😨🤜🤪👿👹👉「令和水滸伝」~嫌なことばっかり、そうだ国をつくり直そう!☆54【仲間の輪15】『誰か・・たすけて』尊人の声

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☆54【仲間の輪15】『誰か・・たすけて』尊人の声

 A市にある小学校の校庭、 1人 ポツンとランドセルを
背負って入ってくる少年。
 そこに3人の子供が群がり、そのうちの一人が少年のつけている
ヘッドホンを取って、

 「何聞いてんだよ」
 「何、かっこつけてんだよ」
 ヘッドホンを耳のあて
 「何にも聴こえない。やっぱり化け物だ!」

 残り2人の少年も 一斉に
 「化け物 、化け物」
 「利口ぶった化け物」 
 と、囃し立て、少年に ヘッドホンを投げつけて走り去る。
 ヘッドホンを耳に付け6年1組の教室に入り席に着くが、
誰も話しかけて来ない。

 遠巻きに
 『なんか 斉藤君って、気持ち悪いんだよね』
 『頭はいいんだけど何考えてるかわかんない』
 『気味悪いよね』

  さっきの3人組が入ってきて、 また 斉藤の周りに寄ってきては、
 「化け物」
 「化け物」
 「気持ち悪いんだよ」

 友達なんていない。クラスメイトも誰も近づいてこない。 
 僕は人が何を考えているのか、心が分かってしまう能力ある。
 その分 いろんな声が聞こえてきて頭が痛くなる。
 それを少しでも避ける為にヘッドホンをつけているが、
それでもやっぱり聞こえてくる。

  陰ででコソコソ話していても、実際に目の前で話されてるのと同じ。
  心の中はさらにひどく、ドロドロして・・・

 担任の女性教師が入ってくる。
 「『朝っぱらから気分が悪い!この子何つけてんのよ!』
斉藤尊人(サイトウ・タカヒト)さん、ヘッドホンとって授業始めますよ」
 「先生、これは耳が良くないのでと母から連絡 いきませんでしたか?」
 「そんな連絡あったかしら? 後で確かめてみるので一応ヘッドホンは外してください『イライラしているのに、面倒臭いなーもう』」
  「もういいです。大丈夫です」

 「『エッ何、私が悪いの?』はい、授業を始めます 」
 「何やってんのかしら」
  「かっこつけてるだけだよ」
 クスクスと教室の中に冷笑が、

 「静かにして!授業を始めますよ『面倒臭い子、
だったら最初から付けないでよ』」
  本当の話声なのか、心の声なのか、どっちにしろ嫌な声しか
聞こえてこない。
  やっとの思いで1日が終わって帰ったところで・・・

 帰り着くとすぐ2階の自分の部屋にこもる。
 「ご飯だってよ」
 3歳下の弟が呼びに来た。
 食卓に着くと父と母と弟と妹が仲良く話しているのが、ピタリと止まる。
 父と母の心の声が聞こえてくる。

 『いるだけで辛気(シンキ)臭い』
  『こいつ本当に俺の子か?心を読んでるんじゃないだろうな』
  表面は にこやかにしているが

 食事を早々に終わらせ部屋に戻る。
 それでもおばあちゃんは僕を人一倍 可愛がってくれた。
 僕に尊人(タカヒト)の名前をつけてくれたのもおばあちゃんだけど、
他の2人は父母が名付けてそれでも孤立した。

 「いいかい 尊人、お前には不思議な力があるけど、
人にそれを知られては駄目だよ。
私もね、少しだけそんな力があってそれで 随分 苦労したんだ」
 「どうして人に知られちゃダメなの?」
 「人は自分と違うものを嫌うからだよ」
  「なんで嫌うの?」
  「普通の人は弱いから、自分と違うとそれが怖くて嫌うんだよ。
それでも、いつか分かってくれる人が現われるまで辛抱するんだよ。
きっと現われるから・・・」

