富太郎の『ちょこプレ』2023.10.22

記事
コラム
富太郎が、気の向くままに、「ちょこっとプレゼン」させていただきます。
誰かのお役に立てば、幸いです。

今回のお題「事情判決(の法理)」

 10月18日に、去年7月の参院選の「議員定数不均衡問題(一票の格差)」に
関する最高裁の「合憲」判決が出ました。
 一票の格差最大3.03倍を「合区の導入などで、最大格差は3倍程度で推移し
ており、格差は拡大傾向にあるともいえない。」というのが理由のようです。
 参議院は、地域(都道府県)代表という性格があることで、衆議院に比べ、
一票の格差の大きさを認める傾向にあるようで、一度も違憲判決が出された
ことはありません。(ただし、今回も国会に向けて「選挙制度の抜本的な
見直しも含め、格差是正の取り組み」を求めました。)

 一方、衆院選に関しては、過去に2度「違憲判決」が出ています。
最初の違憲判決(最大判昭51.4.14)時に、この問題について考え方が示され
ました。
 問題① 投票価値の平等
 憲法14条1項に定める『法の下の平等』は、選挙権に関しては、国民は
すべて政治的価値において平等であるべきであるとする「徹底した平等化を
志向」するものであり、各選挙人の「投票価値の平等」もまた、『憲法の
要求するところ』であり、投票価値の平等は、単に国会の裁量権の行使の際に
おける考慮事項の1つにとどまるものではない。
( = 投票価値の平等は憲法上保証される )

 問題② 違憲と判断された場合の違憲判決の範囲
 選挙区割及び議員定数の配分は、相互に有機的に関連し、一の部分における
変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、
その意味において不可分一体をなすと考えられるから、本件議員定数配分規定
は『全体として違憲』の瑕疵を帯びる。 

 問題③ 違憲とされた場合の選挙の効力
 議員定数の配分規定が憲法14条1項に違反して無効であると判断された
場合において、当該選挙を無効とすることによって憲法が所期していない
結果が生ずることを回避するために、その配分規定に基づき既に実施された
選挙の効力を無効とはせず、『事情判決の法理(行政事件訴訟法31条)』に
より、「選挙無効の請求を棄却」したうえで、「判決主文で当該選挙が
違法である旨を宣言する」にとどめるという手法で対処すべき。
 ( ⇒ 再選挙することは事実上不可能 )

 結果的には、「違憲」でも、その選挙結果は無効とはならないのですが、
国民の権利を守るためには「声を上げ続けることが必要だ」と原告の弁護士
の先生方はおっしゃっているのではないでしょうか。
 ただ、一票の価値を平等に近づけるための「合区」という措置の結果、
当該地区の投票率が下がったというのは、なんとも皮肉な現象だと思います。

今回は、以上です。 過去のブログも、ぜひご覧ください。   富太郎



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