【3パターン図解】登記?定款?株式会社の変更手続きを3つの方法に分けて解説します。

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法律・税務・士業全般
こんにちは。板橋のハンコ屋さん行政書士、青木です。
会社(合同会社、株式会社などの法人)を設立すると、その後も色々な手続きを行わなくてはなりません。
会社を取り巻く様々な変更手続きというのも、その中の代表的な一つと言えます。
そこで今回は、株式会社における様々な種類の変更手続きに関してまとめてみました。

株式会社の(定款)変更は、その内容により3つの方法に分かれる。

会社を設立したあとに、その会社に何かしらの変更が生じるケースというのは、どの会社にでもあることです。
しかし、実際に変更が生じた際、どのような手続きが必要なのかをしっかりと把握している事業者さんは、意外と少ないのではないでしょうか。
それもそのはず、タイトルにも書いたように、変更する内容によって、手続き方法が違うため、それらをすべて把握することは、非常に難解なことなのです。
このことから、会社の変更手続きは、ややこしくて書類が複雑と感じていらっしゃる事業者さんも多いのではないでしょうか。
この、手続き方法が違うとは、一体どういうことなのでしょうか。
次章より詳しく解説をしていきます。

会社の変更手続きの3つのパターン

まずは下記の図をご覧ください。
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このように、会社の変更手続きには、大きく分けてこの3パターンの手続き方法が存在します。
手続きの中身は、具体的に「定款変更」「変更登記」とに分けられます。
その両方を行わなければならない手続きもあれば、どちらか片方のみで良い手続きもあり、この点が分かりにくいところなのですが、それらを判断する一つの目安があります。
ところで、これらの手続きを行う際に、書面として思い浮かぶのは、「定款」と「履歴事項全部証明書(謄本)」の2つではないでしょうか。
実はこの2つの書類を見ると、この3パターンのうちどの手続きを行えばよいかの手がかりがあります。
お手元に会社の「履歴事項全部証明書(謄本)」があれば、ご覧下さい。

ここがポイント
この登記簿謄本に記載してある事項を変更する場合には、「変更登記」が必要なので、上図で言うパターン①か③に該当します。

謄本に記載のない項目について変更するのであれば、上図で言うパターン②となるケースが多い。

いかかでしょう。ご自分がしたい変更手続きが、どのパターンに当てはまりそうか、お分かりになったでしょうか。
それでは次に、それぞれのパターンについて具体例を挙げて解説していきます。
なお、「定款変更」や「変更登記」のやり方については、別途下記の記事で説明をしています。

パターン① 定款変更→変更登記

まず、上記3つのパターンの中では一番大変なのが、このパターン①「定款変更」と「変更登記」を両方しなくてはならないケースとなります。
具体的には、以下に挙げるものが該当します。
パターン①のタイプ
・商号の変更
・本店所在地の変更(※1)
・公告をする方法の変更
・目的の変更
・発行可能株式総数の変更
・株式の譲渡制限に関する規定の変更
・取締役会、監査役の設置又は廃止
支店の設置又は廃止
(※1)最小行政区までしか定款に記載していない場合、最小行政区内の変更は、定款変更不要。ex,)東京都板橋区板橋から東京都板橋区高島平への移転

判断するポイントとしては、先程述べたように、「履歴事項全部証明書(謄本」)に記載されているかどうかをまず見ます。
新たに設置する場合については、現在の謄本にその記載は無いので、注意が必要です。
一方で、謄本に記載はあるが、上記に挙げた中に記載がない項目もあることにお気付きでしょうか。
具体的には、以下の2つの項目です。
・資本金及び発行済み株式総数に関すること
・役員に関すること
実はこれらの項目については、期間の経過とともに変わっていく項目であるため、会社のルールブックである定款には、設立時の状態のみを記載し(附則として)、それ以降は謄本ベースで更新を行っていく項目となります。
したがって上記のパターンで言うと、パターン③「変更登記」のみでよいということになります。

パターン② 定款変更のみ

次に、パターン②の「定款変更」のみでよいケースとは、どのような変更手続きが該当するのか、見ていきましょう。
具体的には、以下に挙げるものが該当します。
パターン②のタイプ
・事業年度(決算月)の変更
・取締役の人数の変更
・取締役の任期の変更
・各種決議要件の変更
・その他、任意的記載事項の変更

