さて、本業の獣医師として勉強したことをまとめて書いてみます。かなり自己判断もあるため語弊が出るといけませんので興味がある方だけお読みいただきたいです。読みにくい箇所もあるとは思いますがご容赦ください。
・以下では、病態、診断、治療、予後について記載されています。子犬の時期に比較的多く診察される病態の一種です。家族には、咳というのは目立つ症状のため心配になるケースが多いです。獣医師がどのような判断をしているのかがわかると良いですね。
【病態】
犬の上部気道感染症の総称である。ケンネルコフの原因は、ウイルスおよび細菌の複合感染である。感染は気道内に留まり、全身状態の不良を伴わない限り肺炎に至ることは稀な、病原性の低い疾患。
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主要病原体として考えられているものは、
「Bordetella bronchiseptica」/犬パラインフルエンザ」
感染経路は、感染犬との接触、鼻汁などの飛沫感染であり、当該犬との接触により感染する可能性がある。環境中での生存期間が長いウイルスが存在するため汚染環境との接触も注意が必要。伝染力が強いため容易に感染する。これらの病原体は、気管の繊毛上皮細胞に感染・増殖する。その結果、臨床症状としてくしゃみや発咳が観察される。どの年齢も罹患する可能性があるが、子犬など若齢犬の感染が多い。
【診断】
確定診断方法はなく、除外診断に基く推定により診断される。疑わしい疾患がなく、特徴的な所見があることが条件。
特徴的な所見:咳(乾いた咳で急性)、くしゃみ、鼻汁➡︎全身症状は伴わない。ほとんどの症例が軽症である。カフテストが陽性であること。
オーナーが確定診断を希望した場合、IDEXXの犬呼吸器パネルの提出によるウイルス同定が望ましい。数日で検査結果が返ってくる。
【治療】
多くは、軽症なため、2週間程度で自然治癒する。ポイントは、一般状態を良好に保つ。高温・多湿・冷温・感想を避けて十分な食事とストレスフリーな環境を用意する。
咳が顕著な場合には、抗菌薬、気管支拡張薬、鎮咳薬を検討する。(オーナーが咳を気にしている。咳で食事や睡眠に支障がでる場合)
ex)ドキシサイクリン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン
テオフィリンなどの投薬が検討される。
気管支拡張薬の有効性について明らかではないが、キサンチン誘導体は気道収縮の予防、気道の線毛運動亢進、軽度の抗炎症効果を目的として使用する。
湿性の咳および感染性の発咳には鎮咳薬の使用は避けるべきである。発咳は、気道内の痰などを排泄する重要な反応であり、貯留した痰は咳の温床になるため、使用には十分注意が必要である。
去痰剤は、湿性の咳が認められる場合には、痰の貯留・排泄困難による急性悪化を来たすこともあるので、痰の排泄を容易にする去痰薬を用いる。
【予後】
・良好である。2~3週間で治癒する。咳が長期にわたる場合があるため十分な説明が必要になる。傷ついた繊毛上皮の再生に時間がかかるため。
【予防】
犬混合ワクチンの接種が推奨される。ボルデテラウイルスおよびマイコプラズマ感染を考える必要があるためそれらに感受性のある抗生剤を選択するが、それらのみで発咳が沈静化する可能性は30%。
いかがでしたか?感染力が強いが、重篤化しにくい子犬の時期に多く観察される病気と考えると良いですね。