知床遊覧船の事故から一年

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コラム
昨年の今ごろ北海道の知床で悲惨な遭難事故が起こった。
遊覧船の遭難である。
昨年の事故の当日北海道は北西からの風が強く吹き荒れ、道南日高山脈近くの我が家でもそれは強く感じられた。春の嵐だったのかもしれない。日記に記録しておいた。
そんな折に起きた人災である。

当時その強風の中をシーズン初めての観光遊覧船を出航させた、という時点で私はこの会社の経営者の資質を疑った。
その後の報道等によりこの経営者が海の危険性への配慮の無い、単なるそろばん勘定優先の経営者であることが判明した。
更にここ数年この経営者に替わってから、それまでのベテラン船長や従業員が一斉に退職したという報道に接し、私はこの事故は人災であると確信した。

加えて当該船舶には破損個所が幾つかあり、通信網も同様であるという。
これはシーズン前に整備検査を済ませたという、監督官庁職員の確認ミスであり、これも人災である。           
この海難事故は振り返ってみると、近年まれな「人災事故」であったと言えよう。
まずは犠牲者の数が26人と多く、春の嵐の吹き荒れる早春の北海道の冷たい海の中で起きた悲惨で痛ましい事故であった事から、一過性に済ませず記憶にとどめておく必要性があると意識している。

北海道のこの時期の自然環境をあまり知らない本州の方々が多かったことは、ある意味仕方ないことではあるが、犠牲者の中に何人かの北海道の道民がいたことは、ちょっとショックであった。
その中には地元といっても良いオホーツク沿岸の住民や、我が家の隣町である十勝「幕別町」のご家族も含まれていたようで、「どうしてこんな時期に・・?」といった想いが強く残っていた。

それから今回の海難事故が「知床遊覧船」の経営者や、海なし県の埼玉出身の経験の浅い船長に依る人災であることはすでに述べたとおりである。
名前の知れた陶芸家出身という経営者は、事業経営のシロートで親から引き継いだ少なからぬ旅館やホテルを経営する、拡大志向の強い人物であるという。
その拡大志向の一環として後継者のいない遊覧船会社の経営権を取得して、自ら望んで経営者と成ったという事である。

また多くの宿泊施設や当該遊覧船事業の経営はこれまでのところ、殆ど事業としては成功しておらず、経営が軌道に成らないまま拡大路線を突っ走ってきた経営者としては問題を抱えた人物であったようだ。
遊覧船の破損や通信設備の破損などに対しての追加投資や、定期点検を行わないままで居たのは、この様な会社の懐事情と経営者としての能力不足が反映されたのだろうと、私はほぼ断定している。


知床海難事故.jpg


更にその後の報道で知った事であるが、当該船舶は3・40年前に瀬戸内海で本土と瀬戸内の小島を運ぶ、定期航路のために造られた「乗船フェリー」であるという。
穏やかな瀬戸内海の島と本土の間を、日に何度となく人荷を運ぶ定期航路仕様に造られた中古のフェリーを買い求め、荒波の吹きすさぶオホーツクという外洋に接する潮の流れが速く強い海域で、あえて就航させたのである。

しかもこの経営者は春の嵐の吹きすさぶ荒波に遭難した自社の、瀬戸内海の定期航路向けに造られた中古の船舶が遭難した原因は、「クジラに遭遇したからかもしれない」などと言っているという。
まったくもって自分の経営者としての責任を自覚していないのであり、「海が荒れたら引き返す」と言う口約束を船長としていたと主張し、「死人に口なし」とばかり責任転嫁している。
この人物は経営者失格であると同時に、人間性にかなり問題を抱えた人間なのである。

それと同時に大きな問題なのは、監督官庁である「国交省の出先機関」であっただろう。
これも当初から指摘しておいたが「船舶の破損」や「通信網の破損」状態を黙認し、シーズン初めのしかも他の遊覧船が営業を開始する一週間前からの出航を、当該機関は容認したというのである。

これらの事実からうかがえることは、通常の「監督官庁」の業務と比べてかなり杜撰な指導や管理/監督をしていた、というのは事実であろう。
地元の観光組合だかの有力者であった当該遊覧船の経営者との関係が「ズブズブ」で、ひょっとしたら袖の下でも貰っていたのかと、そのような妄想を抱かせるに十分な「アマアマ」な管理/監督者なのである。

監督官庁は今回の人災事故に関わる関係者を、厳正に処分すべきであろう。
厳しい処罰が見逃されると、これからも日本の何処かで同様の事故が起こる可能性があり得るからである。
このような「船舶の破損」や「通信網の破損」「船長や経営者の質の低さ」といった事は一般の観光客には到底予測が付かない事なのである。
であるが故にそれらを知り得る監督官庁の責任は重いのである。

「観光船の遊覧」という、人命に直結する事業を所管する監督官庁職員の人災によって、また同じことを繰り返してはならないのである。
それがまだ冷たい早春の北海道の海で亡くなった、26名の方々への心からの謝罪であり犠牲者の方々に誓わなくてはならない、真に反省すべき事柄だからである。
                                合掌
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