富太郎の『ちょこプレ』2023.12.17

記事
コラム
富太郎が、気の向くままに、「ちょこっとプレゼン」させていただきます。
誰かのお役に立てば、幸いです。

今回のお題「取材の自由」

 最近は、あまり取り上げられなくなりましたが、12月14日は、
『忠臣蔵』のメインイベント、赤穂浪士たちの吉良邸討ち入りの日でした。
 そのポイントとなった、吉良邸の「絵図面入手」のために、四十七士の
ひとり岡野金右衛門が、吉良邸を普請した大工の棟梁の娘、お艶さんの
恋心を利用します。入手は成功しましたが、金衛門さんは自責の念に
駆られます(「恋の絵図面取」)。

 この逸話は、史実ではなく、講談やお芝居の中の話というのが定説の
ようですが、昭和の時代にこれと近いシチュエーションの裁判がありました。

司法書士試験 憲法 28-1-イ
報道機関の国政に対する取材行為は、取材の手段・方法が一般の刑罰法令に
触れる行為を伴う場合はもちろん、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れ
ないものであっても、取材対象者である国家公務員の個人としての人格の
尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らして社会観念上是認すること
のできない態様のものである場合も、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を
帯びる。
答 〇 報道機関の政府情報に対する取材行為が国家公務員法の「そそのかし」罪に当たるかが争われた事案について、最高裁は
取材活動が、公務員の秘密漏示のそそのかし罪の構成要件に該当する場合でも
真に報道の目的から出たものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に
照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは正当業務行為
として違法性が阻却されるが、取材の手段・方法が、賄賂、脅迫、強要等の
刑罰法令に触れるときはもちろん、そうでない場合でも取材対象者の個人とし
ての人格の尊厳を著しく蹂躙するとき等法秩序全体の精神に照らし社会観念上
是認することができない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を
逸脱し違法性を帯びるとの判断枠組みを示しました。
 その上で、同最高裁は、本件取材行為は、被告人は、当初から秘密文書を
入手するための手段として利用する意図で女性事務官Bと肉体関係を持ち、
同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥ったことに乗じて
秘密文書を持ち出させたが、同女を利用する必要がなくなるや、同女との
関係を消滅させその後は同女を顧みなくなったものであって、取材対象者
である同女の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙したものと言わざるを
えず、このような被告人の取材行為は、その手段・方法において法秩序全体の
精神に照らし社会観念上、到底是認することのできない不相当なものである
から、正当な取材活動の範囲を逸脱しているというべきであり、本件取材行為
の違法性阻却は認められない。 (最判昭53.5.31・外務省秘密電文漏洩事件)

判例は報道のための「取材の自由」は、憲法21条(表現の自由)の精神に照ら
して十分に尊重に値するとしています。(最大決昭44.11.26・博多駅事件)
 一方学説は、取材の自由は、報道の自由を実現するために不可欠の前提で
あるので、報道の自由と同様に憲法21条で保障されていると主張して、
判例とは結論を異にしているようです。

今回は、以上です。 過去のブログも、ぜひご覧ください。   富太郎




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