エンドロールは止まらない 感想文

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せがわさん作フリーゲーム『END ROLL』の感想文です。
だいたいネタバレしてますが、それでも面白いのでぜひやってみてください。
長い話なんで一切読まないでゲームを検索してダウンロードした方が早いと思うしその方がいいです。やろう。

エンディングが来ないゲーム、しんどくなってきませんか?

次々と新しいシナリオが追加されるソシャゲ、良いですよね!大好きです。
ソシャゲ界隈だけでなく、最近のゲームは一個のソフトにダウンロードコンテンツを設けて、長く遊べるように作るのが主流なのかなーって思います。

これは、楽しい時間をもっと味わいたい、ずっと味わいたい、そんな私たちプレイヤー大喜びです。

でも、それが普通というか、主流になると、人って贅沢だから違う味が欲しくなるんです。

終わらないものに疲れて、結末が欲しくなる。

完結した物語が必要になるんです。
もしかしたら、遠因に現在の自粛体制がいつまで続くかわからない不安から来るのかもしれませんが、とにかくエンディングでハイ、おしまい!なゲームがやりたくなりました。

『エンドロール』というタイトルから既に本編終了みたいなフリーゲームは、そのタイトル通りの内容なので、きちんと終了している物語でした。だからなんかこう、今この時期、新鮮に響いた。

『HELLOイカレ野郎様!』と掛かり気味のご挨拶をされた主人公ラッセルは、ハッピードリームという薬物実験に参加して、条件をクリアできなければ死刑にあう状況。

部屋の中にはベッドと開かないドア、サイドチェストとその上にオレンジ色の液体が入った注射器。
主人公がここで出来る選択肢は、注射を打つか打たないかだけです。現実で彼が出来ることはたったそれだけ。これはエンディングまで変わりません。

注射を打つと、ハッピーなドリームの世界にトリップします。
その世界で彼を待っているのは優しい隣人たち。かわいい女の子も居て、彼女が落とした髪飾りを親切なお兄さんと一緒に森へ探しに行きます。
森には、ゲームなので敵キャラクターが出てきます。ラッセル達は戦うわけですが、その相手がなんかおかしい。

最初の敵は「入場券」と「サル」です。

戦闘中にラッセルの回想が入るのも独特なシステムですが、それがまあ不穏なんですよ。ハッピーなドリームつってたじゃん?

最初のステージをクリアして、プレイヤーは「これはもう、終わった話なんだ」ということに気付かされます。

ループものというわけではありませんが、とにかくもう、終わった、どうしようもない、変えようのない過去をラッセルは回想し、それが夢の世界の材料になっているのでした。

そこからは、なぜその結末に至ったのかを夢の世界を冒険しながら知っていく形になります。

ラッセルがそれまで辿ってきた人生はとても穏やかなものじゃありませんでした。私が特にこのゲーム推せるなと思ったのは、ラッセルに対しての悪意があまりにも生々しく、私が「ゲームであって欲しい」理想そのものだったところです。

現実で私は人の悪意を感じるとションボリします。だから、そういう考えって出来ればゲームとか虚構の中の感情であってほしい。けれど実際、信じられないような悪意を向けられることがある。

その現実を、虚構と共有することで私は「自分(現実)と違う世界(虚構)の人間なんだなーあの人」という具合に誤魔化せるのです。

だからこそ、物語の中の悪意はリアルで気色悪い肌触りであってほしい。

ラッセルという少年を取り巻く世界は別に何も異常な世界ではなく、自分が生きている今とあまり変わらないように見えます。

ただ、偶然、彼にだけ誰も彼も無関心だったのです。

誰かがもう少し優しければ、自分の事よりも彼のことをほんの少し大事にしていれば変わった話なんです。
この物語は、そういうどうにもならなかったことと向き合う話でした。

なんて書くと、ただただ暗いだけのゲームのようですが、キャラクター同士の掛け合いはニコニコしちゃうような明るい話もあるし、これはせがわさんの作品すべてにおいてそうなんですが、ダンジョンの造りが最高にエモいんですよね!

ダンジョンの話をすると、またもう一本記事が必要になるので今回は語りませんが、いつか滅茶苦茶語ってやりたい。こんなに感動したダンジョン、ムジュラの仮面以来。

最期に、このゲームにはエンディングが大まかに分けて二種類あります。
どちらを選んでも、エンドロールは止まらないし、ゲームは終わる。
終わった事と向き合うこと、終わりをどう受け入れるか、例えば映画が終わった後に、エンドロールが流れる間、ぼーっと考えるあの時間のような作品でした。

最期の最後!忘れてましたが、今回のヘッダーはいちご狩りで見つけた帯化したイチゴを加工してみました。
いくつものイチゴが、無理やりひとつにまとまった姿にぞっとしたあのときの感情が、たぶん、このゲームのプレイしたときの感覚に一番近いかなと感じたので使いました。
レイヤー統合した後、ごうまんじゃなくていかりだったことを思い出して頭を抱えた
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