セルフ・カウンセリングのすすめ

記事
コラム
私は、心理カウンセラー、メンタルヘルス指導員であると同時にメンタルケア・アドバイザーでもある。

メンタルケア・アドバイザーとは、心の問題がどこから生じてきているのか、本人が探して解決できるまでを見守り、サポートしていく資格者。カウンセリングチャートを参考に、クライアントがどんなコーチングを受けたらよいのか、あるいはどんなトレーニングに取り組んだらよいのかをアドバイスする人。

ストレスを抱える他者の経験や気持ちを聞き、受け止めたり、自分のストレスを軽減しながら、職場の方の気持ちが落ち着くように接することができるようになることで、家族、友人のために、また、社会の中で活かすことができる資格なのだ。

その軸となるのが「セルフ・カウンセリング」。

心理カウンセリングでいうところのそれは、自分自身の気持ちのみを振り返り、理解するにとどまるが、メンタルケア・アドバイザーのそれはもう少し奥が深い。

自分・相手・自分と相手、この三つについて同時に気づきを促し考えていく。
そのため、日常のあらゆる場面での出来事を、自分と相手が言ったこと、自分がしたこと、思ったことを記述し、振り返っていくのだ。

例えば、こんな風に…

【自分のセリフ】
①私は出荷リストを見た。②私は<朝からこんな大量に頼んだら怒るやろうな>と思った。③私はIさんの席に行った。④私はIさんに出荷リストを見せた。⑤私は「悪いけどこれ伝票入力してほしいねん」と言った。

【相手のセリフ】
①Iさんは出荷リストを見た。②Iさんは「もう、こんなんかなんわ。③急にいっぱい言わんとってよ」と言った。

【自分のセリフから】
②私は<朝からこんな大量に頼んだら怒るやろうな>と思った。⑤私は「悪いけどこれ伝票入力してほしいねん」と言った。   という記述より、
自分が、朝一番から急に大量の伝票入力を依頼することに対して、事前連絡の不備や段取りの悪さなど自身の非を痛感し反省をしつつ、これから面倒をかけるIさんへの強い罪悪感や贖罪の念を持ちながらも心の奥底に、急な依頼に怒りはしても(現実に仕事だからやる義務があるということとは無関係に、彼女自身の気持ちとして)必ず引き受けてくれるというIさんを深く信頼する気持ちがあったということに気づいた。また、その気持ちが、日頃の自分に対するIさんの態度に鑑みて自分の頼みを無下に断ることはないという不遜とも言える自信からくるものであったことにも気づいた。

【相手のセリフから】
②Iさんは「もう、こんなんかなんわ。③急にいっぱい言わんとってよ」と言った。    という記述より、
Iさんが、急に大量の伝票入力を頼まれたことに戸惑い、口では怒りながらも、それは決してやりたくない、拒否する、ということではなく、自分の大変さを理解してほしいという気持ちの表れだったのではないかということに気づいた。また、その気持ちを率直に伝えられるほど私を信頼し親近感を持っていたのではないかということにも気づいた。

【自分と相手のセリフから】
自分②<朝からこんな大量に頼んだら怒るやろうな>⑦言いにくかったけど週末に言っといたらよかった>
相手②「もう、こんなんかなんわ。③急にいっぱい言わんとってよ」
という記述より、
朝一番からの急な大量の伝票入力の依頼について、事前連絡の不備や段取りの悪さを私自身自覚しており、故にIさんの反応を予測していること、実際のIさんの反応が前述の私の非を踏まえた予測に違わぬものであったことから、業務に対するIさんと私の構えは一致をしていると考えられるが、若干の違いがあるとするならば、Iさんは私に対して遠慮のない物言いができているのに引き換え、私の方では場合によっては本件のように相手に面倒をかけると知っていながらそれがために却ってIさんに口が利けなくなることがあるなど遠慮もあるということで、これは、双方の相手に対するコミュニケーション欲求の大小の差が原因ではないか、ということに気づいた。その大小の差が、早く連絡しないといけないが相手に面倒をかける依頼であるため却って言えない、仕事ということを抜きにしても無下に断る気は全くないが急に言わないでという苦情だけは言っておきたい、という二人の異なった葛藤として心の奥にあったのではないか、ということにも気づいた。

こうして文字にすることで、今まで考えてもみなかった自分や相手の気持ちをいろいろ思いめぐらすことができて、大変いい気づきになる。

私自身がその立場にないので誰かに教えることはできないが、興味のある方、他者を理解して良好な人間関係の構築につなげたいとお考えの方には是非お勧めしたい。

ではまた。

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