練馬でジェロニモにタカられた話

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コラム
僕はお金を意味もなく払いたくない。
1円たりともである。

それは普通の人だってそうだと思う。

1円あげるのは別に惜しいと思わないが、1円あげるためにお財布をフトコロから出す手間の理由が見つからないのだ。
そう、重要なのは理由なのだ
1円ですら理由が見つけるのを結構苦労する。

のに!!

時々「手間の理由」とか、そう言うのをを軽々飛び越えて見せる人がいる。

それは数年前である
練馬駅の改札を出て千川通りに出ようとしたところで、おばあさんに声をかけられた。
彼女は長い白髪のワシ鼻が大きい──言ってみればジェロニモのような厳つい顔立ちの老女であった。

彼女は言った。

「兄ちゃん、50円、くれ!」

「は?」と僕は聞き返した「な、なに?なんで?」と。

彼女はきっぱりと言った
「ジュース買うのに金がないんだ。だから、兄ちゃん、くれ!」

僕は一瞬何言ってるのか判らなかった。
ていうか、誰この人?
だいたいなぜこんなに堂々と要求してるの?
僕は何かよく判らず曖昧な笑いを浮かべながら言う。
「ご…50円?…い…いや、さっき使っちゃってね。100円玉しかないから。悪いな。」

すると間髪入れずに彼女は言った。
「100円でもいい!」

「………なんでだよ」

彼女は100円を「100円『でも』いい」と大威張りで要求するが、100円でもいいじゃねえよ!!
そりゃ50円より100円のほうがいいだろうが!!

この場合どう考えても僕があげる立場…つまり「僕のほうが上」というイニシアチブを持っている状況なのに、不思議なことに彼女の中では逆転してるっぽいのだ。

そして決定的に不思議なことは、僕は財布の中から100円を出し彼女にあげたのである。 
普段、1円あげるためにお財布をフトコロから出す手間を惜しむ僕がだ。

僕はきっとこの「ジェロニモ風の老女にヘンな理由でタカられた自分」という状況が面白くなっちゃたっぽい。

本気であの時彼女はジュースを飲みたかったのかは知らない。
(何度も使う技じゃない)と思っているのかも知らないが、その後、その老女に会うことはなかった。

二度と会わないとなると(あの思い出はとても面白かった)という「思い出」になるというおまけ付きで、あの老女うまいなと思うのだ。

タカられただけなのに!!

僕のサービスはタカリじゃないので一度おこしくださいね。


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