褒められて伸びる?

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 よく「私は褒められて伸びる人なんで…」なんて言葉を聞きますが、あなたはどうですか?
 褒められると嬉しいですが、相手や褒め方によっては怒りを感じることも経験的にご存じでしょう。今回は褒めること褒られることで我々の中に何が起こっているのかを考えてみたいと思います。

・褒められると能力や質が落ちる?
 褒められて何かをする(仕事や勉強など)ということはその動機は「褒めら れること」にあると考えます。これは外発的動機づけというものです。褒める(報酬)を与えてられると嬉しいからまた頑張ろうと思いますよね。一方で、~をすることに興味がある、することが楽しいという内面から発せられる動機を内発的動機づけといいます。心理学の数々の研究によりこの褒めることや賞などを与えると内発的動機づけに影響を与え、能力が落ちたり質が落ちたりすることが分かっています。しかも、もともと興味があったことや、やりたかったことも、この褒めることや賞、小遣いなどの影響によりやる気が下がったりやらなくなったりするようです。
 これはさまざまな見方があるようですが一つは報酬に依存してしまうということです。つまり、報酬をくれないとそれをやりませんよ、ということになります。また、報酬をもらえることがあらかじめ分かっていると、そのこと(勉強や仕事)の質は落ちてもいいという考えによります。

 一般的に言えば、報酬は学習や仕事の成果を最大にさせるような積極的な人間関係を促進したり維持したりするようには働かない。¹⁾
 報酬はひいきめに見ても、こういう協力や仲間意識を促進するのになんの役にも立たない。²⁾

・人々は報酬の効果を誤解している
 村山³⁾らの研究によると、やる気を起こさせる方略として不正確な信念であるにもかかわらず、外的な報酬が動機づけを働かせるやり方として有益な効果があると人々は間違って確信しているという結果を示している。
 つまり前途したように、成果による報酬は一時的には生産性は上がるかもしれませんが、長期的には生産性は落ちその質も下がるにもかかわらず、人々は、報酬を与えればそれを受け取る人はもっとやる気が出て成績や業績が上がるという間違った考えをしている、しかも根深いということです。

・褒めることの害を小さくできるのか?
 A・コーエン⁴⁾はいくつかある考えのうち次の4つを提案しています。
1、人間を褒めずに行為を褒めよ
2、できるだけ特定した褒め方をせよ
3、まやかしの褒め方を避けよ
4、競争をあおる褒め方は避けよ
ここでは詳しくは書きませんが、興味のある方は参考文献を参照してください。

 報酬は物や金銭、賞賛だけではなく”ほほえみ”も報酬になりえます。報酬に依存的になりそれが内面化されると、自発的な行動や発想・創造力に影響があり、それが無くなると無気力・無関心へとつながっていくのではないかと考えます。

参考文献
1) 報酬主義をこえて A・コーエン 田中英史訳 法政大学出版局
   p81 7-8 2011
2) 報酬主義をこえて A・コーエン 田中英史訳 法政大学出版局
   p81 1 2011
3) Murayama,K.,Kitagami,S.,Tanaka,A. And Raw,J.(2016)
      People’s naiveté about how extrinsic rewards influence intrinsic
   motivation Motivetion Science,2(3).pp.138-142
4) 報酬主義をこえて A・コーエン 田中英史訳 法政大学出版局
   p161-p166 2011
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