刻石流水(こくせきりゅうすい)

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枡野俊明という人の本をよく読みます。禅寺の住職にして、美大教授、庭園デザイナー。禅に根ざした生き方のヒントを多く執筆しています。私は「禅、シンプル生活のすすめ」、「上手な心の守り方」など数冊を読んでいます。文字数が少なく、ページレイアウトも読みやすいので、無理なく1日3ページほどつらつらと読めます。

素直に受け入れられる話が多いですが、その中で特に気になった内容を紹介します。まず「与えた恩はすぐに忘れろ」。次に「受けた恩は決して忘れるな」。別のページに書いてありますが、これは表裏一体ですね。で調べてみると「刻石流水」という言葉がありました。受けた恩は石に刻み、かけた情は水に流せ、という意味です。

私たちは、損得、貸し借りの世界で生きています。だからどうしても「あれだけ貢献したのだから、しかるべき報いがほしい」となります。これは当然だし、そもそもこれを否定したら労働は成り立ちません。ビジネスでは、持ちつ持たれつ、ギブ&テイクがあたり前。見返りを期待しないのはきれいごとに聞こえます。

少し視点を上げて、生活での心構えのように考えてみてはどうでしょう。つまりこの考え方を言葉にして思い出せばイライラしない。例えば、「我が家は旅行のお土産をお隣さんにあげたのに、お隣さんは何もくれない」なんてことも、刻石流水、刻石流水、と唱える。困った時に助けてもらっても同じです。こちらは忘れず、逆の時は必ず助ける。これを繰り返していると、いつの間にか、すごく心に余裕が出てくる気がします。いいことも起きそうだな。

「見返りはいらないけど、感謝くらいほしいよね」というのが本音かもしれませんが、禅ではそれも期待しない。超越ですね。一時話題になったスーパーボランティアの尾畠春夫さんも刻石流水の趣旨を語っています。このあたりになると、1対1の「恩返し」ではなく、世の中に対する「恩送り」ですね。

恩送りとは、誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ることだそうです。典型なのは、匿名の寄付や献血。恩が世の中をグルグル回る。英語にも、Pay It Forward、という言葉があり、恩送りに近い意味で、運動にもなっているようです。ちなみに恩返しは、Pay It Back。なんでも数値化してメリット/デメリットを比較する現在、若いうちはギラギラしたエネルギーが必要です。でも年齢を重ねるにしたがって、刻石流水という考え方を大事にしたいなと思います。

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