周易古占例 書状の内容の占 、高島徳右衛門の令息の生死の占

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天元春日  周易古占例 32

本ブログでは、少しずつ周易の古占例を掲載してゆきたいと思います。
今回は九鬼盛隆氏の占例です。
厳密には断易の占例ですが、柄沢照覚氏、高島嘉右衛門氏などが周易(高島易)による解釈も述べています。
現在では残された書物でして垣間見ることの出来ない先人の交流の一端をうかがうことができる好資料といえるでしょう。

【九鬼盛隆の占例】
(1)書状の内容   【得卦 賁之明夷】
           【九鬼盛隆の占】
大正元年子月午日、余、東京本郷区湯島四丁目神誠館にあり、館主柄沢照覚氏、一封の書状を持していう、
これ我目下事業を経営せる友人青木利福の嘱なり、我も内容の記事は知るあたわざるも、記載文の事柄を代わりて判断せんことを需(もと)む、
余いわくこの如きは易占の本義にもとれり、
かつ余、いまだかかる占験なしといえども、今試みに断ぜんと、これを諾す。
しかして揲筮者(ちょうぜいしゃ)は同館員田辺天承氏にして、山火賁(さんかひ)の地火明夷(ちかめいい)に之くを得たりという(略筮)
断じていわく、初爻卯木官鬼の世爻をもって青木氏となす、まづ内容の記事の何たるを知るを要す。
すなわち五爻子水の財爻に卦身附するをもって、これを財貨に関する件と判し、かつ子の水は時令を帯ぶるをもって、小額にあらざる金件と断ず(秘訣あり)しかして世爻卯木の官鬼時の勢を得て、
応爻戌土に迫るの意あり、更に上爻寅木の官鬼は、独発し又応爻の土を剋す、これ明かに両官の同類共謀して、応爻に対して金を求むるものにして、しかも子水の財爻は日辰に冲起せられ、暗動し来りて世爻を生ず、
ゆえに金策の成りやすきを示すも、これ恐らくは不正の求財ならん、
何となれば、世爻の官鬼はみづから禍根を帯ぶるを知り、又白虎と桃花殺を兼帯(けんたい)するが故に、陰謀不正の行為たるを知る、(何れも秘訣あり)
もしこれを強行せば、後日必ず大禍を醸すに至らん、よろしく反省してこれを断念すべし、内容の断かくの如しとこれを記して附与す。
柄沢これを検せずして青木の使者に渡せり、後数刻を経て柄沢氏余をまねく時に同氏青木の使者等に対して高島易断を繙き、得卦(とっか)賁の上爻の辞、『白賁无レ咎』(はくひとがなし)とあるを指して説明せり、
余の至るをまちていわく、高島易断には何等の凶意あるを見ず、先生の断ずる所それ何によりてかかる奇断をなすか、我これがために友情を傷つけ、失信また回し難し、願くばこの使者の面前に置いて理拠ある説明を聴かんと、
余思わず呵々大笑(かかたいしょう)していわく、高島易断は高島氏の流儀、余が占断は余が特得の流儀にして、その断法においては実に天淵の差あり、
余や嘱に応じて神明を正断しこれを記せしのみ、もしそれこの原理の説明を聴き、しかしてこれを了解せんと欲せば、すべからく研究年を積まざれば能わざるなり、
故に今はこの断を信ずるなかれ、けだし余が弁を費やすも無益なればなり、しかも後日必ず真妄(しんもう)おのづから判明するの期あらんと。
余すなわちその使者を顧みていわく、よろしく見聞のままを青木氏に報ぜらるべしと、その占断の的中せしや否やを知らずといえども、日を経て後、ただ聞く青木利福(あおきりふく)等と共に数名、金件につき罪状挙がり、検挙せられ入獄せりと、ああ余また何をか弁ぜんや。

(2)高島徳右衛門氏の令息の生死  
 【得卦 兌上爻(略筮)】
 【九鬼盛隆の占】
過ぐる年、余(九鬼盛隆)一日、神奈川高台なる高島呑象翁の邸に遊び、翁の臥床の枕頭(ちんとう)において例のごとく易を談じ、時の過ぐるを忘る、
その当時、翁の姪(おい)高島徳右衛門氏の令息(れいそく)、和丸氏(かずまるし)軍務に服せられしが、数日前失踪して往く所を知らず、愁雲(しゅううん)一族をとざす、
翁ために門人橋本某をして問筮せしめ、(略筮)兌(だ)の上爻を得、
翁これを余に提していわく、我従来病占の経験によれば、概して病永引くも治せり、
これ爻辞(こうじ)「引兌(ひきてよろこぶ)」によるならん、この例もって推せば、あるいは日を経て後帰らんか、君が断如何と、余
沈思須臾、大おどろいていわく、「ああ惜しむべし、愛孫すでに現世の人にあらず」と、よって左にこれを弁ぜん
断じていわく、得卦兌為沢(だいたく)の四爻亥水(いみず)の子孫をもって用神すなわち和丸氏(かずまるし)となす。
この爻卦身(かしん)を帯ぶ事の定向(ていこう)あるを示せり、今上爻未土の父母、ひとり動き来たりて用神を剋す、日辰丑土もまたこれを剋せり、ゆえに亥の子孫、この剋を受けすでに死せり、しかも水爻(すいこう)附するは明らかに水死せるを示すものなり。
万に一も生意(せいい)なし、しからば屍体は巳(み)の日、亥を沖(ちゅう)するをまって発見せん、切に祈る得卦の感格(かんかく)せざりしことをと語る。
翁これを聴き愁然言なく、しばらくありて嘆声(たんせい)と共にあるいは然(しか)らんと語られき。
後果たして余が指すの日、品川海にて屍体を発見せり。よって吊書(ちょうしょ)に不幸余が断の正中を悲しむとの意を具してこれを送れり。


※出典 九鬼盛隆『易学須知』文章は読みやすくするため、適宜加削変更しています。

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