1.豊臣秀吉と鷹狩
豊臣秀吉がまだ近江長浜城主で羽柴秀吉と名乗っていた頃の出来事です。
鷹狩の途中、喉が乾き近くのある寺を訪れました。
「羽柴じゃ、茶を飲みたい」
寺の小僧が大きな茶碗に、ぬるめの茶を入れて持ってきました。
鷹狩で喉が渇ききっていたので、秀吉は一気に飲みきりました。
「うまい、もう一杯」
二杯目の茶碗は前に比べると小さめで、湯はやや熱めで量は半分くらいでした。
秀吉はそれも飲み干し、さらにもう一杯、お代わりを命じました。
三杯目の茶碗は高価な小茶碗で、湯は熱く味も濃いお茶でしたが、量はほんの僅かしかありませんでした。
秀吉はこの小僧の気配りに感心して長浜城へ連れ帰ったといいます。
この小僧は幼名を佐吉といい、後年、石田治部少輔三成となります。
熊沢淡庵著、武将感状記より
2.ホスピタリティで成功をつかむ
当時、佐吉は14歳だったといわれています。
現在の中学2年生。
恐ろしい位に気が利く少年です。
お殿様が来たからと、最初から高価な小茶碗で熱いお茶を出していたら、石田三成の名は無かったでしょう。
私はホスピタリティという言葉を聞く度に、このエピソードを思い出します。
3.ホスピタリティとは
ホスピタリティをもっとも日常的な言葉に置き換えると、私は気配りになると思います。
気配りとは、周囲の状況や人々の気持ちに気を配り、必要に応じて行動することです。
・相手が困っていないか、必要なものは何かを察知し、手を差し伸べる
・周囲の環境を整え、快適な空間を作る
・相手の立場に立って考え、配慮した言動をする
気配りは、特別な能力や才能ではなく、普段からの心掛けで出来ます。
意識するかしないか、それだけの違いではないでしょうか。
4.気配りの種類
気配りは、大きく分けて以下の3種類に分類することができます。
①目配り: 周囲をよく観察し、状況を把握すること
会議中参加者の表情や態度を観察し発言を促す
困っている人がいたら声を掛ける
上司や同僚の状況を把握し必要な手助けをする
②気配り: 相手の気持ちやニーズを察知すること
先を予測して行動する
相手の状況に応じて適切な支援をする
相手に配慮した言葉遣いを心がける
③心配り: 相手に配慮した行動をすること
相手の話に熱心に耳を傾け共感を示す
相手の表情や声のトーンから感情を察知する
相手の立場に立って考えニーズを理解する
難しいことのように感じるかもしれませんが、相手に関心を持つということが重要だと思います。
そもそも、相手に関心が無ければ、相手の変化や要望に気づかないからです。
佐吉少年も、鷹狩の途中という状況から「きっと喉が乾いているだろう」と察して、ぬるめのお茶を用意したわけです。
まずは、身近な人に興味を持ち、言動を観察するところから始めてみましょう。