着物の柄置き

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美容・ファッション

▶柄置きのポイント

 右後ろ肩、左胸。これが、着物の柄の重要ポイントになります。
 一番目立つきれいな柄を右肩に。2番目に大きな柄を左胸に配置することです。一方付けの、柄の向きが一方方向に決まって向いている柄の場合は、前ではなく、後ろを立てます。
 右後ろの肩の柄を一番目だつように立てると、自動的に前身頃の丁度いいところに、逆さ向きの柄がきます。ここで問題が発生します。
 洋服になれた昨今、着物で一番目立つところは、上前の前身頃だと思われがちですが、着物、つまりは和装の文化とは、正面切ってじろじろと値踏みするように見たりはしないのです。
 夜目遠目笠の内、です。日本の美人は、素材の造形ではなく、着こなしであったり身のこなしであったりするのです。所作や言葉の美しさです。
 じろじろ見ていいのは、傘の内のちょっと見難いところであったり、後姿の、本人の気づかないところです。
 また、人の前面というのは、前掛けをしたり、座ったりしたら見えなくなります。また、手は、通常、前向きに動きますので、お袖で隠れたりします。一番汚れやすいところでもあり、お尻の部分と同じぐらい傷みやすくもあります。顧みて、後ろ身頃の肩は傘などを差しかけたり、何かを羽織ったりしない限り、隠れることはありません。
 そういう理由もあって、右後ろ肩に一番いい柄を持ってきます。

▶追いかけ裁ち

 追い裁ち、おっかけ、と、さまざまに言われますが、左右に追いかけるように配置するので、追いかけ、といいます。
 どのように追いかけるかというと、反物を寸法通りに屏風に重ねていきます。それを、左右にスライドさせます。上前の柄を下前の柄が追いかけるように同じ柄が続くことになります。

▶鏡合わせ(観音)

 背縫いに鏡を置いた状態で映る柄のように置いた裁ち方。観音様が手を合わせている様子から、とも。主に、紅型に使用される裁ち方で、ちょっと、インパクトが欲しいときに鏡合わせで裁ち合わせたりします。柄の配分が、一か所に偏りがちなので、まんべんなく、どこを見てもきれいに柄が並ぶようにしようと思うときにはあまり使いません。

                        以上(令和3年6月現在)

▶一方付けの柄

 一方方向へ柄の向きが決まっているものがあります。例えばチューリップで葉まで描かれている場合は、一方づいていることがあります。また、遠山、つぼたれなども一方付いているものです。一番わかりやすいのは、青海波です。付け下げ調に山で染分けされていないと、一方方向に規則的に染められています。
 この場合、どのように柄を置くかというと、追いかけが基本になります。つまり、背中ですべての柄を立てて、前で柄が寝ます。
 お袖も身頃に合わせるので、後ろ袖の柄が立ち、前袖は寝ます。
 前身頃の柄が寝ているのに、衽が立っているのはおかしいので、衽の柄も寝かせます。
 すると、上前の衿も寝かせて柄が出るように置きます。前の流れがすべて下を向いているのに、衿だけ立っているのはおかしいからです。ただし、衿は、つながっているので、下前で柄が立ちます。

 これは、古い和裁の常識なので、これに従うことはありません。
 着物は好きに着ていいので、柄置きも好きに指定してくれて構わないのです。
 ただ、基本は知っていてほしいと思います。洋服を根底に置く現在の柄置きに際して、和裁の常識で裁った場合、間違っている認定をされることが多々あり、一度切ったものは、戻らないからです。
 そして、和裁士、あるいは、着物の仕立屋さんは、問答無用で基本に忠実に裁ちます。若い方は、いろいろ聞いてくださる方もいらっしゃいますが、ある程度の年齢を重ねると、常識的に柄を置いて裁ってしまうので、特に、思い入れの深い方は、念入りに柄置きについては確認をお願いします。
 とはいうものの、着物と洋服は別物と考えて、和裁士、あるいは仕立屋さん、呉服屋さんの言うことを聞くのも、また違った自分を発見できる、かも、知れませんよ。

▶肩裏(羽裏)の柄置き

 肩裏(羽裏)の柄置きも、基本は同じです。向かって右の肩に大きな柄を持ってきます。
 さて。
 違うのは、振りからちょっと柄が見えるところです。基本的に裏の柄は見せない方向で置いていきます。

                     (令和3年7月)

▶見せる柄、見せない柄(衿衽、小物の柄の出し方)

 襟と衽は、一枚を半分に切って使います。その際、真っ二つにするのも良いですが、衽のほうを5分広く裁つことをお勧めします。
 衽は、衿よりも幅を使います。対して、衿に縫込みをたっぷりとっても、始末に困るし、広衿の場合、天で半分に折った時に、縫込みが中で折れるほど長いと、ごろごろして、スマートな衿になりません。
 ただし、バチ衿の場合、衿先で2寸の出来上がりができないことがありますので、そこは幅を確認しながら裁ち切ります。
 反物幅で、柄が偏っていることがあります。右、あるいは左、三分の一に柄がある。例えば、縞や花柄、染分けされていることもあります。
 また、大きな飛び柄で、余白が大きいなどの場合、無地場を衿にもってきて、柄は衽に出します。
 かけ衿の柄は、素敵なお顔と柄が喧嘩しますので、出来るだけあっさり持ってくるのを基本としますが、逆に、明るい柄を持ってきたほうがお顔映りが良いこともあるので、呉服屋さんがきちんと見てくださると良いですね。
 ただ、大柄の飛び柄で、そうそう、うまく柄が出てくることはほぼないので、そこはご承知ください。

 共で取る羽織の袖口は、見えるほうに無地場を持ってきます。出来るだけ、柄は隠します。
 子供物の衿も、出来るだけ柄を隠す方向で置きます。なんで柄を見せないの? と、たまに聞かれますが、そういうものです。かけ衿の柄は、見せますが、衿の柄は、基本的に隠します。
 道行コートの小襟も、柄のないほうを上前に持ってきます。
                      (令和3年7月)
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