999日は長いか短いか

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コラム
恋愛の賞味期限は3年、と言われています。

確か中国の昔の話だったと思うんですがー。
もしかしたら、遊郭とかそんな設定だったと思います。

一人の美女に恋をした男がいました。
その男は、その美女に思いを伝えるのですが、美女はつれなく、千日、毎日通い続けることができたら、気持ちを受けてやってもいいぞよとかなんとか言って追い返す。

その男は、千日通うと心に決め、その日以来毎日、美女の住む屋敷の前に通うのでした。

雨の日も、風の日も、寒くても暑くても、疲れていても眠くても・・・
きっと、男は無理を押して通い続けたのですよ。
千日たてば、彼女に会える!その一途な気持ちで999日通い続けたのです。

だが、今日で千日という日に、男は、美女のもとには現れなかった。
「・・・なんか、もういいや」と気が変わったのです。

これから何を教訓に得るべきなのか?
美人だからといって、あんまり勿体付けてると、逃げられちまうぞ!
などという戒めの物語なのか。
あと一歩というところで、力尽きるとは情けない!根性ださんか、コラァ!
男性に対するカツ!なのか。

かつて、私は若かったのです。
当時私は、この話を本で読んだ時(確か、九十九系のお話を集めたものだった)、「アホな男もいたもんだ」と思ったものです。あと一日というところで、手を伸ばすのを止めてしまうとは、恋愛の「道」から外れる行為に思えたのです。
注)私は恋愛は「道」であり「修行」だと思っています。

もちろん、千日通ったからといって、思いが成就するとは限らない。
美女もそんな約束忘れているかもしれない。
「そんなこと、言ったかぞえ?」とすっとぼけるような女なのかもしれません。

だが、それは千日たった後じゃないと分からないことじゃないですか。
とりあえず、貫徹し、最後まで結果を自分で見に行く、取りに行くということをせずして、「道」と言えるか!!

だけど、今、歳をとって改めてこ物語を思い返す時・・・
この男こそ、恋愛の達人なのではないだろうかと思うのです。

この女の本性なんて、知らなくていいんですよ。わざわざ確かめなくていいんです。
この男は、恋愛気分を思う存分楽しんで、エッセンスを十分味わったのです。

辛い時もありましたでしょう。だけど、千日後を夢見て毎日通った、頑張った、俺カッコイイ!ふぅ~、いやいや楽しかった、はい、満腹~ごっそーさん!・・・と、達人的な楽しみ方をしたのはむしろ男の方だったのではないか。

「自己完結する9」というタイトルでブログを書いたのは、この間の9月の終わりです。ご興味のある方は、読んでみてくださいね。「一覧」からタイトルを探してみてください☆

そこでも、「9」というのは、らせん状に自己完結する性質がある、と書きました。
999日というのも、自己完結しているのですね。
男のこの恋愛は999日で完結するものだったのです。
一つ足りないのではない、1000だと一つ、多いのです・・・。

1000日になってはいけなかったのです。1000になりますと、桁が変わってしまう。別のステージに上がることになってしまう。
もはや、男一人の恋愛問題ではなくなり、自己完結のステージではなくなってしまうんですね。
美女の方からのリアクションがある、一人ではなく二人のステージに上がることになってしまう。

「パーフェクト一人恋愛」なんです、この999日の逸話。恋愛の凝縮されたエッセンスだけ味わう、達人だったんです、この男・・・。恐るべし・・・。

この男は、999の寸止めによって、「恋愛」を自己完結させた。相手に対する思いを純粋化させ、「大事に思っている相手がいる」状態を味わい尽くし、それを「実行できない」状態のまま終了させる・・・
穢れもしない、薄れもしない、劣化もしない、日常化もしない、特別な「恋愛パック」のような真空パックの、開けるといつでも新鮮な、苦々しさを一切含まない、あの時のままの香りを思い出させてくれる・・・「恋愛」を心の中に持ち続けることができるのです。

す、すげえ・・・この手があったか?!

美女の方が「フラれた」という格好になってしまいますが。
だけど、その間、彼女にもチャンスはあったのです。
例えば雪のちらつく夜などに「お寒うございましょう、温かいものを差し上げますから、上がっていらっしゃい」などと使いの者を差し向けることもできたはずなんです。

999日の間には、1日くらい何かのチャンスはあったはず。だけど、美女は使わなかった。それだけで、美女の本性、本音が見えてしまいます。

情の分からぬ女だと、男はとうの昔に気づいてたのです。
分かったうえで、片思いの気分を味わって、味わい尽くし、「もういいや」と999日まで嫌みのように律儀に通い、突然姿を見せなくなる。
いやぁ、意地の悪いことをする男もいたものだ。
っていうか、暇か?この男・・・。

歳をとると、逆に美女の方に同情をしたくなってくるんですねぇ!
千日って約三年なんですよ。
三年、男は時限爆弾みたいに律儀に通い続け、最後の最後で・・・ドカン☆
・・・そういう秘密の計画を立てていたのではないか?
くっそ意地悪い男に思えてくるんですよねぇ。

いやいや、女の方だって、恋愛のプロ、設定では遊郭の美女。
この男の手の内など最初から知っていて、だからこそ、知らん顔して放っておいた、放置プレイでナイスアシストしていたのかも・・・!!

なんと贅沢な恋愛遊びではないですか・・・。
無駄に体力と時間を使うだけ!

人間という生物にとって、恋する三年というのは、それなりに意味があるそうですよ。
男と女が出会い、妊娠し、子ができる。その子が直立歩行ができるようになるくらいの間まで、夫婦で協力関係を作れるように計算されているのだそうです。

この999日をどう使うのか、どう利用するのか、長い感じるか短いと感じるか・・・
男が意地の悪い遊びに使うには、長すぎますね。
女が待つにしても長すぎますよ。

やっぱり、この男女、よっぽどの手練れ・・・素人じゃない・・・。
私には無理ですね!
意地の張り合いや駆け引きをしている暇があるほど、人の命は長くない。

「人はいずれ死ぬ。それだけで人は愛し合ってもよさそうなものなのに、そうはならない」
チャールズ・ブコウスキーの素敵にロックで素っ裸の、この言葉を、彼らに贈りたいですね!

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