アカデミック考察(その6)ハザードマップの意義とは?

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ハザードマップとは、地震や洪水などの危険事象「ハザード」の情報を地図上に分布した地図のことで、自然災害の被害軽減や防災対策に有効な手1段の1つとされます。

本稿では、ハザードマップの意義について語っていきたいと思います。

ハザードマップの意義

ハザードマップは、大きく「災害象を伝える地図」を意味する広義のハザードマップと、「避難情報などを住民に周知する地図」の広義のハザードマップの2種類があるとされます。

前者の災害像を伝える地図の例は、文部科学省の地震調査研究推進本部調査委員会が毎年公表している「地震動予測地図」が挙げられます。同地図は、日本周辺で発生した地震によってその場所が震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した図で、地震のハザードを確率によって可視化しています。一見、災害被害の軽減に直結する地図のように見えますが、地震予知は難しいことから、地震動予測地図は、災害の全体像を伝える啓蒙的な意味合いが強いハザードマップと考えられています。

一方、避難情報などを住民に周知する地図は、河川の氾濫による浸水を想定し、避難情報を掲載する洪水ハザードマップがあります。島根県出雲市の洪水ハザードマップでは、6種類に分類した浸水深・想定最大規模を提示する一方で、洪水氾濫時と河岸侵食時の家屋倒壊情報や、自治体指定の避難所といった対策情報も盛り込み、情報の受け手が具体的な防災行動に移せる格好となっています。

以上のことから、ハザードマップは、自然災害によるハザードを客観的に理解し、災害から避難するための具体的防災対策の策定に役立つという点で意義があると推察します。

ハザードマップの有効性の示す具体例

ハザードマップが災害の客観的理解や防災対策で、有効性を示した事例には、北海道の有珠山2000年噴火があります。

2000年有珠山噴火は同年3月31日午後1時10分ごろ、西山西麓で発生しました。火口から噴き出した熱泥流が市街地に迫り、インフラ被害を引き起こしました。火口からの噴出物のみならず、地殻変動と噴火前後の群発地震によって、被害が拡大。特に道路の被害が大きく、本線上が噴火口と重なった国道230号線などの主要道路が道路の損傷や泥流による被害を受けています。周辺4市町の被害総額は約232億9700万円に上り、最大で1万5815人が避難指示・勧告の対象者となりました。

広域かつ甚大な経済的被害、社会的被害を受けたものの、人的被害はゼロでした。この要因として挙がるのは、噴火前の迅速な避難に役立てられた「有珠山ハザードマップ」(火山防災マップ)です。

国土庁の補助事業によって1995年度に策定された火山防災マップは、山麓噴火が起こる可能性のある区域と噴出岩塊(噴石)の危険区域などを地図上に明記。火山灰が堆積する降灰のエリアや火砕流に襲われる可能性が高いエリアのほか、広域図で火砕流の熱で融かされて起こる火山泥流なども併記し、噴火被害の例もわかりやすく表現しました。

火山防災マップには詳細な噴火被害の情報が網羅されていたことから、実際の避難行動に活用されました。住民の避難区域は、火山防災マップに書かれた「山頂噴火による火砕流及び火砕サージに襲われる危険性の高い区域」を参考にして設定されたほか、自主避難中の2000年3月29日付の毎日新聞で、火山防災マップの内容をもとにした過去の噴火シナリオを解説した記事が掲載され、的確かつ迅速な避難行動の一助となっています。

避難行動に活用された火山防災マップについて、宇井は、マップの網羅性や説明性の問題を指摘しながらも、「住民やライフラインに多大な損害があったにも関わらず、瀬戸際で負傷者や犠牲者が全く発生しなかったため、火山防災マップの有効性が多くの火山地域で認識されるに至った」と説明しています。

いかがでしたでしょうか。上記のように、アカデミックレポートの例文制作を手掛けています。経済学を中心に対応いたしますので、お気軽にお声がけください。



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