙応援や資金面で、多く支援を受け関わって来たという事実が、それを裏付けている。
そんな関係もあって自民党安倍派の議員たちが、自民党内で最も多く旧統一協会と深い関係を現在でも持っている、というわけである。
その意味では銃撃者の狙い先はある意味「的」を得ていた、という事は言えるのだ。

この事実が判明して以降、世評の銃撃犯に対する見方や考え方が変わって来た様に私は感じている。
銃撃者の母親が、家庭に入って来た多額の臨時収入や生活費などを旧統一協会に貢ぎ続けた事が、銃撃犯の山上家の家庭生活を破綻させたと彼は認識していたのであった。

実際のところ彼の母親は総額1億円以上を、かのカルト教団に貢ぎ続け山上家の家計を破綻させ家庭を崩壊させた。それはこの事件が起こった後の今なお続いているのだという。
その旧統一協会が下村博文という安倍派の幹部が、2015年に文科大臣であった時に断行したのが「旧統一協会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更の受理、であったわけである。

宗教法人の名称変更は文科省配下の文化庁の所管する業務である。
霊感商法や詐欺まがいの高額の印鑑や壷などの販売で、多くの家庭を破壊させ日本社会で悪評の高かった、「統一協会」というブランドの負のイメージを払拭させるための、名称の変更をもくらんだのである。

この下村文科大臣下で行われた名称変更により、信者の家庭崩壊や家計破綻を引き起こしている統一教会が、新しいイメージを打ち出そうとしたその名称が「世界平和統一家庭連合」となっているのは、笑い話というよりこの宗教団体の虚言癖を象徴しているように私は感じている。

「国際勝共連合」という名称にしたところで本来は、共産主義勢力に対する防波堤を国際的に構築する、といった様なイメージを抱かせるがその実態は、実際にはそこにあるのではない。
それを端的に現しているのが、創始者文鮮明と北朝鮮の独裁者一族「故金日成主席」との太い関係である。

「朝鮮労働党」というのは、北朝鮮の共産主義者の政党であると自らを位置付け、イデオロギーは共産主義を標榜している独裁国家なのだが、統一教会の文鮮明はその朝鮮労働党の創始者でもある、国家主席「金日成」と太いパイプを有し、多額の資金提供を行う事で友好関係を築いていたという。

従って看板では「勝共連合」を名乗るこの組織は、その名称や発するスローガンで、日本やアメリカなどの右翼やウルトラ保守層に接近しながらも、裏では北朝鮮と結びつき太いパイプを作っている宗教団体が率いる、政治部隊なのである。

言葉や看板に簡単に騙されるシンプルな思考回路を持っている人達が、世間には一定数いるのは仕方ないことだが、「統一教会」や「勝共連合」という組織の実態はこの程度である点は認識しておく必要がある。
更に言えばこの旧統一教会というカルト教団の創始者文鮮明は、明治時代に日本によって行われた「朝鮮併合=植民国家時代」に深い恨みを持っていて、その恨みを晴らすために日本に進出してきた宗教団体である、という点を見逃してはならない。

それを象徴するのが1冊3千万円とかいう値段で信徒に売却されているという「文鮮明文言集=『聖本』即ち聖書」と呼ばれている書物に書かれている、日本と韓国との関係である。その聖書に書かれているその教祖の有り難い言葉の中には

「日本はエバ(イブ)の国だから、アダムの国である韓国に貢ぎ奉仕しなければならない」
「朝鮮半島は男根で、日本列島は女陰の国だから、女性である日本は男性である朝鮮半島の国に仕え奉仕しなければならない」
「日本人は戦前に従軍慰安婦として朝鮮人の女性を日本兵の性的奴隷にしてきたから、今度は日本女性が朝鮮半島の男たちの性的奴隷として仕えなければならない」

因みにこれは悪名高い「合同結婚式」の正当性を語っているらしい。日本の若い女性信徒が韓国の未婚の男性と結婚することで、それが実行される構図である。
といった様な事が書き記されているのだという。

そして当の日本の信者たちは「日本をエバの国に選んでくれて感謝している・・」というのである。

日本と韓国.png

     文鮮明にはこの地図は「男根」と「女陰」と見えるらしい。 
     彼は豊か過ぎる想像力や妄想の持ち主だと推察され得る。

宗教団体の信者たちがその創始者や教祖を崇め奉るのは、よくあることだからこれをどうこう言うつもりはないが、日本の右翼やウルトラ保守層というのは「日本民族主義者」であることが、政治信条の根っこにあるはずだからこの現象は滑稽ですらある。

日本民族を朝鮮半島の国に隷属させることや貢物をさせる国家、として言い続けている人物が率いる宗教団体や政治団体と、友好関係を維持し続けているというのだから情けなくて、これはもう嗤うしかないのである。

「反共」とか「勝共」とか「保守」という言葉やスローガンを挙げさえすれば「お仲間」「友好団体」として受け入れるというのは、単純すぎて情けない。
しっかり相手の教義や信条を調査し理解した上で、お付き合いを行うかどうかを判断しなさい、と言いたくなる。

それとも右翼やウルトラ保守層は自民党や保守系政治家達がそうであるように、統一教会グループから多額の献金や寄付金を貰っていて、そんな事を調べる必要もない関係になっているのであろうか。何とも底の浅い民族主義者たちである。

そしてその献金や寄付金の殆どが、善良な信徒たちが家庭崩壊を起こしてまで統一教会に寄付して集めた1000億円以上の献金が原資に成っているというのである。
お互いに「持ちつ持たれつ」「ズブズブの関係」だという事か・・。

今回の銃撃犯の山上被告がこの様な思想を持つ「統一教会」と祖父の代から関係が深く、政治権力を使って野放しにしてきた元総理大臣を銃撃したのは、その行為自体が許されざる行動だとしても、その犠牲に成って家庭を崩壊させられた「哀れな信徒二世」だとしたら、ある程度その行為を理解するとが出来るのもまた事実である。

私にはこの事件の背景や実態を知るにつけ「因果応報」という言葉が、頭をよぎってくるのである。
そして山上被告の背景には、このカルト宗教の犠牲に成って来た沢山の家族や人々の怨嗟の姿や、その溜まり溜まった負のエネルギーの存在が見えてくるのである。



このコラムを書いてから1年以上経っているが、今回この時点でこちらにコラムとして取り上げたのは、今日2023年10月13日に文科省が「旧統一教会の解散命令」審議を東京地裁に提出したからである。

一年前に「山上被告」が安倍晋三氏を銃撃殺傷した事件が、一つの結果を現した記念すべき日だから、敢えてここで取り上げることにしたのである。


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