真実を知ったら最後⑴

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ーーーバンバンバンバンバンーーー
「おい!いたぞ!」
「倉本里奈ちゃんね?もう大丈夫よ!安心していいから」
「ママとパパは?」

ーーーーーープツッーーーーーー
救急車のサイレン音を最後に意識を失ってしまった。


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Chapter1
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10年前、太腿に大きな傷を負ってしまった。
医者からは歩く事さえ困難だと聞かされていたが、今では傷も癒えて歩けるようになった。
傷跡が消えないほど大怪我を負ったのに、何故だか記憶がない。
それに、幼少期の記憶が全くなくて不思議だ。

低気圧になると、古傷が少し痛む。
朝から気分が下がってしまい、窓の外を眺めていた。

「里奈!もう9時よ!今日最終面接でしょ?遅刻するわよ!」

1階から微かに母の声がした。
そうだ、今日10時から最終面接だ。
はっと我に帰り、急いで準備をして母のいるダイニングに向かった。
いつも朝7時から出社していた父が珍しくこの時間に朝食を食べていた。

「珍しいね!仕事は?」
「ないよ、有給を取ったから今日は休みだよ」
「そうなんだ」

朝から両親と何気ない会話をしながら朝食を食べ、家に出た。


スーツ良し!髪良し!笑顔良し!
手持ち鏡で身なりのチェックを済ませた。

「うわぁ〜緊張するな〜」

面接会場に着くとそこには最終面接まで上り詰めた人たちが座っていた。
空いている席に腰を下ろし少し待っていると、隣にすごく綺麗な人が座っていた。
美人の横は辛いなと、ふと彼女の方に目を向け、彼女もまた私の視線に気付き
目が合ってしまった。
私はとっさに目を逸らし、窓の方を向いた。
程なくして集団面接が始まり、簡単な自己紹介が行われた。
6番目に座っていたので、自分の番が来るのを待った。

「次の方どうぞ」
「はい!◯◯大学◯◯学部4年の朝倉里奈です。大学では××をしており、××について研究しています!趣味は旅行で、長期休暇を利用して全国の絶景スポットに行くことが好きです!どうぞよろしくお願いします!」
「ありがとうございます」

よし完璧に言えた! 
安堵しながら着席をし、次来る質問に備えた。

「次の方どうぞ」
「はい!◯◯大学◯◯学部4年の河本志帆です。大学では◯◯を専攻しています。また学業以外では、空手部のキャプテンをしていました。趣味は、ミステリー小説を読むことが好きです!どうぞよろしくお願いします」

河本志帆さんか、綺麗な名前だなあ。

そうこうしている内に本格的に集団面接が始まり、終わりを迎えたのが午後1時を回った頃だ。

やっと、終わった〜

終わったことに喜びを感じ、ご褒美としてアイスを食べようと思い近くのアイス屋さんに入った。
店内に入って周りを見渡すとそこに顔見知りの人が先にアイスを注文していた。

河本志帆さんだ。声かけてみよう。

「河本さんですよね?私先ほど面接が一緒だった朝倉です!面接お疲れ様です」

河本さんは急に私が話しかけたから驚いたような顔をしていた。

「どうも!朝倉さんも面接お疲れ様です」
「あの、もしよかったら一緒に相席してもいいですか?」
「いいですよ」

そこからお互いのことについて話、名前を呼び合える仲まで距離が縮まった。
連絡先を交換し、内定が決まったら連絡する約束だけをして別れた。
志帆と今日初めて出会ったのになんだかすごく懐かしい気持ちになった。

後日、面接しに行った会社から連絡が来た。内定の報告だった。
すぐさま志帆に連絡。志帆も内定をもらえたらしい。
「これからもよろしくね!」と返信した。
その後、両親にも報告しにいって内定祝いをしてもらえた。

なんて私はこんなにも幸せなんだろう。両親にも恵まれ、良い同僚にも恵まれて。あぁ本当に幸せ。




本当に幸せだったよ。真実にたどり着くまでは。











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