 おばあちゃんは心の中も穏やかで話しているのと同じで、
僕はみんなも同じだと思った。
 幼かったさなかった僕は、それをついやってしまった。 父の心を読み、

 「仕事大変なの?上の人とうまくいかないの?」
  父は顔色を変え、
 「そんなことはない!どうしてそんなことを言うんだ?」
 「だって今言ってたでしょ?」

 母にも
 『この子おかしい。御母さんと同じ?御母さんの所に行くの嫌だわ』
 「僕はおかしくないよ。 おばあちゃんのところ行くの嫌なの?」
  「何でそういうこと言うの、言ってないでしょ!」
 「だって聞こえてくるんだもん」

 父と母は顔を見合わせ、
 『こいつ、おふくろと同じか? 気持ちが悪い。迷惑だ』
 『この子、私たちの心の声が本当に聞こえているのかしら?嫌だわ、
考えないようにするしかないの?どうすればいいの?』

 「何でも話すんじゃありません!」
 「ばあさんみたいに気色の悪い事を言うな!」
 しまいに父は怒鳴り、家の雰囲気が沈んでいった。

  そんな僕も昔はもう少し しゃべっていたが話すとつい、
心の声のことを表に出してしまう。
 精神科にも連れていかれたが、分かる事もなく。
 それが何回か続いて 父や母は僕を遠ざけるようになった。

 幼稚園でもそれをやってしまい周囲がヒイていった。
 それが学校にも伝わったのか、僕の周りに人がいなくなった。
 近寄ってくるのは”化け物”呼ばわりして嫌なことを言う連中ばかり。
 その唯一の味方だったおばあちゃんも亡くなって、
僕は家でも学校でも完全に孤立した。

 そんなのを見返したくて難しそうな勉強をした。
 勉強に打ち込んでいる時だけ落ち着く。
 その延長で難関の資格、気象予報士にも挑戦した。

 「お父さん、お母さん、ネエ見て、気象予報士の資格取ったんだよ!」
  「すごいね『だから何だ?心読んだら簡単に取れるのか?』」
  「本当にすごいわね『ひけらかしたいの?』」

 「気象予報士ってすごいの?」
  「興隆(オキタカ)なら、すぐとれるよ」
 「ママ予報士?何」
  「お天気見る人よ」

 結局、難関の資格が取れたところで、気味悪がられるだけで、
そもそも僕に関心を持っていない。
 部屋に戻る後姿の僕に向かって、

 「本当に私の子供かしら 人の心を読むなんて気持ちの悪い」
  「読まれないように気を張って疲れるよ」
   「お兄ちゃん 心が分かるの?」
 「そう言ってるだけ、近づいちゃだめよ」
  「なんで?」
 「美香(ミカ)ちゃんが嫌な思いするからよ」

 「本当に気持ちが悪いわ。施設とか、誰か
引き取ってもらうわけにいかないのかしら?」
 「超能力施設か?そんなの無いだろう。それに親戚に預けるにしても
あいつの能力を知ったら戻され、うちまで変に見られるのがオチだよ」

 「このまま 我慢するのも耐えられない」
 「尊人、どこかに行くの?どっかに行って欲しいな。
学校でも浮いてるし、それで僕もイジられるのは嫌だ、家も 暗くなるし」
 「あいつは頭はいいから、寮付きの進学学校に入れて・・、
留学させるのもいいかも知れない。
最近一緒にいる事も減ったし、もう少し様子を見よう」

 尊人は寂しげに2階の自室に戻り、
 『僕が何をした?相手の気持ちが勝手に流れ込んでくるだけ、
防ぎようがない。
 それだって最近は言わないようにしている。近寄らないようにしている。
 それでも僕は厄介者?僕が悪いの?どこにも居場所がない・・
死にたい・・・僕のいる意味って?おばあちゃんいつ
分かってくれる人が来るの?辛いよ・・・誰か助けて!・・ 』

  11歳の少年には辛い状況、こらえきれずに泣き崩れる尊人・・・
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