判断するポイントとしては、まず定款にこれらのことに関する記載があるかどうかを確認します。
記載がある場合には、まず「定款変更」が必要なことは確定します。
次に、会社の謄本を見て、そこに記載がされていない項目であれば、「変更登記」は不要で、「定款変更」のみでよいと、概ね判断が付くのではないでしょうか。
しかし、パターン①でも述べたように、新たに何かを設置する場合などについては、元々謄本にその記載自体が省略されているケースもありますので、ご注意ください。

パターン③ 変更登記のみ

最後に、パターン③の「変更登記」のみでよいケースを確認しましょう。
実は、パターン①の解説で既に述べているのですが、再度表記しておきます。
パターン③のタイプ
・資本金及び発行済み株式総数に関すること
・役員に関すること(就任、重任、辞任、住所変更など)

既にご説明した通り、これらの項目については、会社の成長と共に変化が生じる項目ですので、変更は謄本をベースに行っていく項目となります。
特に気を付けなくてはならないのは、株式会社の場合の役員の重任(再任)登記です。
株式会社の場合の取締役の任期は、非公開会社の場合で最長10年までと決まっています。
任期が満了したら、そのまま留任する場合でも、重任の登記をしなければなりません。
これを怠ると過料に処せられるケースや、長期的に放置されると、休眠会社とみなされ解散登記を入れられてしまう恐れもありますので注意が必要です。

なぜ手続き方法が異なるのか?

ここまで3つのパターンによる会社の変更手続き方法を見てきましたが、なぜこのように、内容によってその手続き方法が異なってくるのでしょうか。
一見すると、ただややこしいだけのように感じてしまうこともあるかと思いますが、実はこれには理由があります。
変更する内容が、対外的にも重要な変更であるのか、内部的な変更であるのかによって、扱う書類が異なるためであります。
具体的には、「履歴事項全部証明書」と「定款」という、会社にまつわる2つの書類の性質を考えてみると、何となくその違いが見えてきます。

履歴事項全部証明書

まず初めに、「履歴事項全部証明書」(会社の登記簿謄本)。
この書類は法務局に登記され、誰でもその閲覧が可能なものです。
例えば、新規の取引契約を交わす場合や、金融機関が融資をする場合など、事前に当該会社の情報を見ておきたい場合もあるでしょう。
ですから、会社として対外的に最低限示さなくてはならない事柄というのが、この謄本に記されています。
資本金であったり、事業目的であったり、役員の情報や、代表者の住所など。
端的に言えば、その会社の信用を担保するに値する項目が記載されています。
このように、外部に対して示さなければならない情報は、しっかりと法務局で登記を入れて、利害関係者を保護する意味合いがあります。

定款

次に「定款」ですが、定款とは、会社のルールブックのようなものとよく言われます。
上記の履歴事項全部証明書とは違い、会社の定款は、上場会社を除き、株主及び債権者が請求をした場合のみ、閲覧が可能な書類となります。
定款に記載する内容として一例をあげると、決算月や、役員の数、任期、総会の開催方法や、取締役の報酬等に関することなどがあります。
会社の中の細かなルールについて文書化したものが、この定款であり、時として外部に提出を求められることもありますが、一般的には内部管理という扱いのものです。
株式会社の設立時に、公証役場にて定款の認証が必要な理由は、これから作ろうとしている会社が、会社法等に照らし適法なものであるかを見極めるためです。
いくら内部的な会社のルールブックとはいえ、何でもありでは、世の中の調和が保たれなくなってしまいます。
しかしながら、定款変更の手続きでは再び公証役場での「認証」を得る必要はなく、これらの点からも、比較的軽微な事項の変更が、この定款変更であると言えます。

まとめ

ここまで、株式会社の変更手続きについて解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
上図の3パターンの方法さえ理解ができれば、あとは、手続きする内容によって、それがどのパターンに該当するかを確認すれば良いのです。
「履歴事項全部証明書」と「定款」の2つの書類の関係性をよく見て、どこをどのように変えるべきかを考えてみましょう。
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